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【89話】追想の元日 1

 

「きょうが、ずっとつづいたらいいのに」


 御手洗(みたらい)極導(きわみち)は露(ろ)台(だい)の手すりにもたれながら、一日の出来事を振り返っていた。


 きょうは1月1日。めでたい元日である。


 ふだんは稽古のために早起きする極導(きわみち)も、この日だけは11時過ぎにのんびり起床。


 屋敷のみんなにあいさつをすませたあと、朝食とも昼食ともとれる雑煮(ぞうに)をすすった。


 午後からは花(はな)子(こ)と初詣にでかけた。


 ふたりが向かったのは血妖打(ちよだ)区(く)にある冠(かん)田(だ)明神(みょうじん)。


 商売繁盛や勝負運にご利益のある神社だ。


「うわ~、すごい数の人」


 ゆったり初詣を期待していた花子が、大ウナギのような参拝者の列を見て、目を丸くした。


 ふたりが拝殿に参拝できたのは、それから1時間後のことだった。


「ミッチー、おみくじ引こうよ」


 花子の提案で、境内にある金運おみくじを引くことにした。


 結果は両者とも大吉。


 座(ざ)敷(しき)童(わらし)が5人もいる御手洗(みたらい)家(け)では、それ以外を引くほうがむずかしいのかもしれないが、ふたりとも素直によろこんだ。



 *  *  *  *  *



 屋敷にもどると、極導(きわみち)はすぐに離れにある道場に向かった。


 朝はゆっくりと休んだが、刀を振るうのは日課。正月も平日も関係ない。


 年初めということもあり、その日の稽古はいつもより多めに素振りをし、動く甲冑を相手に木刀で何試合もおこなった。


 稽古のあとは落語番組を観ながら、部屋でゴロゴロ。


 ほどよい疲労感に包まれながら、ちびちびやる甘酒は最高の贅沢(ぜいたく)だった。



 *  *  *  *  *



 夕食のおせち風ちゃんこ鍋を食べたあとは花(はな)子(こ)と『タレント格付けクイズ』を観た。


 AとBどちらがプロ楽団による演奏かを当てる問題では、


「Aのほうがプロだな」


「わたしはBだと思う」


「理由は?」


「Bの演奏のほうが、音が跳ねてる感じがしたから」


「音が跳ねるか。言われてみれば、たしかにBのほうが、たのしく演奏してるように聞こえたかも」


「でしょ?」


「いや、でも全体にまとまりがあったのはAのほうで……あ~、わかんなくなってきた」


 平和な悩みに頭をかかえるのだった。



(つづく)


【あとがき】


きょうは、このあと20時に『追想の元日 2』を投稿します。


ちなみに雑煮のお餅は関西では丸餅、関東では角餅が使われることが多いそうです。


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