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【58話】想う力 6

 

 極導きわみちたちが降り立ったのは壁も天井も岩でできた広間だった。


「ここはデア・ダンジョンの地下1階なのです」


 ミサキがみんなに説明する。


 広間の大きさはだいたい500畳。


 床から天井までの距離は15メートルといったところだろうか。


 地下室なのに、広さも高さも体育館並みだ。


「デアがつくったのは広間だけ。扉をくぐると自動的につぎの広間に移動する仕組みになっているのです」


 その扉は広間の奥にある。


「デアがいるのはダンジョンの最深部である地下4階。ミサたちはそこへ向かうので、みなさんは各階層にいる電子怪異を――」


 そのとき、


「カブローン!」


 腹の底に響くのは岩を打ち鳴らすような重くて低い声だった。


「デアさまにたてつく馬鹿者カブロンどもめ! きさまらはこのロカ・ヒガンテが始末する」


 つぎの瞬間、岩の壁に巨大な穴が出現。


 そこから飛びだした無数の岩石が組み合わさり、巨大な人間のからだを形成した。


「ロカァァ・ヒガンテェェ!」」


 最後に穴から飛びだしたのは、プロレスのマスクをつけた人面岩じんめんいわ

 それが岩石のボディと合体して、8メートルもあるマスクゴーレムが誕生した。


「なんだよ、こいつ」


「こいつはロカ・ヒガンテ。のぶの作品に登場するゴーレムをもとに、デアがつくったのです」


 まどう極導にミサキが説明する。


「マスクをつけているのは綿鍋わたなべらんの影響なのです」


「どういうことです?」


「やつはらんのたましいの生命データからつくられた電子怪異。彼女が投稿していたのは昼は保育士、夜はインディー団体の悪役マスクレスラーとして働く青年を主人公とした『ダブルフェイス』という作品。マンガのアイデアがデータとして反映された結果、マスクをつけたゴーレムが生まれたのです」




 そのとき、ロカ・ヒガンテが6人を蹴り飛ばそうとした。


「あぶない!」


 岩の足を左右へ跳んで回避。そのまま二手にわかれた。


「ここは任せてください」


 ふゆがさけんだ。


「香蘭さんのたましいはぼくとはくさんが救います。兄さんたちはつぎの階層へ行ってください」


 冬輝が広間の奥の扉を指さす。


「作戦時間は10分しかありません。早く!」


「わかった。みんな、ここは冬輝と煌白さんに任せよう」


 極導たちは扉に向かって走った。


「逃がすものか」


 ロカ・ヒガンテが4人めがけて腕を振りあげた。



 *  *  *  *  *



はくさん!」


「はい!」


 煌白は両手を突きだし、雪をあやつる能力でボウリング球ほどもある雪玉を生成。発射した雪玉はロカ・ヒガンテの顔に命中した。


「ガッデーム」


 マスクを押さえながら、岩の巨人が後退する。


「煌白さん、やつの動きをとめてください」


「はい」


 煌白は吹雪ふぶきを発生させ、雪と冷気でロカ・ヒガンテの動きをとめた。


「そっちがゴーレムなら、こっちは雪だるまだ」


 積もった雪が一か所にあつまり、巨大な筋肉雪だるまを形成する。


 冬輝が得意とする錬氷術れんひょうじゅつは氷だけでなく、雪のかたちを変えることもできるのだ。




 8メートルの雪だるまがロカ・ヒガンテに組みかかる。


 相手を丸めるようにおさえこむと、雪だるまは、そのまま高々とロカ・ヒガンテを抱えあげた。


「やれ、エル・ブリザード」


 冬輝の指示で雪だるま(エル・ブリザード)がロカ・ヒガンテの背中を地面にたたきつける。


 その衝撃で岩のからだが崩壊。


 崩れた岩石は光の粒子になり、冬輝のルミナブレスに吸いこまれていった。



 *   *   *   *   *



 らわれた3人のたましいを救出する方法は電子怪異をたおして、彼らのたましいをドロップさせること。




 ロカ・ヒガンテをたおしたことにより、綿鍋わたなべらんのたましいは解放され、れいという光の粒子となって、ルミナブレスに収納されたのだ。


『たましいを収納しました』


 ルミナブレスのスピーカーからガイド音声が流れた。


「お見事です。ふゆさま」


 はくが冬輝のそばに来て笑った。


「すばらしいパワーボムでしたね」


以前まえに煌白さんと観た試合で、あの技がすごく印象にのこってたんです。だから、あいつに勝てたのは煌白さんのおかげです」


 冬輝に感謝されて、煌白がうれしそうに肩をすぼめる。


『綿鍋香蘭のたましいを収納しました。機胃マーゲンから脱出してください』


 あたらしい音声が流れる。


 SS作戦における自分たちの目的はデアをたおすことではなく、らわれたたましいを救出すること。


 だから、あとはこの広間から脱出すれば任務完了だ。


 けど……。


機胃マーゲンから脱出してください』


 同じセリフを繰り返すルミナブレスを冬輝を見つめた。


(ほんとに、ぼくたちだけが現実世界にもどってもいいのかな)


 作戦時間はのこり8分。


 2体の電子怪異とデアをたおすには、少しでも戦力があったほうがいいのではないか?


「冬輝さま、脱出しましょう」


 煌白が冬輝の手を握った。


 つめたい。けど心地よい。


 そう感じるのは錬氷術れんひょうじゅつを使ったことで、熱が出はじめているからだろう。


らんさまのたましいは救出しました。わたしたちは現実世界へもどりましょう」


「でも――」


「冬輝さまの気持ちはわかります。ですが魔廻まわりとして、いま、あなたがしなければいけないことは、これ以上たたかうことではありません。救出したたましいを現実世界へ帰還させることです」


「…………」


「それに、これ以上は冬輝さまのからだが危険です」


 たしかにこれ以上熱が出れば、戦闘どころではない。


 手助けどころか、足手まといになって、みんなに迷惑をかけてしまうだろう。


「わかりました。煌白さん、いっしょに現実世界にもどりましょう」


「はい」


 現実世界への帰還方法は打ち合わせのときに教えてもらっている。 


 ルミナブレスの側面のボタンを押しながら、帰還するむねをつたえればいいのだ。


「冬輝、煌白、現実世界に帰還します」


『了解しました。凍連いむらじ冬輝、煌白の2名を機胃マーゲンより脱出させます』


 その直後に、頭の上に金色の穴が出現。


 ふたりのからだは光の粒子になり、穴のなかへ吸いこまれていった。



(つづく)



更新は毎日おこなう予定です。


ゴーレムはヘブライ語で胎児や未完成の物体を意味する言葉です。


ゴーレムはチェコで非常に人気があり、ゴーレムの名を冠したレストランや企業などもあるそうです。 




【お詫びと訂正】

『想う力 5』にて、「らわれた」という表現に、誤って「とららわれた」とルビをふっていたことをお詫びします。


現在、「とららわれた」表記は、すべて「らわれた」に訂正しています。


読者の皆さまに不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。


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