表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/29

第22話 海の胎動

地球サイズ。


その観測結果は、

誰一人として受け入れられなかった。


だが。


海は嘘をつかない。


深海最深部で始まった異変は、

世界そのものを揺るがそうとしていた。

HYDRA CHRYSALIS


REBIRTH


第22話 海の胎動


警報が鳴り続けていた。


NEREID本部。


世界海洋監視網。


全システム異常。


観測不能。


解析不能。


予測不能。


ありとあらゆる表示が赤く染まる。


誰も言葉を発しなかった。


モニター中央。


深海最深部。


人類未到達海域。


そこから発生している巨大反応。


地球サイズ。


その数値だけが表示され続けている。


玲司も言葉を失っていた。


理解が追いつかない。


地球サイズの生命。


そんなものが存在するなら。


今までどうやって隠れていた。


管理体が静かに言う。


「隠れていたのではありません」


玲司が振り返る。


「どういう意味だ」


管理体は少しだけ目を伏せる。


「私達が見えていなかっただけです」


空気が重くなる。


管理体は続ける。


「母体は生物という概念だけでは説明できません」


「海そのものに近い存在です」


玲司の背筋が冷える。


海そのもの。


以前も聞いた言葉だった。


だが。


今はその意味が違って聞こえる。


管理体の瞳が遠くを見つめる。


「終焉戦争以前から」


「いえ」


「人類誕生以前から存在していました」


沈黙。


誰も口を開かない。


管理体は静かに語る。


「母体は生命を見守っていました」


「原初存在よりも前から」


「文明よりも前から」


「ただ静かに」


玲司が拳を握る。


「じゃあ何で今になって目覚める」


その問いに。


管理体は答えなかった。


代わりに。


EVEが小さく呟く。


「榊悠真」


玲司の目が動く。


EVEは続けた。


「榊悠真が海へ還ったから」


静寂。


その言葉が空間へ落ちる。


管理体がゆっくり頷いた。


「その可能性が高いです」


玲司の胸がざわつく。


榊悠真。


終焉戦争を終わらせた男。


海へ因子を還した英雄。


その行動が。


今の世界へ繋がっている。


その時だった。


世界地図が切り替わる。


オペレーターが叫ぶ。


「海流異常発生!」


「全海域同時です!」


映像が表示される。


太平洋。


巨大な海流が変化している。


大西洋も同じ。


北極海も。


南極海も。


海流が一つの方向へ流れ始めていた。


世界中の海が。


一つの場所を目指している。


誰かが呟く。


「ありえない……」


管理体の顔が青ざめる。


「まさか」


玲司が聞く。


「何だ」


管理体は震えていた。


「集まっている」


「海が」


「母体の元へ」


その瞬間。


映像が乱れる。


深海映像。


真っ暗な海。


何も見えない。


だが。


その奥。


何かが動いた。


巨大すぎる。


比較対象が存在しない。


山脈かと思った。


大陸かと思った。


違う。


それは。


ゆっくりと目を開いた。


蒼い瞳。


あまりにも巨大。


その瞬間。


世界中の海が発光した。


夜の海岸。


港。


漁村。


沖合。


全ての海面が蒼く輝く。


人々は空を見上げる。


いや。


海を見つめる。


誰も理由を知らない。


だが。


涙を流す者もいた。


懐かしい。


そんな感情が込み上げる。


母親の記憶。


幼い日の記憶。


忘れたはずの感情。


それらが海から流れ込んでくる。


玲司も同じだった。


胸が苦しい。


涙が出そうになる。


海の奥から。


声が聞こえる。


優しい声。


悲しい声。


温かい声。


そして。


どこか寂しい声。


『やっと』


玲司が顔を上げる。


周囲は何も反応していない。


聞こえているのは自分だけか。


『やっと会える』


玲司の瞳が揺れる。


その声は。


女性だった。


EVEでもない。


管理体でもない。


もっと古い。


もっと大きい。


生命そのもののような声。


『長かった』


海が光る。


深海構造体が震える。


管理体が膝をつく。


EVEも息を呑む。


そして。


世界中のモニターへ。


同じ映像が映し出された。


深海最深部。


暗闇。


その奥。


巨大な影。


まだ全貌は見えない。


見えるのは。


ただ一部だけ。


瞳。


皮膚。


脈動する光。


それだけだった。


それだけなのに。


誰もが理解してしまった。


そこにいる。


ずっと昔から。


ずっと海の底に。


生命の始まりから。


見守り続けていた存在が。


そして。


その巨大な瞳が。


ゆっくりと玲司を見た。


世界中ではなく。


玲司だけを。


まるで。


探していた子供を見つけたように。


優しく。


悲しそうに。


その瞬間。


玲司の脳裏へ。


一つの映像が流れ込む。


終焉戦争。


深海最深部。


若き日の榊悠真。


そして。


巨大な存在へ向かって。


こう言っていた。


「俺が約束する」


映像はそこで途切れた。


玲司が息を呑む。


約束。


何の約束だ。


だが。


答えを考える暇はなかった。


次の瞬間。


黒海裂界が反応した。


世界各地の裂界が。


同時に開き始めたのである。


まるで。


母体の目覚めを待っていたかのように。


―――続く

第22話でした。


今回は母体生命体の存在感を強く描く回になりました。


まだ全貌は見せません。


HYDRA CHRYSALISにおいて、

母体は「見えない恐怖」と

「母のような安心感」が同居する存在です。


次回は大きな転換点。


黒海裂界が世界同時活性化。


そして、

終焉存在側にも変化が起き始めます。


REBIRTH編前半のクライマックスが近づいています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ