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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第36話 偽りの英雄

誰かに似ている。


それだけで、

同じ人間だと言えるのだろうか。


姿。


声。


記憶。


魂。


もし、そのすべてが偽りだったなら――。


継承者・玲司の前に現れた男が、

物語を新たな深淵へと導く。

HYDRA CHRYSALIS


REBIRTH


第3章 黒海裂界


第36話 偽りの英雄


港を包んでいた土煙が、

ゆっくりと晴れていく。


静寂。


誰も動けない。


その男だけが、

静かに立っていた。


黒いロングコート。


銀色の髪。


深海色の瞳。


玲司の鼓動が速くなる。


「……榊……悠真。」


その名を口にした瞬間。


男は小さく首を傾げた。


「榊悠真?」


まるで、

初めて聞く名前だった。


玲司は眉をひそめる。


「違うのか……?」


男は空を見上げる。


裂界の黒が、

その瞳へ映り込む。


「その名を持つ者は、

確かにいた。」


「だが。」


「俺ではない。」


港に重苦しい沈黙が落ちた。


EVEの翼が震える。


「あり得ない……。」


彼女は男を見つめたまま、

一歩後ずさる。


「その外見……

その深海粒子反応……

一致率九九・九九八%……。」


「でも、

魂が違う。」


玲司が息を呑む。


魂。


その一言だけで、

胸が締め付けられた。


白い女性も静かに呟く。


「裂界が……

ついに模倣を始めた。」


男は苦笑した。


「模倣。」


「なるほど。」


「人間は、

そう呼ぶのか。」


その言葉に、

玲司は違和感を覚える。


人間なら、

そんな言い方はしない。


まるで。


自分は人間ではないと、

知っているようだった。


その時。


海面が小さく波打つ。


ぽちゃん。


ぽちゃん。


玲司の足元へ、

蒼泡が一体近付いてきた。


普段は無邪気に跳ねる小さな存在。


だが今は違う。


ぶるぶると震えながら、

男を見つめている。


次の瞬間。


蒼泡が、

玲司の背中へ隠れた。


「……怖がってる。」


玲司は呟く。


禁忌兵器である蒼泡が、

初めて見せた恐怖。


その意味を理解した者はいない。


男は蒼泡へ視線を向ける。


「君達は、

まだ覚えているのか。」


その声は、

どこか寂しかった。


すると。


海全体が震えた。


ドクン。


ドクン。


沖合で跪いていた守護者が、

ゆっくりと顔を上げる。


無数の瞳が、

男だけを見据えていた。


敵意。


いや。


警戒だった。


男も守護者を見る。


数秒間。


互いに動かない。


そして。


男は静かに口を開いた。


「久しいな。」


その一言だけだった。


守護者の巨大な身体が、

わずかに震える。


まるで。


その声を知っているように。


EVEの表情が凍り付く。


「そんな……。」


「守護者が……

反応している……。」


その瞬間。


黒海裂界から、

再びノイズ混じりの声が響く。


『観測……完了。』


『適応……開始。』


『継承者……確認。』


玲司の全身に悪寒が走る。


声は、

男ではなく。


自分へ向けられていた。


「俺……?」


男が初めて玲司を見る。


その瞳には、

感情がなかった。


「ようやく見つけた。」


「最後の継承者。」


その言葉と同時に。


裂界の奥で、

無数の蒼い瞳が一斉に開いた。


夜空そのものが、

こちらを見返していた。


―――続く

第36話を読んでいただき、ありがとうございました。


第3章「黒海裂界」が本格的に動き始めました。


玲司の前に現れた、榊悠真と瓜二つの男。


しかし、彼は自らを榊悠真ではないと否定します。


その言葉は真実なのか。

それとも、さらなる謎への入り口なのか。


ここからREBIRTH編は、終焉戦争の真実、黒海裂界の正体、そして「継承」の本当の意味へと迫っていきます。


ぜひ、次話もお楽しみください。

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