第2話 深海適合者
継承されるのは、
力だけじゃない。
恐怖も。
孤独も。
そして、
戦う運命も受け継がれていく。
HYDRA CHRYSALIS
REBIRTH
第2話 深海適合者
海は静かだった。
さっきまで怪物が暴れていたとは、
思えないほどに。
港湾都市・蒼海区。
夜明け前。
砕けた防波堤から、
白い蒸気が上がっている。
「――対象、まだ見つかりません!」
救助隊の声。
サーチライトが海面を照らす。
だが。
神崎玲司の姿はない。
「……飲まれたか」
警備隊の男が唇を噛む。
その時。
海面が揺れた。
ぽちゃん。
小さな波。
そして。
ゆっくりと、
玲司の身体が浮かび上がる。
「いたぞ!!」
救助隊が駆け寄る。
玲司は意識を失っていた。
だが。
不自然だった。
服が濡れていない。
海へ落ちたはずなのに。
「……おい」
隊員が玲司の肩へ触れる。
その瞬間。
水が弾けた。
「うわっ!?」
隊員が吹き飛ぶ。
玲司の周囲へ、
半透明の水膜が展開されていた。
自動防御。
「なんだこれ……」
全員が後退する。
その時。
玲司の目が開く。
深海色。
一瞬だけ。
「……ここ」
玲司がゆっくり起き上がる。
頭が痛い。
身体が熱い。
胸の奥で、
何かが脈打っている。
「君、無事か!?」
救助隊が近づく。
玲司が反射的に手を上げる。
ぽよん。
水球。
空中へ出現。
全員が凍りつく。
「……は?」
玲司自身も固まる。
水球が浮いている。
自分の目の前で。
記録映像と同じ。
終焉戦争の英雄、
榊悠真と同じ力。
「……嘘だろ」
水球が揺れる。
玲司の感情に反応するように。
その瞬間。
サイレンが鳴り響く。
「――第二警報!」
「――深海変異体、再接近!!」
海面が爆発する。
別個体。
今度は魚類型。
巨大。
全長三十メートル。
深海色のヒレが、
夜明けの海を裂く。
「総員退避!!」
銃撃開始。
だが。
効かない。
怪物が咆哮する。
超音波。
窓ガラスが割れる。
人々が悲鳴を上げる。
玲司が耳を押さえる。
頭の奥へ、
声が響く。
「――危険」
女の声。
海の底で聞いた声。
「……誰だ」
「――適合者保護優先」
玲司の胸が光る。
深海色。
周囲の海水が浮き始める。
「なっ……!?」
玲司の身体が、
勝手に動く。
海へ手を向ける。
その瞬間。
海面から、
巨大な水柱が出現した。
轟音。
魚類型変異体へ直撃。
怪物が吹き飛ぶ。
港のクレーンへ激突。
「……俺がやったのか」
玲司が震える。
だが。
止まらない。
海が反応している。
都市中の水が、
玲司へ集まり始める。
「――侵食率上昇」
女の声。
冷静に。
「――適合開始段階へ移行」
玲司の視界が揺れる。
海流。
地下水。
人体内部の水分。
全部が見える。
「っ……!」
膝をつく。
脳が耐えられない。
その時だった。
空から光が降る。
白い閃光。
ドォン!!
衝撃。
変異体の頭部が吹き飛ぶ。
玲司が顔を上げる。
そこに。
白い装甲スーツを纏った女が立っていた。
長い黒髪。
鋭い瞳。
背中には、
青白く光る浮遊ユニット。
「……え」
女が玲司を見る。
真っ直ぐ。
「確認した」
静かな声。
「あなたが新しい適合者ね」
玲司が息を呑む。
女がゆっくり近づく。
その瞳。
どこか、
昔の管理体に似ていた。
「私は海上特務機関“NEREID”所属」
白い装甲が光る。
「コードネーム――AQUA-7」
その瞬間。
玲司の胸の原初因子が、
強く脈動した。
―――続く
第2話を読んでいただきありがとうございます。
玲司はついに、
“適合者”として目覚め始めました。
そして登場した、
新たなAQUAシリーズ、
AQUA-7。
終焉戦争後の世界で、
新たな深海の物語が動き始めます。




