表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/72

【57話】想う力 5


 「準備が整ったのです」


 パソコンに向かっていたミサキがこちらを振り返った。


「デアは機胃マーゲンないにつくったデア・ダンジョンにいるのです。ちなみに、これはのぶの『ドゥーム・ダンジョン』というマンガに出てくる地下ダンジョンを参考にして、デアが創造したものなのです」


「それじゃあ、みんな。デア・ダンジョンに突入するわよ」


 突入するのはミユキ、ミサキ、極導きわみちはなふゆはくの6人。


 ミユキは錬想術れんそうじゅつでルミナブレスをつくり、それを極導たちにわたした。


以前まえみたときも思ったけど、なんか、このブレスレットって、ヒーローの変身アイテムみたいですよね」


 極導が言った。


 ちなみに右利きの極導や花子は利き手とは逆の左腕にルミナブレスを装着しているが、左利きのミサキだけは右腕に装着している。


「ご明察(めいさつ)。ルミナブレスは、わたしたちの好きなヒーローの変身アイテムを参考にしながら、ミサキとふたりでデザインや機能を考えたものなの」


 ミユキが誇らしげに語った。


「ミサキ、お奉行にあれを」


「うゆ」


 ミサキは錬想術れんそうじゅつで真紅のブレスレットをつくり、くらりにわたした。


「これはトランルミッター。打ち合わせのときに説明したとおり、機胃マーゲンにいるミサたちにお奉行の霊力をわけあたえるアイテムなのです」


「うむ。しかと受け取った」


 くらりがトランルミッターを腕に着ける。


「確認の意味をこめて、もう一度みんなに説明するわね。ルミナブレスの力をもってしても、わたしたちが機胃マーゲンにいられるのは5分が限界」


「だから、おれの霊力を活動エネルギーとやらに変えて、6人にわけあたえるのだな」


 くらりが言った。


「ええ。けど、それでもいられるのは10分が限界。この10分で極導たちは電子怪異をたおして、らわれたたましいを救出。わたしとミサキでデアをたおすわ」


 双子はおたがいの顔を見て、うなずきあった。


「さっきパソコンに細工するときにデア・ダンジョンの情報を仕入れたのです。デア・ダンジョンには、それぞれの階層にボスとよばれる魔物が存在するのですが、そいつらがたましいの生命データからつくられた電子怪異なのです」


 そこでミサキは一同の顔を見まわした。


「こちらにとって都合がいいのは、信男がダンジョンの内部構造をきちんと考えてなかったことなのです」


「どういうことですか?」


 冬輝がたずねた。


「デアはあらゆるものを生成する『創造力(クレアーレ)』という能力をもっているのです。これはミサたちの錬想術れんそうじゅつの上位互換ともいえる能力なのです」


 ミサキが説明する。


 ちなみに彼女の年齢は22。


 中学1年生の冬輝より10歳も年上だが、見た目が11歳ぐらいなので、同年代の子と会話しているように見える。


創造力(クレアーレ)はすばらしさと恐ろしさをあわせもった能力。でも錬想術れんそうじゅつ同様、つくりたいものをイメージしないと発動できない。デアは、このイメージする力が圧倒的に欠如しているのです」


「思いこみ力100、想像力1のデアじゃ、自分でダンジョンの内部構造を考えられないってわけ」


 人さし指を動かして、ミユキが空中に迷路を描いた。


「だからデアはダンジョンの各階層を単なる広間としてつくり、そこに電子怪異を配置したのです」




 大好きなヒーローの変身アイテムを参考にしつつ、独自のアイデアを加えてルミナブレスを完成させた双子と、信男のアイデアに頼りきりで、自分ではダンジョンの構造を考えられないデア。両者のちがいはここにあるのだろう。




「ミサキさま、電子怪異の種族はわかりますか?」


 煌白がたずねる。


「デアが生成した電子怪異はゴーレム、人狼ルー・ガルー、デュラハンの3体。どれも信男のマンガに登場する魔物なのです」


「わたしたちは、この3体をたおして、らわれたたましいを救出すればよいのですね」


「うゆ。解放されたたましいは自動的にルミナブレスに収納されるのです。煌白さん、そして、みなさん。打ち合わせのときにも言いましたが、たましいを救出したら――」


「すぐに機胃マーゲンから脱出する」


 煌白がこたえた。


「うゆ。デアは現実世界の侵略をたくらんでいる危険な怪異。ミサたちの親分からもデリート許可がおりているのです。でも、この作戦で重要なのはデアのデリートではなく、らわれたたましいの救出なのです」


 ミサキの言葉に迷いはなかった。


「だからミサたちのことは心配しないで、みなさんには先に脱出してもらいたいのです」


「デアはわたしたちの世界の怪異。わたしたちでデリートするわ」


 ミサキ同様、ミユキの言葉にも迷いはなかった。



 *  *  *  *  *



 午後8時。


 ついにSS作戦決行の時間となった。


「それじゃあ、行くわよ」


 ミユキがルミナブレスの中央につい( ル)宝石(ミスタル)をパソコン画面に向ける。


「ルミナスパーク!」


 その声に呼応するようにパソコンの画面が光り、6人のからだが金色の輝きに包まれた。


「頼んだぞ、雪月せつげつたい


 くらりが言った。


 その直後に6人のからだは光の粒子になって、パソコン画面に吸いこまれた。


雪月せつげつとはよく言いましたな」


 黒峰くろみねが感心してみせる。


ゆきおんなぎょく、トイレのはなさんで雪月花ですか」


「ああ。雪月花は自然の美しさをあらわす慣用句。若くてきれいなあやつらにピッタリであろう」


「それは……まぁ……はい」


 妙に歯切れの悪い返事である。


「あの、くらりさま」


「なんだ?」


「これは以前まえにわたしの友人が言っていたのですが」


 黒峰はうつむきながら、握ったこぶしを脚の付け根に当てていた。


「友人いわく、花子さまや煌白さまはたしかに若くてきれいな女性ですが……」


 そこで黒峰は声を震わせながら、


「い、いちばん美しいのは、やはり、く、く、くらりさまだと」


「…………」


「さ、再度申しますが、これは友人の言葉であって、わたしの――」


「わかっている。その友人とやらも、おまえと同じで阿呆あほのようだな」


「そ、そうでございますな」


「クロ、そやつにつたえておけ。お奉行、いや、くらりがよろこんでいたと」


「はっ!」


 いまにも羽ばたきそうなほど元気な返事である。


(嘘の下手へた阿呆あほがらすめ)


 くらりはパソコンのほうへ向き直った。


 こみあげてくるうれしさが大きすぎて、ほほが緩むのをおさえられなかったのだ。



(つづく)



更新は毎日おこなう予定です。




見ていましたとも。


幼少期にリアルタイムで見ていましたとも。


人の心を救うために戦った夢のヒーローのかつやくを。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ