【88話】寿司と魔廻りと 4
寿司は自由だ。可能性のかたまりだ。
魚や玉子はたしかにおいしいが、世のなかには、ほかにもおいしい食材がたくさんある。
だから、いろんなものを載せていい。
いろんな組み合わせにチャレンジしていい。
ハンバーグ寿司はそれを極導と冬輝に教えてくれた。
「冬輝、きょう、おれたちはあたらしい寿司に出会った」
「はい」
「もっと出会ってみないか?」
「出会いましょう。お腹が膨れあがるまで」
「よし。きょうはマグロも真鯛も一切なしだ。食べ慣れたネタは注文禁止。こどもも大人も大好きな童心寿司の世界を探索するぞ」
それから20分後――。
「さすがに腹が張ったな」
「は、はい……」
ふたりが食べたのはイベリコ豚の大とろ、濃厚チェダーチーズてんぷらにぎり、あぶりえび明太チーズ、てりやきチキン、牛すき焼き風軍艦等など。
あとデザートにかき氷とみたらし団子も注文した。
「デザートも食ったし、きょうはこれで引きあげるか」
「そうですね。でも兄さん、その前に――」
「ああ、わかってるよ」
ふたりは通路を挟んだとなりのテーブル席に向かった。
そこにいるのは10歳ぐらいの男の子と、その父親。
極導に抗菌カバーの開け方を教えてくれた父子だ。
「これ、あげるよ」
極導は男の子にスシ騎士のキーホルダーをわたした。
「どっきりガッチャで当たったんだ。カバーの開け方を教えてくれたお礼だよ」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「これからも、お父さんと仲よくな」
よろこぶ男の子と感謝する父親に手を振って、極導と冬輝はセルフレジへ向かった。
* * * * *
会計を済ませると(極導のおごり)ふたりは駐輪所でわかれることにした。
「じゃあな、冬輝」
「兄さんも気をつけて」
「カバーの開け方もタッチパネルの使い方もマスターした。あさっての忘年会、女子にいいとこ見せつけような」
「はい!」
時刻は午後3時。
昼下がりにもかかわらず、町は年末の準備をする人々の活気であふれている。
その活気に背中を押されるように、極導と冬輝は別々の方角へ自転車を漕ぎだすのだった。
(寿司と魔廻りと・完)
これからもゴクハナの新作エピソードは投稿していく予定です。
今夜22時から、NHK総合で【スペシャル時代劇】銭形平次が放送されます。楽しみ!
【8月22日追記】
8月22日にゴクハナの累計PVが6000を達成しました。
読者の皆さま、毎度のことながら、ゴクハナをご愛読いただきありがとうございます!
これからも犬山おはぎは執筆活動に精進いたしますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。




