第3話 NEREID
世界は救われた。
だが、
救われた世界を管理するために、
新しい“力”が必要になった。
HYDRA CHRYSALIS
REBIRTH
第3話 NEREID
夜明けの港。
破壊された防波堤。
燃えるクレーン。
そして。
頭部を吹き飛ばされた深海変異体。
海上特務機関“NEREID”。
その白い装甲を纏う女――AQUA-7が、
静かに変異体を見下ろしていた。
「……死んだのか」
玲司が呟く。
AQUA-7は答えない。
代わりに、
腰部ユニットから青白い光を展開する。
ブゥン――。
半透明モニター。
変異体をスキャンしている。
「――深海侵食率82%」
「――第七世代型変異体を確認」
玲司が眉をひそめる。
「第七世代……?」
AQUA-7が振り返る。
「あなたはまだ知らなくていい」
冷たい声。
感情が薄い。
だが。
どこか疲れているようにも見えた。
その時。
玲司の胸が痛む。
ドクン。
原初因子。
強く脈動する。
「っ……!」
視界が揺れる。
海が見える。
いや。
“感じる”。
港の地下。
さらに深い場所。
そこに。
何かいる。
巨大な。
「――感知したの?」
AQUA-7の目が細くなる。
玲司が息を荒くする。
「下に……何かいる」
その瞬間。
港全体が揺れた。
ゴゴゴゴ……!!
海面が盛り上がる。
避難していた人々が悲鳴を上げる。
「――地下空洞反応拡大!」
NEREID隊員の通信。
「――深海構造体、浮上します!!」
AQUA-7が舌打ちする。
「最悪ね」
次の瞬間。
海が割れる。
巨大な黒い塔。
海底から、
都市中央へ浮上してきた。
深海色の発光。
生物なのか、
建造物なのか分からない。
表面には、
無数の蒼い紋様。
「……なんだよ、あれ」
玲司が震える。
塔が脈動する。
ドクン。
ドクン。
まるで心臓。
その瞬間。
玲司の胸も共鳴する。
「がっ……!!」
膝をつく。
頭へ大量の映像が流れ込む。
深海。
巨大施設。
無数のカプセル。
その中心。
“蒼い人影”。
「――っ!?」
玲司が目を見開く。
その姿。
一瞬だけ見えた。
巨大な水翼。
深海色の瞳。
「……榊……悠真」
AQUA-7が凍りつく。
「今、何て言った?」
玲司が混乱する。
「わからない……でも」
胸が熱い。
涙が出そうになる。
「知ってる気がする」
その瞬間。
黒い塔から光が放たれる。
蒼い粒子。
空へ拡散。
そして。
都市中の海水が浮かび上がる。
「――深海粒子拡散開始!」
通信が混乱する。
「――一般市民に侵食反応!」
人々の身体に、
深海色の紋様が浮かび始める。
「……嘘だろ」
玲司が立ち上がる。
塔が脈動する。
まるで。
“呼んでいる”。
AQUA-7が武装展開。
背部ユニットが開く。
複数の浮遊砲台。
青白い光。
「NEREID全隊へ」
冷たい声。
「深海構造体を破壊する」
玲司が振り返る。
「待て!」
AQUA-7の瞳が玲司を見る。
「……あれ、壊していいのか?」
沈黙。
その時。
玲司の頭へ、
再び声が響く。
優しい女の声。
懐かしい声。
「――まだ壊さないで」
玲司の目が揺れる。
「……誰なんだよ」
塔がさらに脈動する。
そして。
最上部。
蒼い光が集まり始める。
人型。
ゆっくりと。
空中へ現れる。
長い白髪。
深海色の瞳。
そして。
背中に広がる、
蒼い翼。
AQUA-7が息を呑む。
「……ありえない」
玲司が見上げる。
空に浮かぶその存在。
どこか人間で。
どこか人間ではない。
女が静かに口を開く。
「――継承者を確認」
深海色の瞳が、
玲司を真っ直ぐ見つめる。
「――ようやく会えた」
その瞬間。
玲司の胸の原初因子が、
暴走レベルで共鳴を始めた。
―――続く
第3話を読んでいただきありがとうございます。
ついに現れた、
深海構造体。
そして、
玲司の前へ現れた謎の存在。
終焉戦争の記憶と、
榊悠真の名。
REBIRTH編は、
ここからさらに深海の核心へ迫っていきます。




