【76話】空からの贈り物 4
「あと少しなのです」
ミサキがスマホで時間を確認する。
時刻は午後10時55分。
仮牢でミユキとミサキが聞いた「今夜11時、追株高校の運動場」という謎の予告まで、あと5分。
11時に何が起きるのかはわからない。
もしかしたら、また着ぐるみが落ちてくるかもしれないし、何も起きないかもしれない。
それでも4人は油断を殺して、冬の闇を見据えつづけた。
10時58分。予告まで、あと2分。
プレハブ小屋から出ると、極導は影で黒影刀をつくり、ミユキとミサキもルミナブレスを装着した。
10時59分。4人とも視線を別方向に向けることで、あらゆる変化に対応できるようにした。
そして11時。
ついに予告の時刻となった。
「落ちてこないわね」
空に変化はない。
変化はプレハブ小屋のなかから起こった。
ガチャッ。
内側からドアを開けたのは、からだに金色の模様が入った宇宙人だった。
「そんな! どうして小屋のなかに!?」
4人の目が宇宙人にあつまる。
つぎの瞬間、
ドサッ。
背後で音がした。
振りむくと、5メートル先にネズミに似た怪獣が横たわっている。
だが、それだけではない。
校舎や体育館の陰から、つぎつぎと着ぐるみがあらわれ、こちらに向かって歩いてきたのだ。
「こいつら、いつのまに――」
「霊力が感じられない。こいつらは怪異じゃないわ」
ミユキが言った。
玉兎のミミには霊力を感知する機能があるのだ。
着ぐるみは仮牢のものとちがい、四肢も胴体も、みっちりと膨らんでいる。なかに、だれかが入っているのだ。
着ぐるみが4人を取り囲む。
その数、ざっと60体。
あまりの多さに、おもわず極導も総毛が立った。
* * * * *
最初にしかけてきたのは、からだに金色の模様が入った宇宙人だった。
突進してくる宇宙人の着ぐるみに極導は、
「たあっ!!」
峰を返して、首に一撃。
斬り捨てではなく、気絶させた。
のちに「中身」に取り調べをおこなうためである。
これを皮切りに、本格的に着ぐるみと4人との闘争が勃発。
峰打ちと喧嘩キックで、つぎつぎと相手を地に伏せる極導。
得意の突っ張りと諸手突きで怪獣を突き飛ばす花子。
あっというまに20体をたおした。
「わたしたちも負けてられないわ。いくわよ、ミサキ」
「うゆ」
おたがいの手を握りあうと、
「「ルミナスタッチ!」」
ふたりは望月ミヅキに合体変身。
無敵のバニーガールとなって、着ぐるみ軍団を薙ぎたおしていった。
* * * * *
ミヅキとして活動できる時間は2分30秒。
そして着ぐるみ軍団は、のこり3体。
「満月の爆転球!」
ミヅキは体育座りの姿勢で回転しながら、相手に突撃。
技を受けた植物怪獣が吹き飛び、フェンスに激突した。
のこり2体も極導と花子が1体ずつたおして、着ぐるみ軍団は全滅。
約3分間のたたかいがおわった。
合体を解除すると、ミユキとミサキは近くの宇宙人に目を向けた。
さっきまで、たしかに存在していた筋肉の膨らみが消え、宇宙人は中身のない、ぺしゃんこの着ぐるみにもどっていた。
「ミユぴょん、ミサぴょん」
花子と極導がやってきた。
「見て。中身が消えてるわ」
「うん。わたしたちがたおしたのも、そうだった」
「中身が消えたのも不思議だけど、もうひとつ気になることがあるわ」
そう言って、ミユキは散乱する着ぐるみを見まわした。
「こいつら、本当にたたかう気があったのかしら」
「ミユキさんも、そう思いますか」
極導が訊いた。
「威嚇めいた動きはするけど、こいつらから殺気は感じられなかった。なんだか、やられるために、こちらに向かってくる感じがしたんです」
「わたしもそれは思った」
花子が言った。
「こんなにたくさんいるのに連携もなかったし」
「ま、中身が消えた以上、こいつらから真相を聞きだすのは――」
とつぜん、ミユキが言葉を切った。
「「えっ」」
ミユキとミサキが空を見あげる。
「なに、あれ……」
星のない暗い空には、巨大なふたつの目玉が浮かんでいた。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。
喧嘩キックは片膝を曲げたまま、もう片方の足を前に突き出し、相手を蹴るプロレスの技で、蝶野正洋選手の得意技でもあります。




