20話 ハクサイとみぃちゃん
今日の夕食はすき焼きだったよ。僕はみぃちゃんにそう言った。みぃちゃんは家出して夕食を食べそこねたのだ。うらめしそうに僕を見て、おいしかったの?と聞いた。おいしかったよ。ハクサイがクサくてハクサイ味だったけど。それを聞いたみぃちゃんは家庭菜園ハクサイ編と言って、話し始めた。
「ハクサイを種から植えたよ。なかなか芽がでてこないの。水をあげて、待ったの。だんだん大きくなって、葉っぱが丸くなって、ハクサイになったよ。だから、ハクサイをクサイって言わないでね。」
「うん、でも名前が葉クサイだよ。」
僕が答えると、
「違うよ、白菜。白い菜っぱだよ。」
「そうだったの。僕ずっと勘違いしてたよ。そっか、これからは白いね、葉っぱと言うようにする。」
僕がそう言うと、みぃちゃんは「そうしてね」と言って少し眠った。
僕はハクサイをずっと葉クサイと思い込んでいた。まじめに考えれば白菜なのは分かっているはずなのに、妙な思い込みでまた、みぃちゃんをがっかりさせてしまう。僕はきっと二回目の人生もおかしくなるのだと思ってしまう。
僕はまた、ミゼラブルなのだろうか。みぃちゃんは言っていた。
「えさを与えられて、家族全員で出掛ける時以外はほぼ軟禁状態の子供がいる。彼らが小学校に入って、経験を積んだ他の小学一年生とまともに関係を築くなんて不可能だ。良くて、犬か赤子のように愛玩人物として扱われるだけだ。」
と。
それはかわいそうにと僕は言った……。ミゼラブルだ。彼らもまたミゼラブルだ。葉クサイと白菜を間違えたように、子育てと、ペット飼育を間違える人も多いのだろう。みぃちゃんはその間違いをどう思っているのか。何も言っていなかった。
残ったすき焼きを弁当箱に入れて、家出中のみぃちゃんのいる裏庭に持っていきながら、僕はみぃちゃんがペットだったのかなと考えるのだった。




