【65話】想う力 13
つぎの日の夜。
極導は屋敷の3階にある父の書斎にいた。
何かいやなことがあったり、考えごとをするとき、極導はきまってここを訪れ、露台から夜景をながめるのだ。
しばらく夜の町を見ていると、
「やっぱり、ここにいた」
ふりむくと、露台の入口に花子が立っていた。
「となり、いい?」
「ああ」
花子がとなりに来る。
「巡回のときも元気なかったから、気になって来てみたの。悩みごとなら相談に乗るよ」
「…………」
「無理に話す必要はないけどね」
「そういうわけじゃねえよ」
「なら言ってよ」
「ぜったい笑うなよ」
「約束する」
「じゃあ言うぞ。おまえ、この世界がつくりものだったら、どうする?」
花子は何も言わない。
けど、こちらを見る目は、
「つづけて」
そう語っていた。
「きのう、部屋にもどって、ひとりになったときに思ったんだ。デアが創造力でデア・ダンジョンをつくりあげたみたいに、この世界も、じつはだれかがつくりあげたものなんじゃないかって」
「そのままつづけて」
今度はちゃんと言葉にしてくれた。
「もし本当にこの世界がつくりもので、そこに住む人も怪異も、ぜんぶ、だれかの想像によって生みだされたものだとしたら、おれはいったいなんのために生きてるのかなって」
初恋の人。
大切なともだち。
かけがえのない家族と仲間。
その人たちを愛する気持ちも、守りたいと願う心も、自分の意志ではなく、だれかの想像によってあたえられたものだとしたら、いったい自分はなんのために心を持っているのだろうか。
「バカみたいって思うか?」
「思わない」
「ありがとな」
言い慣れた感謝の言葉である。
でも、この言葉は嘘のない、まっすぐな想い。
だれかにあたえられたものであってほしくない。
「もしミッチーの言うとおり、この世界がつくりものだとしても、わたしはこの世界に生まれてよかったと思ってるよ」
「どうして?」
「そんなの決まってる」
花子が極導の手を握る。
この世界に生まれてきたよろこび。
それを微笑に湛えて、花子は極導にこう告げた。
「あなたに出逢えたから」
(想う力・完)
『想う力』は今回が最終回になります。
ゴクハナのエピソードはこれからも投稿していきますが、これより犬山は「場所後休み」として、少しだけ休暇期間を設けたいと思います。
この休み期間中に温泉に浸かったり、おいしいものを食べたりして、想像力の回復に取り組む予定です。
犬山の近況や新作エピソードの投稿日などは活動報告【おはぎ日和】で報告するので、気になる方はチェックしてみてください。




