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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第13話 深海の瞳

海は、

ただ存在している訳ではない。


見ている。


聞いている。


記憶している。


そして今。


蒼海区の海が、

玲司達を見つめ始めていた。

海風が止まっていた。


蒼海区沿岸部。


夜の海。


都市灯火すら、

深海色へ染まり始めている。


海面の奥。


巨大な瞳。


あまりにも巨大だった。


都市そのものを、

見下ろしているような存在感。


玲司の呼吸が浅くなる。


「……何なんだよ、

あれ……」


誰にも分からない。


だが。


本能だけが理解していた。


見てはいけない存在。


EVEが静かに前へ出る。


深海色の翼が揺れる。


「――母体由来反応、

急速上昇」


AQUA-7の通信へ、

激しいノイズが混ざる。


『こちらNEREID本部!』


『全区域へ緊急避難命令!』


『繰り返す!!』


その瞬間。


海面で、

蒼泡が一斉に跳ねた。


ぽよ。


ぽよぽよ。


無数。


数百。


数千。


海面全体が、

蒼白色に発光している。


玲司の顔色が変わる。


「ふざけんな……」


一匹だけでも、

防波堤を消し飛ばした。


もし街へ入れば。


都市そのものが消える。


EVEが海を見る。


その瞳に、

僅かな悲しみが浮かぶ。


「――海が不安定化している」


「――母体が、

目覚め始めているため」


玲司が睨む。


「母体って何だ」


EVEは答えない。


いや。


答えられないようだった。


その時。


巨大な瞳が、

ゆっくり瞬きをした。


ゴォォォ――――。


海全体が揺れる。


津波ではない。


“呼吸”。


海が息をしていた。


その瞬間。


玲司の脳内へ、

大量の映像が流れ込む。


暗い深海。


無数の光。


海底を覆う巨大な影。


そして。


泣いているような、

巨大な声。


『――……さび……しい……』


玲司が目を見開く。


「……は?」


頭痛。


激痛。


玲司が膝をつく。


海面へ、

水紋が広がる。


その瞬間。


玲司の周囲へ、

蒼い水膜が展開した。


自動防御。


AQUA-7が駆け込んでくる。


白い装甲。


深海粒子噴射。


「玲司!!」


だが。


彼女も海を見た瞬間、

動きが止まる。


巨大な瞳。


都市を見下ろす、

深海色の存在。


AQUA-7が息を呑む。


「……これが、

母体反応……?」


EVEが静かに頷く。


「――完全覚醒ではない」


「――まだ、

浅い眠り」


玲司が顔を上げる。


汗が流れている。


だが。


恐怖だけじゃなかった。


胸の奥が、

異常に苦しい。


まるで。


“泣きそう”だった。


「……何でだよ」


海を見る。


巨大な瞳。


その奥に。


理解不能なほど、

深い孤独を感じた。


その瞬間。


海面から、

一体の“人型”が浮上する。


静かに。


黒い髪。


蒼白の皮膚。


裸足。


まるで、

海から生まれたような姿。


AQUA-7が武装展開。


「人型反応確認!」


だが。


その人型は、

攻撃しなかった。


ただ。


玲司を見ていた。


真っ直ぐ。


その瞳は、

どこか幼い。


EVEの表情が揺れる。


「――深海人型……」


人型が、

小さく口を動かす。


『……いた』


玲司の鼓動が跳ねる。


『……やっと』


声は幼い。


だが。


海鳴りのように響く。


AQUA-7が睨む。


「何者だ」


人型は答えない。


代わりに。


玲司へ、

ゆっくり手を伸ばした。


その瞬間。


玲司の脳内へ、

また映像が流れ込む。


宇宙。


空へ浮かぶ海。


巨大な黒海裂界。


そして。


一人で立つ榊悠真。


傷だらけで。


孤独の中で。


それでも、

誰かを守ろうとしている。


玲司の瞳が揺れる。


胸が痛い。


苦しい。


だが。


目を逸らせなかった。


人型が、

静かに呟く。


『……あなた、

似てる』


玲司が息を呑む。


『……あの人に』


その瞬間。


海面の蒼泡達が、

一斉に都市側へ向きを変えた。


ぽよ。


ぽよぽよ。


EVEの顔色が変わる。


「――侵攻開始」


AQUA-7が叫ぶ。


「総員迎撃!!」


警報。


サイレン。


深海粒子砲展開。


都市が赤く染まる。


だが。


海の奥では。


巨大な瞳が、

静かに玲司を見つめ続けていた。


まるで。


何かを確かめるように。


―――続く

第13話でした。


今回は、

母体由来存在と、

“海そのものの感情”

を強く描いています。


HYDRAでは、

敵と味方の境界が、

少しずつ曖昧になっていきます。


次回、

蒼泡侵攻戦が始まります。

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