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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第12話 海底隔離層

蒼泡は、

兵器ではなかった。


終焉戦争で、

人類が切り捨てた

“痛みの残骸”。


そして今。


海の底で眠っていた記憶が、

再び目を覚まそうとしていた。

ドクン。


地下から、

巨大な脈動音が響く。


施設全体が震えていた。


ぽよっ。


ぽよぽよっ。


無数の蒼泡達が、

床を跳ねながら、

地下方向へ集まり始める。


まるで。


“帰巣”。


玲司の額へ汗が流れる。


胸の奥。


原初因子が、

嫌なほど反応していた。


「……下に何がいる」


AQUA-7が武装を展開する。


白い粒子装甲。


深海粒子ライフル。


だが。


彼女の声は硬かった。


「NEREIDの記録に無い反応よ……」


EVEの声が通信へ響く。


『――該当施設を照合』


『旧名称:

第零深海研究隔離層』


玲司が眉をひそめる。


「第零……?」


『終焉戦争末期、

存在侵食兵器研究が行われていた施設』


沈黙。


AQUA-7の顔色が変わる。


「まさか……

封鎖済みのはずよ……!」


EVEが続ける。


『――記録消失』


『封鎖後、

全研究員死亡扱い』


『だが』


『内部生命反応を確認』


玲司が低く呟く。


「……生きてるのか」


返答は無い。


その時。


ガコン――。


病室奥の隔壁が、

ゆっくり開き始めた。


暗い通路。


深海色の非常灯。


冷たい海風。


地下から、

水の匂いが流れ込む。


ぽよっ。


蒼泡達が、

一斉に通路奥へ消えていく。


玲司が歩き出す。


AQUA-7が叫ぶ。


「待て!!」


だが玲司は止まらない。


「放っとけない」


静かな声。


怒っていた。


いや。


苦しんでいた。


終焉戦争。


人を兵器にした世界。


その残骸が、

今も泣いている。


玲司は、

それを無視できなかった。


地下通路。


水浸しの床。


壁一面に、

古い研究コードが並んでいる。


TYPE-A


SEA MEMORY


SOUL PRESSURE


FLOW CORE


読めないほど、

錆びついた文字。


だが。


奥へ進むほど、

深海粒子濃度が上がっていく。


玲司の呼吸が乱れる。


視界の端で、

海が揺れていた。


違う。


記憶だ。


誰かの残響。


『……成功率、

3%未満』


『人格維持不可』


『ですが、

対終焉存在には有効です』


『なら続けろ』


知らない声。


研究員達。


そして。


泣いている少女。


水槽の中。


半透明の液体へ、

沈められている。


『いや……

いやだ……』


玲司が足を止める。


胸が痛い。


「……っ」


AQUA-7が玲司を見る。


「また記憶共鳴?」


玲司は答えない。


通路奥。


巨大扉が見えていた。


深海色の封印コード。


扉表面には、

大量の手形が残っている。


まるで。


内側から、

誰かが逃げようとしたように。


EVEの声が低くなる。


『――隔離層最深部』


『流体知性体反応、

極大化』


その瞬間。


巨大扉が、

ひとりでに開いた。


重い音。


冷気。


そして。


目の前に、

巨大空間が広がる。


地下海。


施設内部とは思えない。


広大な海水空間。


その中心。


蒼白く発光する、

巨大な“繭”。


玲司の呼吸が止まる。


繭の内部。


人影。


白髪。


女性。


液体の中で、

静かに眠っていた。


AQUA-7が震えた声を漏らす。


「……EVE?」


だが。


違う。


その女は、

ゆっくり目を開く。


深海色の瞳。


そして。


口元が、

静かに歪む。


『――また、

人間は間違えたのね』


同時。


地下海全体が、

脈動した。


ドクン。


蒼泡達が、

一斉に歓喜するように跳ねる。


ぽよぽよぽよぽよ――。


EVEの声が初めて乱れる。


『――識別不能』


『これは……』


『流体知性体、

女王核』


玲司の背筋へ、

冷たいものが走る。


女王核。


その存在が、

ゆっくり玲司を見つめる。


まるで。


“値踏み”するように。


そして。


静かに呟いた。


『――あなたから、

あの人の海が聞こえる』


玲司の瞳が揺れる。


「あの人……?」


女王核は、

悲しそうに微笑んだ。


『榊悠真』


地下海が、

静かに揺れた。


―――続く

第12話

「海底隔離層」でした。


終焉戦争時代の封印施設。


そこに眠っていたのは、

流体知性体の“女王核”。


そして彼女は、

榊悠真を知っていました。


次回、

終焉戦争の禁忌研究、

そして榊悠真が見た

“人類の闇”が語られます。

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