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第37話・ままごと

ハン(あれから姉上は口を利いてくれない。オイラが1人で北海道に行ったことを相当根に持ってるらしい。関係が崩壊する前に修復しないと……!)


ハン「……あ、姉上!今日の朝刊読みました!?」


ショウ「……」


ハン「ここ見てくださいよ。『日替わり豆知識』のコーナー。『ままごと』は漢字で『飯事』と書きます……だってさ」


ショウ「……」


ハン「いやー、オイラてっきり『ママの真似事』を略して『ままごと』なのかと思ってましたよ~!」


ショウ「……」


ハン「まさかご飯を意味する『まま』の方だったとはね~。驚きっスよね~」


ショウ「……」


ハン「……」


ショウ「……」


ハン「……あ、もしかしたら『ありのまま』の『まま』もご飯の意味かもしれないっスね!ほら、おにぎりとか食べてる時に米粒こぼすと蟻が寄ってくるでしょ?地面に落ちた米粒はいずれ蟻の餌、すなわち蟻の『まま』として巣に運ばれるっス。でも、地面に落ちた米粒をわざわざ蟻から奪い返すヤツはいないっスよね?大概はただ見てるだけ。……そう!つまり、成り行き任せの情景を蟻の餌になぞらえて、人は『ありのまま』と呼ぶんス!!どうスか、この推理!?」


ショウ「……」


ハン「……違いますね。ええ、違いますとも。んなわけナイナイ。アハハ!」


ショウ「……」


ハン「……えーっと……そうだ!『えーい、ままよ!』って掛け声。あれの『まま』はご飯のことじゃないっスかね?」


ショウ「……」


ハン「役人が毎日大根食べてたらその大根がピンチの時に加勢してくれた、って昔話があるでしょ。確か古事記に……いや、徒然草だっけ?どっちか忘れちった!テヘッ!!……とにかくそういう伝承が残ってるくらいだし、日々のメシに助力を乞うような掛け声があっても不思議じゃないと思うんスよね。『ままよ、我に力を!』みたいな」


ショウ「……」


ハン「……うん、これも違いますね。全然違うってば。的外れもいいとこっス。まったく、どこのどいつだ!くだらんホラ話のたまうのは!!……あ、オイラでした。アハハ!」


ショウ「……」


ハン「……そ、そういえば!フレディも歌の最中に『まま』連呼してましたよね。お腹が空いてひもじかったのかな?」


ショウ「それはない」


ハン「あ、喋った」


***


ナレーション4「前回の誤字。手榴弾のくだりで『レバーから手を離すと』と表記すべきところを、『レバーから手を話すと』と表記しておりました。訂正してお詫び申し上げます。それでは、引き続き『コウノトリの野望』をお楽しみください」


マロー「ヴーッ!!」


マルチヨ「さっさと決めてくんないかな」


マロー「ヴーッ!!!」


ナレーション4「雪ウサギ隊の身柄とメガネの命。どちらを取るべきか、板挟みになって悩み苦しむマロー。頭を抱えて蹲ってしまう」


マルチヨ「めんどくさいなー、もう。じゃ、オラが10数え終わるまでに返事しなかったらピン抜くってことで」


メガネ・マロー「!」


マルチヨ「10、9、8、7、6」


メガネ「マロー、逃げて!」


マロー「えっえっ」


ナレーション4「煽るでも急かすでもなく、淡々とカウントダウンを告げるマルチヨ。自身の命を顧みず、マローを逃がそうとするメガネ。2人の声が脳内で反響しまくり、ストレスの許容量が限界を迎えた結果、マローの中で鳴りを潜めていた凶暴性が爆発した!


マロー「ウガ


ナレーション4「……かに思われたその時」


???「【バリバリ!バリバリ!!バァン!!!】ステイ!」


メガネ・マロー・マルチヨ「!」


ナレーション4「引き裂くように破壊される鉄扉。見ると、山小屋の玄関にグラマラスな女が立っていた」


メガネ「ハツ!」


ハツ「お待たせ」


マルチヨ「……なんだハツか。相変わらずガサツだね。せっかくサイコパワーに恵まれてるんだからさ、鍵だけ壊すなり、扉外すなり、もっとスマートに力を使えないの?」


マロー「ウガガガガ」


ハツ「マロー、ステイ。ステイよん。はい、深呼吸して」


マロー「ウガピ」


ナレーション4「興奮したマローを抑え込むハツ。奇しくも、メガネを拘束するマルチヨと対称的な構図になる」


ハツ「……みそっかす、話は聞いたわ。雪ウサギ隊4人揃って出頭する。だからその代わり、メガネウラさんの身の安全を保証すること!いいわね?」


メガネ・マロー「!」


マルチヨ「ヒレイとブレンは?」


ハツ「2人もカチューシャを通して話は聞いてるはずよん。直、ここに来るわ」


メガネ(カチューシャ?)


マルチヨ「ふーん。そういえばこのカチューシャ、仲間内で聴力を共有できるんだっけ?流石、DATスーツはダテじゃないね」


メガネ(このカチューシャにそんな機能が……)


マロー「ハ、ハツ……」


ハツ「それはそうと、みそっかす。あなた、マローを追い詰めるような交渉して、どういうつもり?農場みたいな大惨事をまた引き起こしたいわけ?」


メガネ(農場……?)


マルチヨ「……さあ?普通に交渉してただけだよ。そっちが勝手に追い詰められた気になってただけなんじゃない?」


ハツ「白々しい!あなた、昔からそうよね!!わざとマローをけしかけたんでしょ!?」


マルチヨ「はぁ。うるさいなー。……そうだよ。仰る通りでございます。手榴弾を使うにしても、自発的に爆発させたって言い訳するよりかは、そっちから手を出されて正当防衛のために仕方なく……ってことにしといた方が事後処理が楽になるからね」


ハツ「あなた本当に腐ってるわ!」


マロー「ハツ……マロー、人でなし、なるかもしれない」


ハツ「大丈夫。大丈夫よ、マロー。あたしたちがついてる。あたしたちは家族。家族が過ちを繰り返さないように止めるのも家族の役目よん」


メガネ(過ち……?なんの話しとるんやろ……?)


ナレーション4「何やら過去を語っている様子のハツ、マロー、マルチヨ。事情がわからず、置いてけぼりを喰らうメガネ。山小屋が重々しい空気に包まれてゆく中、場の緊張感に割って入る軽薄な女が1人」


軽薄な女「あ!いた!!」


ナレーション4「ヒレイである」


軽薄な女改めヒレイ「おーい!さっき上の方でメガネウラがいた痕跡を見つけたよ。その痕跡を辿ってけば……ってお前はみそっかす!?こんなところで何してやがる!?」


マルチヨ「……」


ハツ「ヒレイ、あのね


ヒレイ「……なるほど、読めたぜ。……みそっかす!てめーがメガネウラを誘拐したんだな!?メガネウラを脅しの材料にして俺たちをしょっ引く魂胆なんだろ!?相変わらず姑息なことしやがるぜ!覚悟しろ!!」


ハツ「ちょっとヒレイ!」


ヒレイ「なんだよ!止めんなよ!!」


ハツ「あっちは手榴弾持ってるのよん!?迂闊に手出ししたらメガネウラさんの身が危ないでしょ!?」


ヒレイ「手榴弾!?なんだそりゃ!?」


ハツ「……まさか、みそっかすの話、聞いてなかったの!?カチューシャは!?」


ヒレイ「……あ、省エネモードになってる。聴覚共有切れてたわ。ゴメン」


ハツ「バカ!道理で話が噛み合わないわけだわ」


メガネ「……」


マロー「ヒレイ……」


マルチヨ「あのさ、そっち側で揉めるのは構わないんだけど、出頭するかどうかの意思疎通はちゃんとしといてよね。後々になってやっぱり出頭しません、ってのはなしで頼むよ」


ヒレイ「おい、出頭ってなんの話だよ」


ハツ「かくかくしかじか」


ヒレイ「は!?そりゃねーだろ!そもそもなんでこいつの要求を


マルチヨ「あー、めんどくさい。ブレンに決めさせるから、ブレン呼んできてよ」


ヒレイ「おい待てよ!雪ウサギ隊の隊長は俺だぞ!?俺が決めるモガガ」


ナレーション4「ヒレイの頭部を掴んで床に押しつけるハツ。有無を言わせぬ凄みでヒレイを黙らせる」


ハツ「さっきから言ってるでしょ!メガネウラさんが危ないの!!ちょっと黙ってて!!!」


ヒレイ「ヒィ」


マルチヨ「はぁ……なんでお前たち、こんなヘタレを隊長にしてるわけ?雪ウサギ隊のパワーバランスはブレン一強でしょ?」


ハツ「……そうね。客観的に見たらそうなるでしょうね」


ヒレイ「え」


ナレーション4「マルチヨのヘタレ発言を気に留めることなく、当然の如く流すハツ。納得がいかず、皆の顔を見回すヒレイ。そんなヒレイと目が合い、目を逸らすメガネ」


メガネ「……」


ヒレイ「……」


マルチヨ「軍でもブレンが1番厄介視されてるし、素人のオラから見てもアイツの技術力はとんでもなく高いってわかる。タイムマシンでも作れるんじゃないかってくらい凄いし、というかタイムマシン作ってタイムスリップしてきた未来人じゃないの?」


ハツ「何言ってんのあなた」


マルチヨ「SFはともかく、ブレンを放っておくとどんな悪だくみされるかわからないからね。今から3分以内にブレンがこの山小屋に来なかったらピンを抜くことにするよ」


ハツ「え、3分!?それは流石に


マルチヨ「今の会話、カチューシャを通して聞いてるんでしょ、ブレン?3分だからね」


ハツ「せめてもうちょっと


マルチヨ「言っとくけど、時間の交渉は受けないからね。絶対に3分。ブレンのことだし、移動だけなら3分あれば余裕でしょ?小細工の猶予は与えないよ」


ハツ「違うわ。3分は長すぎって言ってんの」


マルチヨ「は」


ナレーション4「いつの間にかマルチヨの頭上に蜃気楼のような歪みが浮かんでおり、手榴弾が吸い込まれる」


マルチヨ「あっ!?」


ナレーション4「そして手榴弾と入れ替わるように歪みからブレンが現れ、マルチヨを張り倒す」


マルチヨ「ギャッ」


メガネ「うわっ」


ブレン「……」


ハツ「舐めすぎよん。ブレンなら30秒あればワームホールを通ってどこへでも移動できるのに。3分も与えるなんて生ぬるいにも程があるわ」


ナレーション4「マルチヨの拘束からメガネが解放され、今度はマルチヨがブレンに拘束される格好となる」


メガネ「イテテ」


マロー「メガネウラ、大丈夫?」


ハツ「無理に動かさない方がいいわ」


ヒレイ「よーし、ブレン、押さえてろ!」


ブレン「……」


マルチヨ「……っ」


ヒレイ「この野郎、よくもさっきは好き放題言ってくれたじゃねぇか」


マルチヨ「……で、どうすんの?尋問するなり拷問するなり、さっさとやってよ」


ヒレイ「勘違いすんな。お前みたいな下っ端根性、どうこうするつもりはねぇよ。ただ、減らず口が利けねぇように、ちょっとばかし大人しくしててもらうけどな」


マルチヨ「?」


ナレーション4「マルチヨに背を向けるヒレイ。両脚を踏ん張り、勢いよく後ろ向きに飛び跳ねる」


ハツ「あ、ヒレイ!ア(・)レ(・)やるならお尻に


ヒレイ「喰らえケツ!」


マルチヨ「んぶっ」


ナレーション4「跳躍したヒレイの尻がマルチヨの顔面に直撃する。マルチヨは尻に弾き飛ばされて失神し、ヒレイは着地失敗により尻を床に強打した」


マルチヨ「……」


ヒレイ「……ッッッ!!」


ハツ「あちゃー、遅かった……。大丈夫かしら?」


メガネ「……何アレ?」


マロー「アレは『ウォンバット風ヒップアタック』。オ(・)ー(・)ス(・)ト(・)リ(・)ア(・)に生息するウォンバットという有袋類に倣い、尻で攻撃を行う象形拳だ」


メガネ「え」


マロー「ウォンバットは巣穴を掘って暮らす生き物だが、巣穴に天敵が侵入しそうになると頑丈な尻で巣穴の入り口を塞ぐ習性がある。その尻というのが少々風変りな造りになっているらしくてな、硬い骨のおかげで高い防御性能を誇るそうだ」


メガネ「アンタ、カタコトの喋り方どこ行った?」


ハツ「ああ、マローはヒレイの象形拳を見ると一時的に知性が冴えて流暢に喋るようになるのよん。この状態のマローは雪ウサギ隊の中で2番目の賢さを誇るわ」


メガネ「えぇ……そこは1番とちゃうんか」


ハツ「どう転んでも1番はブレンだから」


メガネ「そう……」


マロー「ウォンバットの尻は頑丈故、防御だけでなく攻撃にも使える。なんでも、尻を天敵に打ちつけて撃退するとか。まさしく、攻守ともに隙がない攻防一体の構えよ」


ハツ「ヒレイの場合は単に尻で攻撃するだけじゃなくて、ヒップアタックで敵の頭部を揺さぶって気絶させる技に昇華させてるわ。殺すことなく、傷跡や後遺症も残さないから、敵を無力化する手段としてはとても人道的なのよん」


メガネ「はあ」


メガネ(アカン、宴会芸にしか見えん)


マロー「ちなみに、人間界にはウォンバットにインスパイアされて生まれた『頭隠して尻隠さず』という教訓が存在する。ウォンバットの如く、不格好でも急所となる頭を守り、滑稽でも尻を武器として使え……という意味だ。要するに、弱みは晒さず、強みは活かせということだな」


メガネ「『頭隠して尻隠さず』ってのはそういう意味とちゃうのでは?」


ナレーション4「ウォンバットの生息地はオ(・)ー(・)ス(・)ト(・)ラ(・)リ(・)ア(・)である」


マロー「頭と尻に関連する言葉としては『鶏口牛後』というのもあるが、これは史記のヘェッ、ヘェッ、ヘェッ」


メガネ「……?」


ハツ「あら、もういつものマローに戻っちゃったみたいね」


メガネ「短いんやな」


ヒレイ「い……いてぇーーー!!!」


メガネ「!?」


ナレーション4「突如、尻を抑えて痙攣していたヒレイがのたうち回り、吠え出す」


ハツ「うーん、やっぱり。いつもならあたしがヒレイのお尻をサイコパワーで覆ってガードするんだけど、今日はヒレイが後先考えずにサイコパワーなしで突っ込んじゃったから、お尻を痛めたのね」


メガネ「えぇ……」


メガネ(アホっぽいというか……やっぱり宴会芸とちゃうの?)


ヒレイ「いてぇよ!あーん!!」


メガネ「……」


ヒレイ「絶対にケツが割れてるよぉー!あーん!!」


メガネ「……」


ヒレイ「あーん!ケツ見て!!」


メガネ「は」


ナレーション4「メガネに尻を向けるヒレイ。にじり寄る」


メガネ「え?え!?」


ヒレイ「俺のケツ、割れてないか見て!」


メガネ「うわっ、こっち来んな!」


ヒレイ「ママ!俺のケツ、絶対割れてるよぉー!!」


メガネ「ちょっ……落ち着いて!人間の尻は最初から2つに割れてるもんや!!」


ヒレイ「あーん!ママー!!『痛いの痛いの飛んでけ』ってやってよぉー!!!」


メガネ「わ、わかった!やるから!!ちょっと離れて!!!……【ナデナデ】イタイノイタイノトンデケー」


ハツ・マロー・ブレン「!!!」


ナレーション4「ヒレイの尻を撫でるメガネ。指を咥えてその光景を見つめるハツ、マロー、ブレン」


ハツ「いいなぁ……」


マロー「ヴーッ」


ブレン「……」


マロー「……【ゴチン!】」


ナレーション4「おもむろに、わざとらしく壁に尻をぶつけるマロー」


マロー「マローも、お尻、ぶつけた!マローのお尻も見て!!ママ!!!」


メガネ「!?」


ハツ「あっ、ずるい!【ゴチン!】あたしもぶつけた!!ママー!!!」


ナレーション4「追従するハツ」


メガネ「何やってんのアンタら!?」


ナレーション4「ヒレイと並び、メガネに尻を向けながらにじり寄るマローとハツ。ブレンだけが遠巻きに傍観している」


ヒレイ「もっと撫でて、ママ!」


マロー「ママ!!」


ハツ「ママ!!!」


メガネ「ママちゃうわ!うわーっ、タンマタンマ!!ブレン、コイツらなんとかして!!!」


ブレン「……」


メガネ「ブレン!!!」


ブレン「……」


メガネ「……あの、ブレンさん?」


ブレン「……【ゴチン!】」


メガネ「え」


ブレン「ママ」


メガネ「えっ!?喋った!?……ギャッ」


ナレーション4「ブレンの言葉に気を取られたメガネは迫りくる尻に押し潰され、失神したのだった。続く」

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