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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第13話 海が泣く夜

深海構造体出現から数日。


蒼海区では、

不可解な現象が続いていた。


海鳴り。


発光する雨。


そして――

誰もいないはずの海から聞こえる、

“泣き声”。


NEREIDは、

極秘裏に調査を進めていた。

HYDRA CHRYSALIS


REBIRTH


第13話 海が泣く夜


夜。


雨が降っていた。


蒼海区・第七码頭。


海面が、

蒼く発光している。


波は静かだった。


静かすぎるほどに。


「……嫌な感じだな」


玲司が海を見下ろす。


隣では、

AQUA-7が端末を確認していた。


白い装甲に、

雨粒が流れていく。


「この海域だけ、

深海粒子濃度が異常なの」


「まるで、

海そのものが活性化してる」


玲司が眉をひそめる。


海を見る。


暗い。


深い。


なのに。


どこか、

“見られている”。


そんな感覚があった。


「……またか」


玲司が小さく呟く。


最近増えていた。


海へ近づくほど、

頭の奥で、

誰かの声が聞こえる。


泣き声。


笑い声。


知らない記憶。


「玲司」


AQUA-7が振り返る。


「今日は妙な反応が多すぎる」


「上は避難勧告も考えてる」


「でも――」


その時だった。


ぽちゃん。


水音。


二人が同時に振り向く。


誰もいない岸壁。


そこへ。


半透明の何かが、

ぴょこんと跳ねていた。


玲司の目が細くなる。


「……何だあれ」


小さい。


水滴みたいな、

半透明の塊。


蒼白く光っている。


ぽよん。


また跳ねる。


どこか、

生き物みたいに。


AQUA-7の顔色が変わる。


「下がって!!」


瞬間。


彼女が玲司を突き飛ばした。


同時に、

白い装甲腕が展開。


水刃が放たれる。


蒼い塊が、

真っ二つになる。


だが。


分裂した。


二体へ。


ぽよん。


ぽよん。


玲司が息を呑む。


「……増えた?」


AQUA-7が低く呟く。


「流体崩壊兵器……」


「蒼泡……!」


玲司の背筋が冷える。


その瞬間。


蒼泡達が、

一斉に玲司を向いた。


ぞわり。


空気が歪む。


まるで、

空間そのものが軋むような感覚。


「走れ!!」


AQUA-7が叫ぶ。


次の瞬間。


蒼泡が膨張した。


蒼白光。


雨が蒸発する。


空気が溶ける。


玲司が咄嗟に水膜を展開。


直後。


世界が揺れた。


轟音は無い。


だが。


岸壁そのものが、

静かに消えていく。


コンクリートが、

溶けるように崩壊。


海水へ変わる。


「っ……!」


玲司の頬を汗が流れる。


理解した。


これ。


兵器だ。


しかも、

人類が作ってはいけない類の。


AQUA-7が玲司を引く。


「撤退する!」


「こいつらは数が増える!」


二人が走る。


背後では。


ぽよん。


ぽよん。


無数の水音。


玲司が振り返る。


そして止まった。


海面。


そこに。


大量の蒼泡が浮かんでいた。


数百。


いや。


数千。


海そのものが、

蒼く脈動している。


AQUA-7の声が震える。


「あり得ない……」


「封印施設は全部停止したはず……」


その時。


通信ノイズ。


『――こちらNEREID本部!』


『第七码頭全域で深海粒子異常増殖!』


『流体崩壊兵器の群体化を確認!』


『繰り返す!』


『群体化――』


通信が途切れる。


ノイズ。


その奥で。


誰かの悲鳴が聞こえた。


玲司の瞳が揺れる。


海を見る。


蒼い海。


そこに。


巨大な“影”がいた。


海底。


とてつもなく深い場所。


暗闇の奥。


巨大すぎて、

形が分からない。


だが。


確かにいた。


そして。


どくん。


海全体が脈動する。


玲司の心臓と、

同じタイミングで。


「――っ!?」


頭へ、

映像が流れ込む。


暗い深海。


巨大な瞳。


脈動する海。


そして。


誰かの声。


『――まだ、

終わっていない』


玲司が膝をつく。


息が乱れる。


その時。


EVEが現れた。


雨の中。


深海色の翼を揺らしながら。


静かに。


「……EVE」


EVEは海を見ていた。


感情の薄い顔。


だが。


その瞳には、

僅かな動揺があった。


「――母体反応」


AQUA-7が凍りつく。


「まさか……」


EVEが続ける。


静かに。


「――海が、

目覚め始めている」


その瞬間。


海面が割れた。


巨大な蒼い光。


そして。


無数の蒼泡が、

一斉に空へ浮上する。


夜空が、

蒼く染まる。


まるで。


海そのものが、

泣いているようだった。


――続く

第13話でした。


今回は、

「静かな恐怖」

「海の異常性」

「蒼泡の不気味さ」

を強めています。


HYDRAは、

“説明される恐怖”ではなく、

“理解できない違和感”

を積み重ねる方向で描いています。


そしてついに、

母体反応という単語が登場しました。


次回から、

海そのものが動き始めます。

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