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クラディエ公爵家は僕のものなんだ(エドガー視点)


『大丈夫。誰だってあなたを許してくれるわ』


慈悲深い母、ナルシアン伯爵夫人は、いつもそう言っていた。


母は、この世のあらゆる過ちを許せるほど慈悲深い人だった。

心があまりにも優しく、哀れな人や動物を見ると、すぐにハンカチで涙を拭ってしまう。


家の中で大小さまざまな問題が起こるたび、母はいつも涙を流した。

その涙があまりにも美しく、神々しくて、僕はいつも感嘆せずにはいられなかった。


この世のすべてを許すだなんて、なんと善良なのだろう。


母が大丈夫だと、あなたを許すと言ってくれるたび、僕はいつも救われたような気持ちになった。


『寄付は貴族の務めだ。施す者のもとには、自然と信頼が集まる』


父、ナルシアン伯爵の教えだった。


父はいつも進んで寄付をする人だ。

数ある貴族家の中でも、我がナルシアン伯爵家ほど寄付に熱心な家はない。


自分の財産を惜しげもなく哀れな人々に差し出すだなんて、まさに善良さの鑑ではないだろうか。


僕も幼い頃から父に倣い、食べきれなかったパンを使用人たちに分け与えていた。

使用人たちが、あれほど上等な白パンを口にする機会などあっただろうか。


「……ありがとうございます、坊ちゃま」


彼らはいつも笑みを浮かべて、それを受け取ってくれた。

僕を見る彼らの瞳には、尊敬と感謝が満ちていた。


その視線が、とても心地よかった。


この国で一番慈悲深い母と、誰よりも寄付を惜しまない父を持つ僕もまた、立派に育った。

血筋なのだから、立派でないはずがない。


社交界の貴族たちも、いつも僕の人柄を褒めてくれた。

善良なナルシアン家の子息なのだから、当然人柄もよいのだろうと考えていたようだし、僕もまた、彼らの期待を裏切らなかった。


三年前、僕がクラディエ公爵家に婿入りすることが決まったとき、婚約者であるルアは、僕より二つ年下の可愛らしい少女だった。


波打つ淡い金色の髪に、アメジストの瞳がとても美しかった。

だからその外見と同じように、心根もきっと慈悲深く、素晴らしい子なのだろうと思っていた。


けれど。


「ルア、鳥が死にかけているよ」


翼の折れた幼い鳥が道端に落ちているのを見たとき、ルアはそのまま通り過ぎようとした。


「申し訳ありませんが、私にはその子の命を預かる責任を負えません」


そう冷ややかな答えだけを残して。

その小さな命を、ルアは冷たく通り過ぎたのだ。


「信じられないよ。ルア、今、怪我をした鳥をそのまま見捨てるつもりなの?」


ルアは涙ひとつこぼさず、何とも思っていないような顔をしていた。


「ルア、鳥がかわいそうだよ。連れて帰って飼ってあげたほうがいいと思う」

「後継者教育で忙しいので、鳥を飼う時間はありません」

「使用人に飼わせればいいじゃないか」

「使用人にはそれぞれ仕事があります。無駄なことを任せる理由はありません」

「無駄だなんて、ルア」


僕は彼女の未熟さに、ため息をついた。


彼女はまだ幼い。

見ている世界があまりにも狭く、この世には数えきれないほど大切なものがあるのだと知らないのだ。


弱く哀れな存在に手を差し伸べることが、どれほど尊いことか。

その尊さを知らないルアが、僕にはかわいそうに思えた。


幼い頃に母を亡くしたルアなのだから、僕とは違って、善良さを学ぶ機会がなかったのだ。

それは決して、ルアのせいではないのだろう。


僕が親切に教えてあげなければ。


「ルア、こんな幼い命に、そんな冷たい態度を取ってはいけないよ」

「……」

「弱い命は守るべきものなんだ」


僕はルアの前で、見せつけるようにその鳥を拾い上げた。


小さな鳥は僕の手の中でかすかに震えていたが、僕の手を心地よく感じているようだった。

僕はその鳥を優しく撫でてあげた。


自分がその小さな命を救ってあげたのだと思うと、胸がいっぱいになった。


僕はその鳥を家へ連れて帰り、使用人に餌をやって保護するよう命じた。


「幼い鳥なんだから、温かく、優しく、愛情を込めて世話をしてあげて」


そう具体的な指示まで出した。


そして三日後、鳥が死んだという知らせを聞いた。


三日ぶりに目にしたその小さな命は、本当に冷たく固まっていた。

二度と羽ばたくこともないまま。


胸が張り裂けるような悲しみに、僕はその鳥を日当たりのよい場所に埋めてあげた。

それから時折、その鳥の墓を訪れ、鳥を偲びながら祈りを捧げてあげた。


そんな僕の姿は、一枚の絵のように見えたかもしれない。


僕と違って、ルアはあまりにも冷たい。


クラディエ公爵家は、本当にこのままでいいのだろうか。


僕はルアのために、クラディエ公爵家の空気を少し柔らかくしてみようと思った。


まずは使用人たちと親しくなった。

使用人たちは僕の優しさに心を開き、僕を慕ってくれるようになった。


「そんなふうに言ってくださるのは、エドガー様だけです」

「私たちのような者にも優しくしてくださる方は、初めてです」

「いつかエドガー様がこのお屋敷にいらっしゃれば、私たちも今よりずっと気楽に働ける気がいたします」


やはり、僕はこの屋敷に必要とされているのだ。

彼らの言葉こそが、その証だった。


ルアと結婚すれば、僕はクラディエ公爵家をともに背負うことになる。


いや、もしかすると、ルアより僕のほうがこの家をうまく導けるかもしれない。


僕のほうが優しい。

僕のほうが立派だ。

僕のほうが人の心を理解している。

領民の心だって、僕のほうがよく理解できるかもしれない。


人を冷たく追い詰めるルアより、皆を理解し、許すことのできる僕のほうが。


それに、使用人たちはルアよりも僕のほうを頼りにしてくれている。


僕なら、皆を幸せにできるはずだ。


僕がこの家の中心に立つ。

皆に仰ぎ見られる場所に立ち、光り輝く僕の姿を想像すると、胸が高鳴った。


お読みいただきありがとうございました。

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