11話:致命的な欠陥
超戦士と魔導師。
戦士と魔術師の上位階級であるそれらは、国からその全ての個人の情報が保護されるほどに重宝されている。能力の内容や住所、親族、その他普段の私生活など、本人が望まぬ限り誰であってもそれらを追求、広報することが出来ない。この世界でも週刊誌や新聞、掲示板のようなものがあるが、それらにも載せることが出来ないらしい。
そしてそれほどまでに国から重宝される実力を持つライアン様が、今まさに俺と剣を交えている。
「――うん?」
「――はっ、はぁ、はぁ……な、何か……?」
先ずは主として使う大剣から、ということで、俺はライアン様に今の実力を見て貰うべく模擬戦を行った。しかし、今の模擬戦は俺にとって初めての経験だ。
一番最初の模擬戦は、父さんとの超ハンデ戦だ。父さんの体に一回当てればいいと言うだけの試合で、俺は若干卑怯な手を使って勝った。そして次は、カルロスさんとの対戦。あれもカルロスさんは俺にはほぼ攻撃を仕掛けず、俺の戦い方を見ていたに過ぎない。
しかし、ライアン様は違う。この模擬戦では、俺もライアン様も自分の大剣を使い、お互いに攻撃を仕掛ける。勿論、ライアン様も手加減をしてくれていることに違いはないが。
そんな模擬戦の途中で、ライアン様は首を傾げて攻撃を止めた。
「父上は君が思い悩んでいるだろうから、と言ったのだけれど、君は思い悩むほど実力が無いのかい……?」
「――?」
「確かに、父上やカルロスさんが相手なら実力不足なのは間違いないが、あの人たちは別格。年齢や環境を考えれば、アルフェイル君の実力は並外れたものだと思うんだけど……」
そう言って、ライアン様は顎に手を乗せながら考え込むように俯く。
それでも、それは俺も知っている。ライアン様の言う通り、同年代ではそうそう負けない強さを手に入れていると俺も思っている。しかし、それでは駄目なのだ。父さんとの約束のためにも、ルーカス様を守るためにも、俺はもっと強くならなければならない。
「もしも君が今の実力で満足していないなら、戦い方を変えた方がいいと思うな」
「戦い方、ですか?」
「うん。まぁ先ずは、オーダンとの魔法戦もやった方がいいよ。僕は今ので分かったから」
分かった、と言うのは俺の大剣の扱いについてか。そして次は、魔術師との魔法戦。ライアン様の考えはよく分からないけど、知識や実力は確実に俺よりも上。ここは一旦、ライアン様とオーダンさんに任せた方が吉だろう。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします。さぁ、アルフェイル様からどうぞ。勿論、そのスライム殿もご一緒にね」
お互いに挨拶を交わすと、オーダンさんは俺の後ろにいたスライムに向けて手を伸べた。
オーダンさん……確かに只者ならぬ雰囲気があったけど、まさか俺たちの戦い方をも見抜いていたのか? それともルーカス様から聞いただけか?
まぁ、それでもこの人が常人ではないことに変わりはない。
「分かりました。では、最初から本気で――!」
そうして、俺のフレイムを初弾に、オーダンさんとの魔法戦が始まる。
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俺の放った初弾から、俺とオーダンさんの魔法の撃ち合いが開始。それから数分間が過ぎると、俺は突然目眩に襲われた。
「――くっ、またか……」
視界が歪み、頭を揺さぶられているかのようにクラクラとする。そんな体調の不良に頭を抱え、俺はその場に片膝を突いた。
この感覚……オークを倒して気絶する直前の時と似てる。やっぱり魔法は扱えないのか……?
「魔力の過剰使用による魔力の枯渇……ですか。しかし、それにしては些か消耗が早過ぎますね。失礼ですが、魔法は何処で誰から教わりまたか?」
やっぱ魔力の使い過ぎか……
――それにしても、オーダンさんのあの目。疑問に満ちたあの表情は何だ? 俺の魔力が少なすぎる? 魔法の威力が低すぎる? 俺の魔法の何に疑問を抱いているんだ……?
「魔法は、あまり人からは教えて貰っていません。うちの村はこの国の本当に辺境の方にあって、魔法が使える人がほとんど居なかったんです。唯一父が火炎適性を持っていたので火魔法は勉強しましたが、それでも大半は剣を習っていたので。後は雨の日や夜に本を読んだりして、大体は独学で覚えました」
それに、父さんの火炎適性も中級だ。他に長剣操作の上級を持っていた父さんからは、やはり剣の扱いを教えて貰った。
だから、魔法に関しては殆ど訓練が出来ていないのだ。
「なるほど、そうでしたか。それでは、今日は私が一から魔法をお教えしましょう」
「え! いいんですか? あ、でもライアン様は……」
「ああ、私はこれから執務があるから気にしなくていいよ。その分明日はオーダンが外に出るし、剣は明日にしよう」
そっか、お互いに今日と明日の用事はズレてたんだな。それならどっちかを待たせることも無いし、今日明日はじっくり勉強が出来そうだ。
「それじゃ、後は頑張ってね!」
「あ、はい! ライアン様もお仕事頑張って下さい!」
そう言って、俺は屋敷の中に戻っていくライアン様に手を振った。
「それでは先ず最初にですが、今のアルフェイル様は魔力を正確にコントロール出来ていません。魔力を魔法に変換させる過程で魔力を大量に消費しすぎてしまっている為、十分な威力が出せない上に魔力消費が激しい。今のアルフェイル様の変換効率は、私と比べて凡そ百分の一。これは魔法での戦闘に関して致命的な欠陥です」
魔力の変換効率が、オーダンさんの百分の一? ってことはつまり、簡単に数値化するとオーダンさんが魔力消費1で撃てる魔法を、俺は100使って撃ってるのか?
それで同じ時間魔法を撃ち続けて……そりゃ俺が先にダウンするに決まってるだろ。てか、本当に百分の一? これがもしも誇張なしなら、俺はどんだけ魔力を無駄にして戦ってきたんだ……?
「ですが、あそこまで魔力を余分に消費して数分耐えられるのですからね。魔導師ほどとは言いませんが、平均的に見れば魔力はかなり高い方だと思われますよ」
魔導師ほどじゃないってことは、間接的にオーダンさんよりかは魔力少ないって言ってるよな。まぁそれもそうか。ただでさえ努力し続ければ強くなれるのに、その上魔力まで多かったらチート過ぎる。
「因みに、今の俺だとどれくらいの魔法が撃てますか?」
「今の魔力の消費量では、ブレイズを一回完璧に放つのも難しいかと。聞き返す形になりますが、オーク戦では最後になんの魔法を?」
「――ブレイズ、です……」
なんで俺が撃って失敗した魔法で例えてくるんだ!? これ絶対に分かってて訊かなかったか!? ルーカス様から聞いたりしてただろ!
「あ、ああ……そ、そうでしたか。まぁ、それではそうなりますよね。と言うか、オークならブレイズを使わなくても良かったのでは……?」
「魔法の実践が少ないから、威力が分からなくて……なので、知ってる限りで一番強そうな魔法を……」
「なるほど、そうでしたか。一応ブレイズは上級魔法ですし、それを魔力変換が上手く出来ない人が使えば魔力の枯渇状態にもなりますね」
「はい……」
意外と手厳しいオーダンさんの物言いに、俺は自分の未熟さから来る羞恥心で顔を上げられなくなってなった。
もう今回のこればかりは、俺の知識と実力不足だ。言い訳など、何一つとして出来ない。
「それでは、今日はもう魔力も相当使ってしまったので、魔法と魔力に関しての勉強と、それから魔力のコントロールの実践にしましょう。午前はこれからアルフェイル様のお部屋に移動して座学、午後は昼食を摂って魔力が少しでも回復してから実践。よろしいですかな?」
「はい、それでお願いします」
魔法に関して、俺の知識は余りにも乏しすぎる。知識が無い時点で座学は必要だし、今の俺の魔力量では何かあった時にまた気絶する。
今日一日のスケジュールは、全てオーダンさんに一任させてもらおう。




