【61話】想う力 9
極導が現実世界へ帰還するのと同じころ。
ミユキとミサキは、すでにダンジョンの最深部である地下4階にいた。
「出てきなさい、デア。あなたが若いからだを手に入れてるのは知ってるのよ」
静まりかえった広間にミユキの声が反響する。
広間は西洋の城における玉座の間を彷彿させる豪奢なつくりで、奥の檀上には立派な玉座が置かれている。
おそらく、デアが座るためのものだろう。
「邪兎どもめ。そんなにこの場で死にたいのか」
玉座の横に黒い穴が開き、そこから頭にヤギの角を生やした女性があらわれた。パソコンババアのデアだ。
デアは紫色の長い髪をした妖艶な女性で、年齢は24といったところだろうか。どう見てもババアではない。
「信男にデザインしてもらった、すがたね」
「ああ。神にふさわしいすがたをあたえるように言ったのだ」
ヤギの角、竜のつばさ、大きな胸にふとももを露出した大胆な魔導着。
信男の趣味がふんだんに詰めこまれたデザインは神というより、痴女に片足を踏みこんだ女魔王である。
「デア。おまえをデリートするのです」
ミサキが言った。
「べつのパソコンに逃げようとしても無駄なのです。おまえが信男のパソコンから出られないように、ミサが錬想術で細工したのです」
だが錬想術ゆえ、その効果は1時間しか持たない。
さらにミサキがたおされれば、その時点で術の効果は切れる。
だから、この場で確実にデアをたおさなければいけないのだ。
「霊力だって、まだ半分も回復していない。おまえは、もうおわりなのです」
「その言葉、そっくりそのまま、おまえたちに返してやろう」
デアは双子に向けて、てのひらから球体を撃ちだした。『ドゥーム・ダンジョン』に登場する魔導弾だ。
「ミサキ!」
「うゆ!」
ふたりは飛び跳ねて、魔導弾を回避。
魔導弾は床に命中して爆発した。
「ミサキ、気をつけて。あれは破滅の魔導弾。当たれば即死よ」
「うゆ。気をつけるのです」
「ところで、ミサキ。準備はできてる?」
「もちろんなのです」
ふたたびデアが魔導弾を撃ちだす。
それを避けながら、ミユキはルミナブレスに自身の霊力を流しこんだ。
ルミナブレスについた宝石ーールミスタルが未来を照らすように七色に輝く。
見ると、ミサキのルミスタルも同じように輝いていた。
「ミサキ、いくわよ」
「うゆ」
三度はなたれた魔導弾を避けて、ふたりは横に並び立った。
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。
きょうは、このあと20時に『想う力 10』を投稿します。




