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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第37話 観測者

人は、

知らないものを恐れる。


だが本当に恐ろしいのは、

"知られている"ことなのかもしれない。


世界は、

ずっと誰かに見られていた。

HYDRA CHRYSALIS


REBIRTH


第3章 黒海裂界


第37話 観測者


夜空が揺れていた。


黒海裂界。


その奥で開いた無数の蒼い瞳。


瞬き一つしない。


ただ。


玲司だけを見つめていた。


「……何なんだ。」


玲司の声は震えていた。


男は静かに答える。


「観測。」


「お前達は、

そう呼ぶ。」


その言葉の意味を理解できた者はいない。


しかし。


EVEだけは違った。


彼女の顔色が変わる。


「まさか……。」


「終焉戦争の記録……。」


玲司が振り向く。


「知ってるのか?」


EVEは小さく頷いた。


「榊悠真が最後に残した、

封印記録。」


「そこには一つだけ、

解析できなかった言葉がある。」


静かな声で続ける。


「『観測された瞬間、

存在は固定される』」


玲司は眉をひそめた。


「存在が……

固定される?」


男は玲司を見る。


「世界は、

可能性で満ちている。」


「生きる未来。」


「死ぬ未来。」


「救われる未来。」


「滅ぶ未来。」


「すべて重なっている。」


港を吹き抜ける風が止んだ。


「だが。」


「観測された瞬間、

一つだけが現実になる。」


玲司の胸がざわつく。


どこかで聞いたような話だった。


いや。


違う。


これは。


榊悠真の記憶だ。


終焉戦争。


宇宙境界海域。


榊は誰かへ言っていた。


『見るな。』


『俺を観測するな。』


その意味が、

今になって繋がり始める。


突然。


港中の照明が消えた。


闇。


静寂。


次の瞬間。


海面へ無数の青い光が浮かぶ。


ぽちゃん。


ぽちゃん。


蒼泡だった。


一体。


十体。


百体。


数え切れないほどの蒼泡が、

海から姿を現す。


しかし。


いつものように跳ねない。


全員が同じ方向を向いていた。


黒海裂界。


その奥を見つめている。


男が静かに呟く。


「怯えている。」


玲司は驚く。


禁忌兵器が。


研究都市を一つ消滅させた兵器が。


恐怖を感じている。


その時。


沖合の守護者が、

ゆっくりと片膝をついた。


巨大な身体が海面を揺らす。


そして。


深く頭を垂れた。


誰に対してなのか。


玲司には分からない。


男でもない。


裂界でもない。


もっと奥。


そのさらに向こう。


黒より深い場所。


EVEが震える声を漏らす。


「そんな……。」


「守護者が、

祈っている……。」


その瞬間だった。


裂界の最深部。


誰も見えないはずの闇が、

ゆっくりと脈打つ。


ドクン。


ドクン。


海ではない。


世界そのものの鼓動。


玲司は息を呑む。


「これ……。」


白い女性が、

静かに目を閉じた。


「始まる。」


その一言だけだった。


次の瞬間。


黒海裂界から、

一本の巨大な鎖が姿を現す。


錆び付いた黒い鎖。


山脈ほどの太さ。


まるで。


何かを封じ続けていたような。


その鎖が、

音を立てて砕け始める。


パキン。


パキン。


静かな夜に響く。


嫌になるほど小さな音。


しかし。


その音だけで。


世界中の海が、

一斉に震え始めた。


―――続く

第37話を読んでいただき、ありがとうございました。


今回は「観測」をテーマに、黒海裂界の新たな謎を描きました。


敵は力だけで世界を滅ぼす存在ではありません。


「存在とは何か」

「観測とは何か」


そんな世界の根幹に関わる謎が、少しずつ姿を現し始めます。


そして最後に現れた巨大な鎖。


それは何を封じていたのか。


次話では、その鎖に隠された終焉戦争最大の秘密へ近づいていきます。


引き続き『HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH―』をよろしくお願いいたします。

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