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【59話】想う力 7


 少し時間をさかのぼって、ふゆたちがロカ・ヒガンテと戦っているころ。




 広間の奥にある扉を開け、通路に足を踏み入れたとたん、極導きわみちはべつの広間に移動していた。


 その広間だが――。


「なんだよ、これ……」


 120畳ほどの広い部屋の壁には、たくさんのポスターが貼られている。


 ポスターに写っているのは、すべてギャル。


 茶髪、金髪、オレンジにピンク。


 ベースボールキャップを被ったスポーティーギャルから、ガーリーファッションの清楚系ギャルまで、ありとあらゆるギャルのポスターが壁を埋め尽くしているのだ。


「すごーい。ギャル広間だ」


 そばにいたはなが部屋中を見まわした。


 そのうしろにはミユキとミサキもいる。


「あ、来た来た~」


 とつぜん、広間の中央に黒い穴が開き、そこから頭にオオカミのミミを生やした、ミニスカギャルがあらわれた。


「ワオ~ンと登場! 人狼ルー・ガルーあらためギャル狼(ルー・ギャルー)のフルルでーす☆」


 フルルが4人にギャルピースを送る。


 それを見た極導は、


「ミユキさん」


「なに?」


「もしかして、あのギャルって――」


「ええ。唄河うたがわひろのたましいから生まれた電子怪異よ。たましいに刻まれたギャルへの愛が、キャラのヴィジュアルどころか、広間にまで影響をおよぼしたのね」


「どれだけギャルが好きなんだよ……」


 ためいきまじりに、髪を掻きあげた。


「ちなみにひろのマンガだけど――」


「あ、説明はいいです。内容は知ってますから」




 広志が投稿しているのは『極道ごくどうと花子さん(ギャル)』。


 女子高生ギャルのトイレの花子さんとヤクザの跡継ぎがりなすラブコメディで、


「もしトイレの花子さんがギャルだったらどうする?」


 という極導の発言から誕生した作品である。




「えっと、みんなはデアさまのところへ行きたいんだよね?」


 フルルがたずねた。


「そうよ。1秒だって無駄にしたくないから、おとなしく、そこを通しなさい。そしたら、苦しまないように一瞬でデリートしてあげるわ」


 ミユキがフルルをにらみつける。


「デリートはごめんだけど、ウサちゃんズとイケメンくんは通してあげる。でも、エロギャルちゃんはダメ」


 フルルがシルバーのアクリルネイルを花子に向けた。


「わたし、ギャルがだーい好きでね。たくさんのギャルに囲まれて暮らすことが夢なの」


 それは広志の夢でもあるのだろう。


「エロギャルちゃん、すっごくわたしの好みだからさ。ここで、からだも心もズタボロに痛めつけて、わたしにゼッタイフクジューを誓わせてあげる」


 興奮を味わうように、フルルがアクリルネイルを舐めた。


「花子、こいつは危険だ」


 極導はライトの灯りで白明刀はくめいとうをつくった。


「こいつの相手はおれがする。おまえはミユキさんたちと――」


「ミッチー、ここはわたしにまかせて」


 花子が前に出る。


「ギャル好きのたましいは、ギャルが救ってあげなくちゃ」


「おまえ……」


「だいじょうぶ。ギャルの未来を守るためにも、わたしはぜったいに勝つよ」


 こちらをふりむいて、花子がほほえむ。


 その笑顔と言葉を信じて、極導は白明刀はくめいとうを消した。


「花子、今度、いっしょにアニマルジェラートを食いにいくぞ」


「うん」


「カネはおれが出す。好きなだけ食え」


「ごっちゃんです」


「ミユキさん、ミサキさん、先に進みましょう」


 フルルが奇襲をかけるようすはない。


 それでも3人は警戒しながら、広間の奥へ向かった。


「デアさまには勝てないだろうけど、せいぜい、がんばってね」


 フルルが3人に手を振った。


 扉を開け、通路に一歩踏みだす。


 その瞬間、まわりの景色が変わり、極導はべつの広間に移動していた。



 *   *   *   *   *



「さっ、それじゃ、はじめよっか」


 フルルはその場で小さく跳ねると、


「せんてひっしょー♪」


 自慢の速さで花子に飛びかかった。


「ズタズタのボロボロにしちゃうんだから」


 鈍く光る銀の爪。


 すべてを切り裂く破壊の爪。


 これからたくさんのギャルを傷つけ、そしてあいする爪。


 それをフルルは花子に振るった。


「安心して。いじめたぶんだけ、あとでかわいがってあげるから」


 爪の一撃を受け、花子が悲鳴をあげる――はずだった。


「えっ?」


 動かない。


 腕が動かない。


 つかまれていて動けない。


 フルルの手首をつかむ花子の手。


 その力が強すぎて、腕を動かすことができないのだ。


「うそ……そんな……」


「先手を取るのは大事。でもね、相撲にはせんって言葉もあるんだよ」


 花子の力がさらに強まる。


 フルルはデータのかたまり。


 だが、データのからだにも痛覚はある。


 手首の内側にあふれる痛み。


 それが電子の心に恐怖を生んだ。




 フルルは叫んだ。恐怖に吠えた。


 痛い。怖い。こいつのそばから離れたい。


 だって、こいつは……。


(強すぎる!)


 フルルは空いているほうの腕を花子に振るった。


 手を放し、かがんで攻撃を避ける花子。


 そして、


「どすこーい!」


 渾身のもろきがフルルの腹部に炸裂。


「壊れる」感覚を味わう間もなく、フルルのからだは光の粒子になり、ルミナブレスに吸いこまれた。



(つづく)



更新は毎日おこなう予定です。


ルー・ガルーは人狼ウェアウルフのフランスでの呼び方です。


ルー・ガルーはオオカミが呪術や自分の意思により、人間のすがたになったものをさすこともあります。




※熱海富士関、勝ち越しおめでとうございます!




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