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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第14話 母体反応

蒼海区全域で発生した、

流体崩壊兵器の群体化。


そして。


海底から観測された、

巨大生命反応。


NEREID上層部は、

その存在名を口にする事すら禁じていた。


――母体。


終焉戦争中、

最も深い海で確認された、

“海そのもの”。


その胎動が、

再び始まろうとしていた。

HYDRA CHRYSALIS


REBIRTH


第14話 母体反応


雨が止んでいた。


だが。


空気は濡れている。


海風が、

異様に生暖かい。


蒼海区全域で、

停電が発生していた。


都市の光が消えた夜。


海だけが、

蒼く発光している。


「……気味悪ぃな」


玲司が空を見る。


雲の隙間。


そこに、

蒼い光が揺れていた。


海面から浮上した、

大量の蒼泡。


まるで、

クラゲの群れみたいに、

夜空を漂っている。


その下で。


避難警報が鳴り続けていた。


『住民は地下避難区画へ――』


『海岸区域へ近づかないで下さい――』


ノイズ混じりの放送。


誰かの泣き声。


遠くで、

サイレンが響く。


AQUA-7が端末を睨む。


「粒子濃度が止まらない……」


「何なのよこれ……」


EVEは、

ただ海を見ていた。


静かに。


その瞳へ、

蒼い光が映っている。


玲司が近づく。


「お前、

何か知ってるんだろ」


EVEは沈黙する。


数秒後。


小さく呟いた。


「――母体が、

覚醒しかけている」


その瞬間。


AQUA-7の顔色が変わる。


「……っ!」


「その単語を軽々しく使わないで!」


玲司が振り返る。


「知ってるのか?」


AQUA-7は迷った。


だが。


観念したように息を吐く。


「終焉戦争中盤……」


「最深海域で確認された、

超巨大生命反応よ」


「でも、

映像記録は全部封印された」


「理由は――」


そこで言葉が止まる。


玲司が眉をひそめる。


「理由は?」


AQUA-7の喉が動く。


「……見た研究員達が、

精神崩壊したから」


静寂。


風だけが吹く。


海が鳴る。


どくん。


玲司の胸が脈打った。


同時に。


海面が揺れる。


巨大な波。


違う。


海そのものが、

呼吸している。


「――っ!?」


都市全域が振動した。


ビルガラスが軋む。


警報が赤く点滅。


『超大型深海反応!!』


『海底プレート異常変動!!』


『全NEREID部隊、

即時警戒態勢へ移行!!』


通信が飛び交う。


その時だった。


海面中央。


巨大な渦が発生した。


蒼い。


深い。


底が見えない。


玲司が息を呑む。


渦の奥。


“何か”がいる。


だが。


大きすぎて、

脳が認識を拒絶する。


AQUA-7が震える声で呟く。


「……冗談でしょ」


海面から、

巨大な“影”が浮上していく。


山?


違う。


生物。


巨大すぎる。


都市より遥かに大きい。


そして。


海が静かになった。


波が止まる。


風も止まる。


世界が、

息を止めた。


玲司の耳へ、

声が聞こえる。


直接。


頭の奥へ。


『――こども』


玲司の瞳が揺れる。


「……え?」


『――まだ、

いたのですね』


優しい声だった。


女のような。


母親のような。


だが。


あまりにも巨大。


あまりにも深い。


EVEが前へ出る。


深海色の翼を広げながら。


「――接触を確認」


その瞬間。


海面から、

無数の発光粒子が舞い上がる。


蒼い雪。


都市全域へ降り注ぐ。


玲司の頬へ、

粒子が触れる。


暖かい。


懐かしい。


涙が出そうになる。


「……何だよ、

これ」


その時。


黒海裂界が開いた。


空。


都市上空。


黒い亀裂。


空間が裂ける。


どす黒い闇。


そして。


巨大な“目”が、

裂界の奥で開く。


外宇宙捕食者。


玲司の本能が叫ぶ。


危険。


存在そのものが違う。


直後。


海が怒った。


轟音。


蒼い海流が、

空へ噴き上がる。


巨大な水柱。


空間が歪む。


そして。


海底の“影”が、

ゆっくり動いた。


その瞬間。


黒海裂界の“目”が、

初めて後退した。


逃げた。


玲司が凍りつく。


外宇宙捕食者が。


恐れている。


海を。


母体を。


EVEが静かに呟く。


「――海は、

まだ人類を見捨てていない」


その直後。


玲司の頭へ、

大量の記憶が流れ込む。


終焉戦争。


深海。


榊悠真。


そして。


深海最深部で、

巨大な“何か”を見上げる、

榊の姿。


その時。


誰かの声。


『――あなたは、

まだ人間でいられるのですね』


玲司が目を見開く。


その声。


今の声と同じだった。


海面が脈動する。


どくん。


どくん。


まるで。


巨大な心臓のように。


――続く

第14話でした。


今回は、

ついに“母体”が本格的に動き始めました。


ただし、

まだ全貌は描きません。


HYDRAにおいて、

母体は「怪物」ではなく、

“海そのもの”

に近い存在です。


そして今回重要なのは、

外宇宙捕食者が、

初めて“後退した”事。


終焉存在ですら、

海を恐れている。


そこに、

この作品の根幹が繋がっていきます。

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