017...群れの拡張
ウサギは小さかった。
二人で食べても、腹八分にもならない。
でも。
昨日とは違った。
“獲った”。
その感覚があった。
火を起こす。
ミナが枝を集める。
俺が火打石を叩く。
役割ができていた。
パチッ。
小さな火。
ミナの顔が少し緩む。
……分かる。
火があるだけで、生き残れる気がする。
【《旧石器》適応率 47%】
【“群れの火を見ると安心する”を獲得】
「完全に文明前夜なんよな……」
俺が呟くと、ミナが首を傾げた。
「文明?」
「いや、なんでもない」
危ない。
この世界にそんな言葉ない。
肉を焼く。
ジュゥ……
匂いが広がる。
二人とも無言になる。
腹が減りすぎてる。
「……食うか」
「うん」
夢中で食べる。
熱い。
でも美味い。
その時。
ミナが急に止まった。
「?」
「音」
俺も耳を澄ます。
……ガサッ。
近い。
二人同時に石を掴んだ。
茂みが揺れる。
心臓が跳ねる。
ブラックウルフだったら終わり。
数秒後。
出てきたのは。
「……人?」
男だった。
ボロボロ。
痩せてる。
片腕に怪我。
そして。
俺たちの火を見た瞬間、崩れ落ちた。
「水……」
掠れた声。
ミナが俺を見る。
俺も固まる。
……増えるのか?
いや待て。
食料少ない。
火も小さい。
でも。
放置したら死ぬ。
男は震えながら言った。
「頼む……追われてる……」
その瞬間。
【《旧石器》適応率 50%】
【“群れを増やすか迷う”を理解】
「なんだその生々しい進化!!」
だが。
めちゃくちゃ分かる。
一人より二人。
二人より三人。
生存率は上がる。
でも。
食料は減る。
それが“群れ”だった。
男は火を見つめていた。
飢えた目。
死にかけの目。
……少し前の俺みたいだった。




