21話 みぃちゃんと山ガール
長い間を空けてしまいましたが、やっと新しい話ができました。話が思い浮かばない間、いままで書きためていた詩やハム神様の話を投稿していましたが、みぃちゃんの話もこれからは書きためていない新作です。
いままでのはほとんど数年前に原稿用紙に手書きしていたので、ぐんぐん投稿できたのです。これからもできるだけ投稿できたらと思っています。
なお、念のため、現実の事象とは関係ないのです。
みぃちゃんから電話で、今からあんたの家に遊びに行くから、と連絡があった。失礼な言い方だ。だいたい、ひきこもりのくせに人ん家に遊びに来るなんて、ひきこもりの風上にも置けないよ。
そういうのも、かわいいみぃちゃんだから許されるわけで。他の人や男性のひきこもりさんだったらとっても差別されて、きちんとひきこもりなさい!って怒られちゃうよね。かわいそうだね。
その日、僕は学校を休んでみぃちゃんを待っていた。それというのも、昨日みんなが何故か、「明日から学校には行かなくていいから」と言うのだ。唐突にね。みんなというのは担任の先生とか校長先生とかお母さんとかで、TVの人とかもそうなんだけど。どうして学校に行かなくていいのかな。よく分からないんだ。これじゃみんながみぃちゃんみたい。そうなると、みぃちゃんが僕だけの特別な中学生じゃなくなってしまうみたいで残念だ。
「ピンポーン」
あっ、みぃちゃんが来た。
「ヤッホー、ハル君、げんきー、ハロー。コンビニでチョコアイス買ってきたよー。一緒に食べよー。」
そう言うと、アイスの袋を二つ持った異様なテンションのみぃちゃんはどかどかと二階に上がって行った。僕の返事も待たずに、そそくさと居間にいる僕の父に挨拶して僕の部屋に上がって行ったのだ。
「おい、ハル、今日のみぃちゃんはどうしたんだ。元気いっぱいじゃないか。」
父がそう聞いてくるけど、僕にだってわからない。
「うん、そうみたいだね。」
僕は気に止めないふうに言って、二階に上がった。それにしても、あれかな、みぃちゃんは偽物のひきこもりなのかな。
「山ガールが流行ってたんだって。」
勝手に冷蔵庫から取ってきたらしいコーラを飲みながら、みぃちゃんは言う。さすがみぃちゃんだな、流行が微妙に古い。
「そういえば、女の人が山登りに行くのが流行ってたみたいだよ。山の上の城あととか神社とかを見に行くんだって。もしかして、行きたいの?」
「行きたい。山。」
ぐびぐびぐび、喉をならしてコーラを飲み干すと、「早速準備だよ。」と言って、みぃちゃんは僕のリュックサックにりんごやおにぎりやポテチを詰め始めた。みぃちゃんの突飛さにはもう慣れた。仕方ないので僕もお茶やコーラをも一つのリュックサックに詰める。
「山に行くのはいいんだけど、最近学校とか会社とかみんな休んでるみたいなんだよ。みんながみぃちゃんみたいにひきこもりみたいになってるらしいよ。」
僕はリュックサックに小型の双眼鏡を入れる。
「はっ!みんなが私みたいにひきこもりになって、何が悪いの。むしろ光栄に思ってほしいわね。」
みぃちゃんは少しムッとして答えて、トランプをリュックサックに入れた。ポーカーをするのかな、山で。
「別に悪くないんだけどね。でも、みんなどうして会社にも学校にも行かなくなったのかな。みぃちゃんはなにか知ってるの?」
そう言いながら、僕はみかんとタオルとレジャーシートをリュックサックに入れて、山に行く準備を続けた。
少しして、みぃちゃんが言うのだ。
「なんか、発電所と水素プラントが連動して爆発したとかで、外に出ると健康に悪いらしいよ。宇宙線?みたいなのが充満してるとか。だから、みんな家にいるんだよ。」
両手を斜めに上下させて宇宙線の流れを表現しながらみぃちゃんはなんだか嬉しそうに話す。
「そ、そんな!大変じゃん。みぃちゃん。山に行ってる場合じゃないよ。大体、ここまで来る間も危なかったんじゃないの。」
僕はもうびっくりして、慌てた。よく分からないけど、心にもないみぃちゃんへの心配を口にした。いや、心から心配した。
「えっ、大丈夫だよ。どうせ、ひきこもり人生だし。気にしないよ。それにね、こういう時だから、山に行くんだよ。だって、一人占めだよ。山を。そう、山も川も森も全部、私のものなのだ!ギャハハ。」
そう言って高らかに笑うみぃちゃんを見ながら、僕はみぃちゃんはひきこもってたほうが良かったんだと思うのだった。




