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14/23

誕生日の夜会、その幕開け


財務局へ再び足を運んでから、ほどなくして王室補助金の交付が決まったという通知が届いた。


その日の夕方、私はいつもより少し軽い足取りで父のもとを訪ねた。

父は書斎で書類に目を通していたが、私が入ると顔を上げた。


「何事だ、ルア」


私は姿勢を正し、真剣な声で言った。


「ご報告したいことがあり、参りました」

「報告?」

「はい。ナルシアン伯爵令息についてです」


父は興味深そうに私を見た。


「聞こう」


私は、これまでずっと準備してきた話を父の前で切り出した。


「ナルシアン伯爵令息の態度は、すでに一線を越えております。まだクラディエ家の人間ではないにもかかわらず、クラディエ家の使用人に指示を出し、使用人たちが私の指示ではなく、彼の言葉を優先する状況を作りました」

「……それが、先日お前が話していた使用人の命令系統に関する問題か」

「そのとおりです」


私は、これまでの使用人たちに対するエドガーの態度を、父に詳しく説明した。

表情を崩さずに聞いていた父が、わずかに眉をひそめた。


「そして、私に対する態度にも問題があります。ナルシアン伯爵令息が私を貶めるような言動をする姿は、他の者たちも何度か目にしております」

「たしかに、問題のある行動だな」

「私個人のことでしたら、深刻に考えるつもりはありません。ですが、これはクラディエ公爵家の威信に関わることです」

「お前の言うとおりだ」


私は沈んだ表情の父に向かって、用意していた切り札を出した。


「こちらは、財務局から届いた通知です。今回の西部の港湾整備について、王室補助金を受けられることになりました」


通知書に記された補助金の額を見た父の目が、わずかに見開かれた。


「今回の補助金は、私たちの事業にとって大きな力となる額です。さらに、王室の承認という大義名分まで得ることができます」

「なるほど」


父は通知書にもう一度目を落とした。

やがて、はっきりと告げた。


「理由も十分で、代案まで持ってきた。お前の望むとおりにしてやろう」


父からその言葉を聞いた瞬間、私は思わず息をついた。


この瞬間を、ずっと待っていた。

少しだけ、涙が出そうになった。


そんな私を見つめながら、しばらく沈黙していた父が低い声で言った。


「ナルシアン伯爵令息をお前の婚約者にしたのは、私の判断違いだったようだ」


思いがけない言葉に、私はひどく驚いた。

自分の下した決定を悔いる父を、初めて見た。


父はいつもの厳しい表情を少し崩し、目を伏せた。


「よく耐えたな、ルア」


そう言う父の顔は、普段とは違い、少しだけ優しく見えた。



やがて時は流れ、私の誕生日が近づいてきた。


誕生日の夜会を前に、私は多くのことを確認した。

使用人たちの配置と招待客の動線、料理の準備状況、会場に飾る花の状態まで。


私の人生にとって、大きな意味を持つ夜会になる。

だからこそ、準備は完璧に整えた。


誕生日当日、新調した空色のドレスを身にまとった私を見て、エドガーが言った。


「ルア、そのドレス、とてもよく似合っているよ。コサージュが赤い薔薇だったら、もっと綺麗だったのに」

「そうかもしれませんね」


私がにっこりと笑って答えると、エドガーが小さく首をかしげた。


「今日はいつにも増して、ルアの機嫌がよさそうだね」

「はい。とても心が軽いのです」


私は首をかしげるエドガーに、もう一度笑みを向けた。



午後六時になると、美しい生花で飾られた広間に客人たちが集まり始めた。

美しい音楽が流れ、ワインが振る舞われていた。


「クラディエ嬢、お誕生日おめでとうございます」


アデル公爵夫人が挨拶をしながら、贈り物を手渡した。

そのそばに立っていたカイスも、丁寧に一礼した。


「お誕生日おめでとうございます、クラディエ公爵令嬢」


肩に銀の装飾が施された黒い礼服をまとったカイスの姿は、少し新鮮に見えた。


私は二人に向かって挨拶を返した。


「ありがとうございます。アデル夫人、アデル様もお越しくださり、ありがとうございます」


アデル夫人からの贈り物は、小さな宝石が繊細にはめ込まれた羽根ペンだった。


「本当に美しい細工ですね。大切に使わせていただきます」

「クラディエ嬢のお気に召したようでよかったわ。私なりに、ずいぶん悩んで選んだのですよ」

「さすが、夫人はお目が高くていらっしゃいます」


アデル夫人と談笑していると、私の目に、ドレスの裾に足を取られて倒れかけた令嬢を支えるエドガーの姿が映った。


その親切で優しげな姿を見ながら、私はかすかに微笑んだ。


お読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
いよいよザマァが見られると思うと、私の心も軽くワクワクが止まらないです(^^)v
 よっしゃ、断罪の時だッ!
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