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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第29話 海鳴り

世界が変わる時。


最初に起きるのは、

爆発ではない。


戦争でもない。


静かな違和感だ。


誰も気付かない。


だが。


後になって振り返れば。


全ては、

そこから始まっていた。

HYDRA CHRYSALIS


REBIRTH


第29話 海鳴り


玲司が目を覚ました時。


病室の窓から、

朝日が差し込んでいた。


白い天井。


白い壁。


消毒液の匂い。


NEREID医療区画。


玲司はゆっくり起き上がる。


身体は重い。


だが。


以前のような痛みはない。


むしろ静かだった。


異常なほど。


「……夢か」


白い海。


涙を流す女。


創海者。


榊悠真。


全て夢だったのか。


そう思った瞬間。


胸が微かに光る。


深海色の粒子。


玲司は眉をひそめた。


夢ではない。


身体が覚えている。


その時。


病室の扉が開いた。


EVEだった。


相変わらず無表情。


だが以前より人間らしい。


玲司は気付いていた。


少しずつ変化している事に。


「起きたか」


玲司が言う。


EVEは頷く。


そして窓の外を見た。


「異常が起きている」


玲司は顔をしかめる。


「またか」


EVEは否定しなかった。


むしろ。


少しだけ深刻そうだった。


「今回は違う」


その言葉に玲司の表情が変わる。


EVEが端末を差し出す。


映像が流れる。


世界各地。


海岸。


港湾。


沖合。


どこも同じだった。


人々が海を見ている。


理由は単純。


海が鳴いていた。


玲司は映像を見る。


波は穏やか。


天候も正常。


だが。


確かに音がする。


低い音。


歌のような。


泣き声のような。


不思議な音。


「何だこれ」


EVEが答える。


「分からない」


その返答が一番怖かった。


NEREIDが分からない。


それはつまり。


前例がないという事だ。


映像が切り替わる。


今度は深海探査映像。


海底。


暗闇。


照明だけが進む。


そして。


探査員達が息を呑む。


海底の砂地。


そこに無数の円形模様。


巨大な痕跡。


何かが通った跡。


あまりにも巨大だった。


数百メートル。


いや。


数キロ規模。


玲司の背筋が冷える。


EVEが小さく呟く。


「母体由来反応」


玲司が振り返る。


「母体?」


EVEは頷く。


「世界各地で確認され始めている」


海底を移動する巨大な何か。


誰も見ていない。


だが。


確実に存在している。


その時だった。


警報が鳴る。


病室全体が赤く染まる。


玲司とEVEが同時に立ち上がる。


館内放送が響いた。


『緊急事態発生』


『蒼海区第七港湾にて異常生命反応確認』


職員達が慌ただしく動き出す。


放送は続く。


そして。


次の言葉で空気が変わった。


『対象を流体崩壊兵器と認定』


玲司が固まる。


EVEも目を見開いた。


『コード確認』


『蒼泡』


沈黙。


玲司は思わず呟く。


「……嘘だろ」


終焉戦争の禁忌兵器。


研究都市を消滅させた存在。


その名前が。


今。


現代に現れた。


数分後。


NEREID輸送機。


玲司とEVEは現場へ向かっていた。


窓の外。


港湾地区が見える。


だが様子がおかしい。


人がいない。


船も止まっている。


街全体が沈黙している。


まるで何かを恐れているように。


やがて輸送機が減速する。


玲司は窓の外を見る。


そして。


言葉を失った。


埠頭の上。


小さな何かが跳ねていた。


ぽよん。


ぽよん。


半透明。


蒼白色。


手のひらサイズ。


まるで玩具。


子供向けキャラクターのような姿。


だが。


周囲のコンクリートは溶けていた。


空気が歪んでいる。


存在そのものが揺らいでいる。


EVEの顔色が変わる。


「間違いない」


玲司が息を呑む。


小さな蒼泡は。


まるで子犬のように。


こちらを見上げていた。


そして。


嬉しそうに跳ねた。


ぽよん。


その瞬間。


玲司の胸の深海粒子が反応する。


蒼泡も反応する。


周囲の空気が震える。


世界が一瞬だけ歪んだ。


EVEが叫ぶ。


「玲司!!」


だが。


もう遅かった。


蒼泡は。


玲司へ向かって跳び上がっていた。


―――続く

第29話でした。


今回からREBIRTH編の新たな事件が始まります。


これまで語られてきた禁忌兵器。


流体崩壊兵器「蒼泡」が本格登場です。


可愛らしい見た目。


しかし終焉戦争で研究都市を消滅させた危険な存在。


そして母体生命体の痕跡も動き始めました。


上位存在の謎と、

現実世界の恐怖。


その二つが少しずつ交差していきます。


次回、

玲司と蒼泡の初接触が描かれます。

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