【79話】血の呪縛 2
12月13日、金曜日。
学校がおわると、御手洗極導は、いそいで町に繰り出した。
行方不明のおたまと富丸を捜すためである。
ふたりを最後に見たのは熟練魔廻りの吉田天晴。
きのうの夕方、手先の妖怪と巡回をしているときに、富丸と人のすがたをしたおたまがスーパー・トクヤスへ入るところを目撃していたのだ。
「ちょうどカレー粉を切らしていて、わたしがたまちゃんと富ちゃんに買ってくるように頼んだんです」
そう語るのは、目を真っ赤に腫らした化け猫女中のおみけ。おたまとは親友であり、同族でもある。
ふたりの捜索が開始されたのは、きのうの午後8時だった。
あまりにも帰りが遅く、電話をかけても、おたまが取らないことから女中頭のましろが総導に相談。
彼の命により、十数名の魔廻りと手先があらゆる場所を捜したが、ふたりを見つけることはできなかった。
捜索に参加した魔廻りのなかには、
「もしや、かどわかしでは……」
誘拐を疑う者もいたが、身代金を要求する電話はおろか脅迫状すら屋敷には届いていない。
(カネが目的じゃないとすると、下手人はなんのためにふたりを誘拐したんだ?)
そんな疑問を胸に、極導は夕方の町を自転車で駆けまわるのだった。
* * * * *
そうして2時間が経過した。
時刻は午後6時50分。
普段から鍛えている極導でも、休みなしで2時間も東京の町をめぐるのはさすがに疲れる。
のども渇いているので、極導は自転車をとめ、自販機で飲み物を買うことにした。
(時間も時間だし、一度、屋敷にもどるか)
少し休んだあと、今度は花子といっしょに捜索してみよう。
そう決心したときだった。
「御手洗極導」
いきなり背後から声をかけられた。
振りむくと、3メートル先に背の高い男が立っていた。
歳は18ぐらいだろうか。涼しげな目元が特徴的な美男子である。
「何か用ですか?」
用心しながら、たずねた。
こいつは只者じゃない――そう魔廻りの勘が告げている。
「おたまと富丸は、おれが預かっている」
「なんだと?」
とっさに極導は自分の影で黒影刀をつくろうとした。
だが、まわりにはたくさんの人がいる。ここで妖術は使えない。
男は極導に背を向けると、
「ついてこい。すべてを話してやる」
それだけ言って、足早に歩きだした。
一瞬まよった。罠ではないのか?
(たとえ罠でも行くしかない)
極導は自転車を押しながら、男のあとを追うのだった。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。
化け猫は猫の妖怪で、人間に化けたり、手拭いを頭に被って猫おどりをする伝承などがあります。
また江戸時代には、遊女が夜中に化け猫に変化する「化猫遊女」というキャラクターが誕生。人気を博しました。




