↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/102

【90話】追想の元日 2

 

『タレント格付けクイズ』を観終えると、極導(きわみち)は屋敷の3階にあがった。


 3階には亡き父・明日(あす)導(みち)の書斎がある。


「父さん、入るよ」


 いるはずのない部屋主にひと声かけ、極導は書斎に入った。


 きょう、書斎に入るのは、これが二度目。


 新年のあいさつをするために、午前中に一度訪れていたのだ。



 *  *  *  *  *



 露(ろ)台(だい)へ行くと、そこから夜景をながめた。


 御手洗(みたらい)の屋敷は金筋丘(きんすじおか)の上にあるので、3階から追株町(おかいぶちょう)を見おろすことができるのだ。


「平和な日だったな」


 そして一日の出来事を振り返りはじめた。


「きょうが、ずっとつづいたらいいのに」


 冬の闇に想いをこぼしたとき、


「そう思うぐらい、いい日だったもんね」


 振り向くと、露台の入口に花(はな)子(こ)が立っていた。


 花子は極導(きわみち)のとなりに来ると、


「この半年、いろんなことがあったよね」


 極導と同じように手すりにもたれた。


 ふたりが出会ったのは去年の6月12日。


 極導の手組(てぐみ)になる怪異を呼びだすために、寿学(じゅがく)が召霊(しょうれい)陣(じん)で花子を召喚したのだ。


「召喚してすぐなのに、ミッチー、怖い顔して『いますぐ帰れ!』って怒鳴ったよね」


「それは――」


「でも、つぎの日には霊盃(さかずき)をかわしてくれた」


「ああ」


「ありがと」


「礼を言うのはこっちだよ。おまえには何度も助けてもらってるし、手組(てぐみ)団(だん)子(ご)だって、おまえがいたから思いつけたんだ」


 手組(てぐみ)団(だん)子(ご)は極導が考案したネオ和菓子で、串を使わず素材の粘り気を利用して、手をつなぐようにふたつの団子をくっつけた商品である。


「いろんなことがあった分、いろんな人にも会ったよね」


「ああ」


〈きょらく〉の父娘(おやこ)、蝦蟇(がま)七(しち)、煌(こ)白(はく)、ミユキにミサキ。


 それと南(みなみ)魔地(まち)奉(ぶ)行(ぎょう)のくらりとも去年はじめて顔を合わせたし、冬(ふゆ)輝(き)と煌白の距離を縮めるために人体模型のケイと太眉人面チワワのケンにも手を貸してもらった。


 だが、すべての出会いが良好だったわけじゃない。


 出会った者のなかには、流兵衛(りゅうべえ)や涼(りょう)雅(が)のように命を懸けて戦った下手人(げしゅにん)もいる。


 ときに極導は思う。


 もし、ちがう時代で彼らと出会えていたら――。


 いまとは異なる立場で出会い、その心に寄り添うことができたのなら――。


 おたがいに手を取りあえたのではないか、と。



 *  *  *  *  *



「考えてみれば、きょうがずっとつづいたら、これから出会うやつとも会えないんだよな」


 町の灯(あか)りから花(はな)子(こ)に視線を移した。


「それって、なんかさみしいよな」


「だね」


「全部が全部、いい出会いじゃないのはわかってる。それでも、おれは人や怪異との出会いを大切にしたい」


「カッコいいぞ、相棒」


「それに元日がループしたら、初詣が初詣じゃなくなるしな」


「初場所だって、はじまらないしね☆」


 花子がつっぱりのマネをした。


「ミッチーだって、いつか幕内でかつやくする花丸(はなまる)を見たいでしょ?」


「もちろん」


 ふたりの推している花丸は東十両八枚目の力士。


 成績次第では今年中に幕内昇進する可能性も十分あるのだ。


「なあ、花子」


「なに?」


「うん。改めてってかたちにはなるんだけど、その――」


 短く息を吸うと、極導(きわみち)は花子のほうへ向き直った。


「今年も、いや、これからもよろしくな」


「わたしのほうこそ、いろいろと迷惑かけちゃうかもだけど、これからもよろしくね」


 花子の笑顔は、霊盃(さかずき)をかわしたあの日と同じで、どの星よりも輝いて見えた。



(追想の元日・完)


【あとがき】


これからもゴクハナの新作エピソードは投稿していく予定です。


9月13日(日)より、大相撲九月場所がはじまります。


大相撲を楽しむコツは推(お)相撲(すもう)さん(推しの力士)を見つけること。


顔がかわいい、イケメン、初恋の相手に似ている、出身地が同じ、まわしの色が推しのアイドルのメンカラと同じ……。どんな理由でもかまわないので、推相撲さんを見つけてみましょう。


そうすれば、本場所中は、胸が高鳴る毎日を過ごせるはずです。(場所後の相撲ロスもあるけど……)


またYouTubeには人気力士の取組だけでなく、稽古風景やお相撲さんがつくる料理動画もあるので、九月場所前に推相撲さんを見つけたい方は、こちらもチェックすることをオススメします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。