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トリコロールの下で進む祭典

1792年。夏。


パリが、変わり始めていた。


変化は、音から始まった。


チュイルリー庭園の奥に、巨大な木造の建築物が姿を現しつつあった。半円形の観客席を持つ、千五百人収容のコンサートホール。ナポレオンが設計した新規格の木材——度量衡の統一により、全国の製材所から均一な寸法の梁が供給されるようになっていた——で組み上げられたその建物は、まだ屋根の骨組みが剥き出しだったが、内部ではすでに音響の試験が行われていた。


ルイージ・ケルビーニが、仮設の指揮台に立っていた。


三十二歳。フィレンツェ生まれの作曲家。十代でオペラを書き、二十代でパリに渡り、今やフランス音楽界の新星と目されている男。痩せた体躯。鋭い目。指揮棒を持つ右手には、イタリアの太陽と、フランスの理性が、同居していた。


「もう一度。第三楽章の冒頭から」


ケルビーニの声が、むき出しの梁の間に響いた。パリ音楽院の教授陣と優秀な学生たちで構成された仮編成のオーケストラが、再び楽器を構えた。ヴァイオリンが弓を上げ、オーボエが唇を湿らせ、ティンパニ奏者が撥を握り直す。


ケルビーニが指揮棒を振り下ろした。


音が、空間を満たした。


まだ天井のない建物の中を、音が渦巻き、上昇し、パリの空に向かって放たれていく。通りを歩いていた市民たちが足を止め、工事現場の作業員が手を止め、セーヌ川の船頭が櫂を止めた。


この音を、パリは知らなかった。


宮廷音楽でもなく、教会音楽でもなく、酒場の歌でもない。新しい時代の、共和国の音楽。力強く、自由で、しかし精密に構成された音の建築。


ケルビーニは音響に満足しなかった。壁面の角度を三度修正させ、反響板の位置を二十センチ動かし、客席の傾斜を一度変えた。彼の耳が求める完璧な残響時間である、1.8秒を実現するために。


「ケルビーニ殿」


サン=ジュストが、建設中のホールの入口に立っていた。美青年は黒いフロックコートを着て、手に分厚い書類を抱えている。祭典の総合構成を任されたサン=ジュストは、すべての部門の進捗を監督していた。


「音響はどうだ」


「あと一週間で完成する。壁面の仕上げが終われば、残響は完璧になる」


「ハイドン翁は?」


「明日、パリに到着する。モンモランシー侯爵の馬車で。——あの老人は、旅の疲れを見せるどころか、馬車の中でスコアを書いていたそうだ。パリ到着後すぐにリハーサルを始めたいと伝えてきた」


サン=ジュストの唇に、かすかな笑みが浮かんだ。理想主義者が、現実の美しさに触れたときの笑み。


「六十歳の老匠が、パリのために新作を書いている。——これは、低俗ではないな」


「低俗ではない。最高だ」


ケルビーニが、珍しく笑った。イタリア人の情熱と、音楽家の誇りが、その笑顔に凝縮されていた。


* * *


ハイドンがパリに到着した翌日、もう一人の音楽家が、ひっそりとパリの街に足を踏み入れた。


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。二十二歳。ボンからウィーンに出たばかりの、まだ無名の若者。短く刈り込まれた黒い髪。がっしりとした肩。人混みを歩く足取りは、少し不器用で、まるで自分の体が大きすぎるかのようだった。顔は美しいとは言えなかったが、目だけが異常だった。怒りと渇望と、世界のすべてに対する挑戦が、灰色の瞳の中で燃えていた。


ベートーヴェンをパリに連れてきたのは、ハイドンだった。


「お前の才能はボンでは腐る。パリに行け。世界で最も新しい国に行け。あの国には、お前の音楽を聴く耳がある」


ハイドン翁の言葉だった。師は弟子を、自分と一緒にパリに連れてきた。——正確には、弟子は師の馬車に無理やり乗り込み、師は溜息をつきながらそれを許した。


パリの通りを歩くベートーヴェンの耳に、建設中のコンサートホールから漏れてくる音が届いた。


足が止まった。


オーケストラの音。だが、ウィーンのそれとは何かが違う。音の中に——自由があった。規則的な宮廷音楽の枠を逸脱しようとする、何かの意志。まだ形にはなっていないが、確かにそこにある——未来の音楽の胎動。


ベートーヴェンは、工事現場の柵を乗り越え、建設中のホールに入った。


指揮台のケルビーニが振り向いた。


「誰だ。ここは関係者以外立入禁止だ」


「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。ハイドン翁の弟子だ」


「ハイドン翁の?——聞いたことがないが」


「当たり前だ。まだ何も発表していない」


ベートーヴェンの声は、ウィーン訛りのフランス語で、粗野で、不愛想で、しかし——その不愛想さの裏に、怯えのようなものが微かに覗いていた。二十二歳の青年が、見知らぬ大都会で、自分の居場所を探している怯え。


ケルビーニは、数秒間、ベートーヴェンを見つめた。それから楽譜を一枚渡した。


「弾いてみろ。ピアノがある」


ホールの端に、試験用のフォルテピアノが置かれていた。ベートーヴェンは無言で歩み寄り、椅子に座り、鍵盤に指を置いた。


渡された楽譜を一瞥し——無視した。


代わりに、自分の頭の中にある音楽を弾き始めた。


最初の数小節で、ケルビーニの表情が変わった。


オーケストラの演奏を聴いていたサン=ジュストが、書類を持つ手を止めた。


音が——暴れていた。


古典的な形式を土台にしながら、内側から形式を破壊しようとする力。ピアノの鍵盤を叩く指は荒々しく、時に美しく、時に暴力的で、しかし——すべての音が、必然の位置にあった。偶然の音は一つもなかった。暴力に見えるものは、実は——精密に計算された爆発だった。


弾き終えたベートーヴェンが、立ち上がった。


ケルビーニが、数秒間、沈黙した後、言った。


「名前をもう一度」


「ベートーヴェン」


「覚えておく」


* * *


音楽部門の準備が進む一方で、美術部門は、ダヴィドの指揮の下、パリ全体を巨大な展示場に変えようとしていた。


ジャック=ルイ・ダヴィド。四十四歳。新古典主義の巨匠。かつて球戯場の誓いを描き、革命の視覚的記録者として名を馳せた画家。今は、万国最高芸術祭の美術部門総合演出として、サン=ジュストと共にパリの変容を指揮している。


ダヴィドのアトリエには、ヨーロッパ中から届けられた絵画が集まりつつあった。


ゴヤの作品が、マドリードから到着した。宮廷の華やかさと人間の残酷さを同時に捉えた、あの容赦ない目。ダヴィドは、ゴヤの絵の前に立ち、長い間動かなかった。


「この男は——怖いな」


ダヴィドが呟いた。隣に立つサン=ジュストが首を傾げた。


「怖い?素晴らしい技巧ではないか」


「技巧の話ではない。この男の目が怖い。世界の裏側を見ている目だ。——我々の革命の裏側も、この目には見えるだろう」


ターナーの習作が、ロンドンから届いた。水彩の小品。テムズ川の朝霧を描いたものだったが、その光の処理は十七歳の少年のものとは思えない成熟を見せていた。光が物質を溶かし、物質が光に還元される。境界線のない世界。


そしてパリからは、エリザベート・ヴィジェ=ルブランの新作が届いた。


三十七歳。かつてマリー・アントワネットの肖像画を描いた女性画家。革命によってパトロンを失い、一時はイタリアに亡命していた。

しかし、改変されたこの歴史ではアントワネットが生存し、しかも「市民アントワネット」として国民的人気を得ていることから、新しいパトロン、すなわちフランス共和国の下で、新たな画業を始めていた。


彼女の新作は、プチ・トリアノンの菜園で働くアントワネットの肖像だった。かつての豪華な宮廷衣装の代わりに、麻のエプロンをかけ、手にはトマトを持ち、穏やかに微笑む元王妃。——その絵は、旧体制と新体制の架け橋であり、同時に、女性画家が公的な場で堂々と作品を発表できるフランスの先進性の証明でもあった。


ダヴィドは、ヴィジェ=ルブランの絵の前で腕を組んだ。


「これを——展示の冒頭に置こう」


「冒頭に?」


サン=ジュストが驚いた。


「なぜだ。ゴヤやハイドンの方が——」


「ゴヤとハイドンは外国人だ。展示の冒頭は、フランスの画家の、フランスの主題の、フランスの絵であるべきだ。そしてそれが女性の手によるものであることが、この祭典の意味を最も強く示す」


サン=ジュストは、数秒間考え、頷いた。


「低俗の中の美徳、か」


「そうだ。君がいつも言っていることだ」


* * *


六月。


オペラ座の一般公開が決定した。


パリ・オペラ座——パレ・ロワイヤルに隣接する、フランス最高の歌劇場——は、革命以前は王室と貴族の独占的な娯楽空間だった。一般市民が入場することは、事実上不可能だった。入場券は存在せず、貴族の招待状だけが入場の鍵だった。


ロベスピエールの指示は明確だった。


「オペラ座を、すべてのフランス市民に開放する。入場料はフラン建てで設定し、最も安い席は労働者の日当の十分の一以下にする」


この決定は、パリの民衆に衝撃を与えた。


オペラ座。あの金色の内装。シャンデリアの光。赤いビロードの座席。——それが、パン屋の主人にも、鍛冶屋の親方にも、洗濯女にも、開かれる。


モーツァルトの遺作が上演プログラムに組まれた。前年に三十五歳で夭折した天才の最後のオペラ『皇帝ティートの慈悲』と『魔笛』。加えて、イタリアの最新の喜劇オペラ。フランスの新進作曲家たちの小品。——毎晩、異なる演目が上演される。


チケットの発売初日、オペラ座の前に行列ができた。


行列は、セーヌ川まで伸びた。


* * *


七月。祭典の開幕まで一か月を切った夜。


ロベスピエールの執務室に、ラファイエットが現れた。


いつもの軍靴のリズミカルな足音。だが、今夜は——足音に、少し弾むような軽さがあった。何かを隠している男の足音。いや、隠しているのではなく——披露する瞬間を楽しみにしている男の足音。


「ロベスピエール。見せたいものがある」


ラファイエットは、腕の下に、細長い布の包みを抱えていた。


「何だ」


「この祭典と、この新しい国にふさわしいシンボルを持ってきた」


ラファイエットが、机の上で包みを広げた。


布が展開された。


三色の布。


左から順に——青。白。赤。


三つの色が、均等な幅で、縦に並んでいる。絹ではなく、フランス産の上質な麻で織られている。ラヴォアジエの化学チームが改良した天然染料で染められ、色は鮮やかで、しかし品のある深みがあった。


トリコロール。


三色旗。


ロベスピエールは、布を手に取った。指先で質感を確かめ、光にかざし、三つの色を一つ一つ見つめた。


「美しいな」


「だろう」


ラファイエットが、自信に満ちた笑みを浮かべた。


「配色を説明しよう。左右の青と赤はパリ市の紋章の色だ。パリの民衆を表す。革命を起こした人民の色」


「そして、中央の白は」


ロベスピエールの目が、白い帯に停まった。


「白は——ブルボン家の色だ」


ラファイエットが頷いた。


「かつての王家の色だ。白百合の白。ブルボンの白」


「それを——中央に置くのか。民衆の赤と青の間に」


「そうだ」


ラファイエットの目が真剣になった。アメリカの戦場を駆けた軍人の目。ワシントンの副官として、独立宣言の理念を血肉にした男の目。


「ロベスピエール。我々は王を殺さなかった。追放もしなかった。ルイ・カペーは今も、ヴェルサイユの工房で時計を作っている。アントワネットはプチ・トリアノンで菜園を耕している。——我々の革命は、過去を破壊したのではない。過去を、新しい秩序の中に組み込んだのだ」


「だから——白を残す」


「そうだ。民衆である赤と青が、旧体制の白を、両側から包んでいる。排除ではなく、包摂だ。過去と現在が結合した、新しいフランスの形。これが、トリコロールだ」


ロベスピエールは三色旗を両手で持ち上げた。


蝋燭の光の中で、三つの色が柔らかく輝いている。青は深く、白は清潔に、赤は暖かく。三つの色が、対立ではなく、調和している。


ロベスピエールの脳が、瞬時にこのデザインの政治的意味を計算していた。


白を残すことの意味。


ブルボンの色を消すのではなく、残すことの意味。


もし三色旗が赤と青だけだったら、それは「旧体制の否定」のシンボルになる。否定は、敵を作る。国内の王党派を敵に回し、国外の王政国家を刺激する。——だが、白を中央に残せば、メッセージが変わる。「我々は過去を否定しない。過去を、新しい秩序に統合した」。このメッセージは、国内の旧体制支持者にも、国外の王政国家にも、受け入れやすい。


タレーランがウィーンで結んだ不可侵条約。ミラボーがベルリンで成立させた取引。——それらの外交的成果を、一枚の旗が視覚的に補強する。


しかも——白を赤と青が「包んでいる」という配置は、権力の実態を正確に反映している。旧体制(白)は存在するが、その両側を民衆(赤・青)が囲んでいる。包まれているのだ。守られているのか、閉じ込められているのか——解釈は見る者に委ねられる。


面白い男だ、ラファイエット。


ロベスピエールが内心で、その言葉を浮かべたのは三度目だ。タレーランに向けた「面白い」は知性への値踏みだった。ナポレオンに向けた「面白い」は能力への敬意だった。ラファイエットに向けた「面白い」は——この男の無自覚な天才性への、ほとんど畏敬に近い感嘆だった。


この男は、自分が何をしているのか分かっているのだろうか。


トリコロールという一枚の布で、フランスの内政と外交と歴史認識を、同時に表現してしまった。意図的なのか。直感的なのか。おそらく——半分ずつだろう。ラファイエットはアメリカで独立宣言の力を学んだ男だ。シンボルが持つ政治的な力を、理論ではなく体験で知っている。


「ラファイエット」


「何だ」


「このデザインに、意味を加えてもいいか」


「意味?」


「三つの色に——三つの言葉を対応させたい。赤は博愛。白は平等。青は自由。——自由・平等・博愛。この三語を、トリコロールの理念として宣言する」


ラファイエットの目が、見開かれた。


「自由・平等・博愛……」


「この三語は、一枚の旗よりも長く残る。旗は焼かれることがある。だが、言葉は焼けない。三つの色と三つの言葉が結びつけば——それは、フランスという国のアイデンティティそのものになる。百年後も、二百年後も」


ラファイエットは、数秒間、ロベスピエールを見つめた。


それから——軍人らしい、率直な笑みを浮かべた。


「君は——本当に、先のことを考えるな」


「考えざるを得ない」


ロベスピエールの声に、かすかな重みがあった。百年後も二百年後も——その言葉には、五年後の断頭台の記憶が、わずかに滲んでいた。自分が死んだ後の世界を設計する。自分がいなくなっても動き続けるシステムを組む。

それは、一度死んだ者だけが持てる視野だった。


「では——正式に提案しよう」


ラファイエットが三色旗を掲げた。


「この旗を、万国最高芸術祭のシンボルとする」


「賛成だ」


ロベスピエールが立ち上がった。


「だが、一つだけ修正したい」


「何を」


「この旗は——一度の祭典のシンボルではない」


ロベスピエールが、三色旗に手を伸ばし、その布地に触れた。


「これは、我が国そのものだ。我々の理想そのものだ。フランスが存在し、自由と平等と博愛を信じ続ける限り——この旗は翻り続ける。フランス共和国の国旗として」


部屋の中で、二人の男が三色旗を見つめていた。


蝋燭の炎が揺れ、三つの色が——青と白と赤が——光の中で息をするように揺れた。


五年後の未来で、この旗は恐怖政治の血で汚され、ナポレオンの野心に利用され、王政復古で引き降ろされ、七月革命で再び掲げられ、何度も倒され、何度も立ち上がる。


だが、1792年の夏の夜の瞬間は、この部屋の蝋燭の光の中の三色旗は、まだ何にも汚れていなかった。


生まれたばかりの理想の色。


ロベスピエールは、その布地から手を離した。


「明日、議会で正式に採択する。国旗として」


「了解だ」


ラファイエットが頷き、三色旗を丁寧に畳んだ。


扉に向かいながら、ラファイエットは振り向いた。


「ロベスピエール」


「何だ」


「君に——正直に言っておきたいことがある」


「聞こう」


「この旗の白は——確かにブルボンの色だ。だが、私がこの配色を選んだ本当の理由は、もう一つある」


「何だ」


「白は——降伏の色でもある」


ロベスピエールの目が、微かに見開かれた。


「赤と青に挟まれた白。民衆に包囲された王権。それは包摂であると同時に——降伏だ。王権がこの国で生き残るためには、民衆の色に挟まれ、民衆の秩序に従い、民衆のシステムの中に組み込まれるしかない。——白は、その降伏を、美しく表現している」


沈黙。


「……やはり、無自覚ではなかったか」


「アメリカで学んだことは多い。だが、最も重要なことは——旗は、見る者によって意味が変わるということだ。王党派はこの旗を見て『王家の色が残された』と安堵する。共和派は『王権が包囲された』と満足する。外国の君主は『フランスは過去を尊重している』と安心する。——同じ一枚の布が、三つの異なるメッセージを、三つの異なる相手に、同時に送る」


「……面白い男だ、ラファイエット」


「君に四回目の『面白い』をもらったな。光栄だ」


ラファイエットが笑い、扉を閉めた。


足音が廊下に遠ざかっていく。


* * *


翌日、国民議会でトリコロールが正式にフランス共和国の国旗として採択された。


万場一致。


反対する者はいなかった。青は自由を、白は平等を、赤は博愛を意味する。——その説明は、すべての議員に受け入れられた。白がブルボンの降伏を意味するという、ラファイエットの二重の意図に気づいた者は、ロベスピエール以外には一人もいなかった。


その日の夕方、パリの街に、最初のトリコロールが掲揚された。


チュイルリー庭園の建設中のコンサートホールの屋根に。


オペラ座の正面ファサードに。


ノートルダム大聖堂の尖塔の隣に。


セーヌ川の橋の欄干に。


三つの色が、夕日を受けて、パリの空に翻った。


通りを歩く市民が足を止め、旗を見上げた。パン屋の娘。鍛冶屋の息子。洗濯女。荷馬車の御者。——彼らの目に、三つの色が映っている。自由と平等と博愛。あるいは、民衆と王権と民衆。あるいは、過去と現在と未来。


見る者によって意味が変わる。


だが、美しさだけは——誰にとっても同じだった。


建設中のコンサートホールの中では、ケルビーニがオーケストラを指揮し、ハイドンが客席の最前列でスコアを広げ、若きベートーヴェンが柱の影で腕を組んで聴いている。


ダヴィドのアトリエでは、ゴヤの絵とターナーの習作とヴィジェ=ルブランの肖像画が、壁に並べられている。


オペラ座の前には、チケットを求める市民の行列が、今日も伸びている。


すべてがトリコロールの下で動き始めていた。


万国最高芸術祭の開幕まで、あと三十日。

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