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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第28話 白海の夢

海は記憶を保存する。


それは、

人類の記録だけではない。


生命の記録。


進化の記録。


そして。


誰にも知られていない、

遥か昔の記録も。


その夜。


世界中の人々が、

同じ夢を見る事になる。

HYDRA CHRYSALIS


REBIRTH


第28話 白海の夢


世界が静かだった。


あまりにも静かだった。


蒼海区。


NEREID本部。


研究施設。


病院。


避難区域。


世界中の海沿い都市。


その全てで、

異常現象が発生していた。


「夢を見た」


誰もが同じ事を言う。


年齢も違う。


国籍も違う。


性別も違う。


適合者ですらない一般人も。


全員が同じ夢を見ていた。


白い海。


どこまでも続く白い海。


空も白い。


海も白い。


境界すら分からない。


その中心に立つ、

一つの影。


顔は見えない。


姿も曖昧。


だが。


誰もが感じていた。


孤独。


悲しみ。


途方もない時間。


そして。


言葉にならない優しさを。


世界中が混乱する中。


玲司もまた夢を見ていた。


白い海。


静かな世界。


波音だけが響いている。


そこには誰もいない。


観測者も。


母体も。


EVEも。


榊悠真も。


ただ玲司一人。


どこまでも続く白い海。


玲司は歩く。


理由は分からない。


だが。


進まなければいけない気がした。


足跡も残らない。


風も吹かない。


時間すら止まっているようだった。


しばらく歩いた時。


遠くに何かが見えた。


人影だった。


玲司は立ち止まる。


その影は後ろを向いていた。


白い髪。


長い髪。


細い身体。


女性のようにも見える。


だが。


近づくほど違和感が強くなる。


人ではない。


そう感じた。


存在感が違う。


生命という枠に収まっていない。


玲司が声を掛けようとした。


その瞬間。


影がゆっくり振り向く。


顔は見えない。


光に包まれている。


だが。


涙だけが見えた。


玲司は息を呑む。


何故か胸が痛い。


理由もなく悲しくなる。


初めて会うはずなのに。


昔から知っていた気がする。


その時。


声が聞こえた。


『まだ』


静かな声。


女性にも聞こえる。


子供にも聞こえる。


老人にも聞こえる。


不思議な声だった。


『まだ終わっていない』


玲司が一歩前へ出る。


「お前は誰だ」


沈黙。


白い海が揺れる。


『私は』


言葉が途切れる。


まるで思い出そうとしているように。


『忘れられた』


『最初の海』


玲司の瞳が揺れる。


その瞬間。


景色が変わった。


白い海が消える。


代わりに見えたのは。


宇宙。


星々。


銀河。


無数の光。


そして。


その中心を流れる巨大な海。


玲司は理解できなかった。


宇宙に海があるはずがない。


だが確かに存在していた。


海。


生命の源。


全ての始まり。


その海から。


無数の光が生まれていく。


生命。


文明。


感情。


記憶。


進化。


全てがそこから流れ出していた。


玲司は震える。


あまりにも壮大だった。


理解を超えている。


その時。


背後から声がした。


「見せられたか」


振り返る。


榊悠真だった。


いつもの無表情。


だが少しだけ疲れている。


玲司が聞く。


「何なんだよこれは」


榊は白い海を見る。


懐かしそうに。


そして答えた。


「俺も昔見た」


玲司の目が見開く。


「終焉戦争の前だ」


静かな声。


「その夢を見た後」


榊は空を見る。


宇宙の海を。


「全部が始まった」


玲司は黙る。


嫌な予感しかしない。


榊は続ける。


「だから覚えておけ」


その目は真剣だった。


「今から始まるのは」


少し間を置く。


そして。


「終焉戦争より厄介だ」


その瞬間。


白い海の女性が再び現れる。


今度は玲司ではなく。


榊を見ていた。


長い沈黙。


そして。


初めて感情を乗せた声で言った。


『また会えた』


榊の表情が止まる。


玲司が驚く。


今の榊は。


本当に驚いていた。


終焉存在にも。


観測者にも。


ほとんど動じなかった男が。


言葉を失っている。


白い海の女性は涙を流していた。


『ずっと探していた』


玲司の背筋が凍る。


この存在は。


榊悠真を知っている。


しかも。


終焉戦争以前から。


次の瞬間。


白い海全体が激しく揺れた。


どこか遠くで。


巨大な心音が鳴る。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


母体に似ている。


だが違う。


もっと巨大。


もっと古い。


そして。


その音に反応するように。


世界中の海が脈動を始めた。


―――続く

第28話でした。


今回からREBIRTH編は新たな局面へ入ります。


ただし、

まだ新章ではありません。


現在はREBIRTH編前半最大の伏線回収へ向かう中盤クライマックスです。


今回登場した「白い海」。


そして謎の女性。


さらに榊悠真との関係。


ここからHYDRA CHRYSALIS全体の根幹へ繋がる物語が始まります。


次回、

榊悠真が隠していた終焉戦争以前の出来事が少しずつ明かされます。

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