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みぃちゃんと僕  作者: みどりちゃん
第一章 みぃちゃんとぼく
22/41

22話 みぃちゃん、山登りに出発

 人体に有害な宇宙線が世界全土を汚染した翌日、僕とみぃちゃんは自転車に乗って、僕の家から10kmほど先の県境の小さな山の麓まで来ていた。

 あの事故のあと、なぜ宇宙線が世界をおおったのか。TVでは専門家がしきりに「分からない、分からない。」と繰り返し、ニュースキャスターもアイドルも、それぞれ不安を口にした。

 深夜の特別報道ニュースで続報があった。H大学の准教授によると、本来なら大気圏外に降り注いでいるはずの宇宙線が、地球の地下深くから発生し、大気圏内部で反射を繰り返し充満し始めたのだろうとのことだった。

 そして、今日も専門家や大統領が首をひねりながらも、世界の人々に宇宙線からの屋内待避を訴えかけている。

 

 それなのに、ああそれなのに、みぃちゃんときたら、「汚染ってなーに?」とのんきに話すのだ。みぃちゃんは完全に天然なのだ。長女だから仕方がない。長女は大体ぶっ飛んだところがかわいいのだ。僕の前の人生で出会った長女もおおよそそうだったし。

 そんなわけで、みぃちゃんはアホの子だから、目に見えない大気の汚染の危険性に一向に気がつかない。いや、アホっていっても、愛のあるアホだからね。僕は好きなんだからね。みぃちゃんが。

 それもそのはず、そんなみぃちゃんをかわいいと思ってしまう愚かな小学生な僕なので、こうやってみぃちゃんと一緒に山まで来てしまったのだった。とほほほほ。


 「やあ、いい天気ね、山登り日和だわ。さあさあ、はりきって行きまっしょい。」

 行きまっしょい、って。かわいいな。でも、本当に楽しそうだなあ、みぃちゃん。

 事故の後、世界中がひきこもっているのに、ひきこもりのみぃちゃんだけが元気いっぱいに山登りなんて。本当、人生っておもしろい。


 「そうだね、いい天気だね。でもさ、宇宙線は怖くないの、みぃちゃん。」

 ここまで来る間、何度も繰り返した質問を僕はもう一度言ってみた。

 「はっ?宇宙線、そんなもの気にしてちゃ、生きていけないって言ってんじゃん。ふふん。」

 みぃちゃんはそう言って高らかに笑って、登山口へと歩いていく。


 みぃちゃんは本当、どうしてひきこもっていたんだろうか。謎だ。宇宙線をも恐れないのに。学校がよっぽど嫌いだったんだな。

 僕はぐんぐん進んで行くみぃちゃんの後ろ姿を見ながら、中学校の教室で泣いているみぃちゃんを思い浮かべていたのだった。


 それから僕らは登山口からの階段を登って、山の木々の間を進んで行った。

 「ここも汚染されているなんて、とても信じられないわ。」

 みぃちゃんが振り返らずに言う。確かに匂いも空気もさわやかで清々しい。

 「そうだね、すっごく気持ちがいいね。だけど、みぃちゃんはもう少し宇宙線の怖さを信じた方がいいと思うよ。」

 「あっ、あんなところに洞窟があるよ。洞窟、洞窟。やったねー、RPGみたい。私が見つけたんだからみいこの洞窟と命名だよ。」

 僕の意見を放置して、みぃちゃんはみいこの洞窟っみいこの洞窟っと、なんだか卑猥にも聞こえる言葉を繰り返している。

 「洞窟って、こんなところにあったっけ。あっ、みぃちゃん、中、真っ暗じゃない。危ないよ、みぃちゃん。」

 「平気、平気、こんなのね、みいこにかかれば水溜まりよ。」

 そう言って、みぃちゃんは真っ暗な洞窟の中に入って行ってしまった。

 水溜まりって……。今でもみぃちゃんは雨の日には水溜まりに入っているのかな。さすが、みぃちゃんだ。中学生になっても子供の心を忘れない。そんなみぃちゃんを僕は大好きなのだった。


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