第36話・ホットドッグ
ナレーション4「前回の続き。奇襲によりシマチヨを叩きのめしたマローはマルチヨに牙を剥くのだった」
マロー「ヴーッ」
マルチヨ「……やあ、マロー。久しぶり」
マロー「ヴーッ!」
マルチヨ「まあまあ。まずはさ、お互いに腰を据えて話し合わない?いきなりドンパチやることもないでしょ」
ナレーション4「穏やかな口調でマローに言葉を投げかけるマルチヨ。しかし口調の穏やかさとは裏腹に、その左手は固くメガネを拘束している」
マロー「お前たち、敵!話すこと、ない!!」
マルチヨ「そんなにカリカリしないでよ。ほら、怪我人もいるんだからさ」
メガネ「……っ!」
ナレーション4「拘束をしたまま、マルチヨがメガネの背後に回り込む。メガネが人質であることを強調しつつ、その身体を盾にしてマローの攻撃を牽制する格好である」
マルチヨ「山で足、挫いたんだってさ。走るどころか、歩くのもひと苦労だね」
マロー「ヴーッ!みそっかすの分際で、メガネウラに、触るな!!」
マルチヨ「大丈夫。マローが取引に応じてくれるなら、この人には何もしない」
マロー「……取引?」
マルチヨ「そう、取引。マロー、ヒレイ、ハツ、ブレンの4人が軍に捕まってくれるなら、この関西弁は見逃してもいい」
メガネ・マロー「!」
マルチヨ「風の噂で知ってるとは思うけど、今、軍の上層部は雪ウサギ隊を探すのに躍起になってる。オラとシマさんも捜索に駆り出されて北部に来たけど、正直お前たちが見つかるとは思ってなかったし、適当に探すふりだけするつもりだった。なのに、シマさんは山に入るって言い出すし、山に入ったら山小屋に反乱兵が転がり込んでくるし、挙げ句の果てには雪ウサギ隊まで出てきちゃって、てんてこまいよ。もうね、本当にめんどくさい」
マロー「めんどくさいなら、見なかったことにして、帰れ!」
マルチヨ「こっちとしてはそういうわけにもいかないのよ。上と話し合って、雪ウサギ隊を捕まえたら昇進と内勤を確約してもらってる。昇進はともかく、内勤に回してもらえるのはかなりありがたい。どこにいるかわからない雪ウサギ隊をしらみ潰しに探すのは相当骨が折れるからね。今ここでお前たちを見なかったことにして不毛な捜索をやらされ続けるよりも、さっさと捕まえて内勤に行く方がオラ得なんだわ」
マロー「ヴーッ!お前の事情なんか、知るか!!」
マルチヨ「軍に引き渡すまで大人しく捕まっててくれればいいんだよ。引き渡しが済んだら、オラのいないところで暴れるなり脱走するなり好きにしてもらって構わないからさ。ダメかな?」
マロー「断る!雪ウサギ隊も、メガネウラも、みんな大事!!お前なんかに、渡さない!!!」
マルチヨ「はぁ……まったく、めんどくさいな……。じゃ、交渉のやり方を変えようか」
ナレーション4「床に落ちたシマチヨのクロスレンチに目をやるマルチヨ。その視線と思惑を察知し、マローがいち早くクロスレンチを回収する」
マロー「ガウッ!」
マルチヨ「お」
マロー「のろまめ!考えてること、お見通しだ!!クロスレンチ使って、武力行使、するつもりなんだろ?そんなことしても、無駄!マローには、通用しない!!」
マルチヨ「……」
マロー「ふん」
マルチヨ「はずれ」
マロー「!?」
ナレーション4「見ると、マルチヨの右手に手榴弾が握られている。ブラフの視線によってマローがクロスレンチに気を取られた隙に、マルチヨが上着のポケットから素早く取り出したのだった」
マルチヨ「これ、何かわかる?」
メガネ「!」
マロー「……?」
マルチヨ「手榴弾。試作品だけどね。見るのは初めてかな?……まあ、雪ウサギ隊が軍にいた頃はこういう殺傷力のある武器の製造と使用が禁止されてたし、初見なのも当然か」
マロー「シュリューダン?」
メガネ「ア、アカン。マロー、逃げて」
マルチヨ「関西弁の方は知ってるみたいだね。一応マローにもわかりやすく教えてあげるけど、これ、爆弾ね」
マロー「!」
マルチヨ「ピンを抜いてレバーから手を話すと中で火薬に着火して、数秒後にドカンってわけ。これ1個でこの部屋を滅茶苦茶にするくらいの威力はある」
マロー「ヴーッ、舐めるなよ!マロー、爆弾なんて、ヒビらない!!」
マルチヨ「なんか勘違いしてない?別にマローと正面切って戦おうってわけじゃないよ?この手榴弾は脅し。こっちの要求を呑まなきゃ、この場で関西弁を消し飛ばすって言ってんの」
マロー「!?」
メガネ「……」
マルチヨ「オラにはコウノトリの加護があるから、爆死しても元通りになれる。シマさんもそう。雪ウサギ隊の加護は軍を抜けてからどうなってるのか知らないけど、コウノトリの技術を自由に使いこなせるブレンがいるから、自前で加護を付与してると考えるのが妥当だろうね。でも、この関西弁には加護がないと見た。反乱兵だから戸籍は登録されてないだろうし、公的な手続きを踏んで加護が付与されてる線はない。雪ウサギ隊の知り合いならブレンの力で加護を付与されてる可能性もあるけど、仮にそうだとしたら、足の捻挫くらい、加護の応急処置で歩ける程度には回復させられるはず。わざわざボロボロになってまで山小屋に助けを求めに来る意味がない。そうでしょ?」
マロー「ヴ……」
メガネ「……」
マルチヨ「つまり、ここで爆発が起きたら、加護のない関西弁だけが死ぬことになるってわけ」
マロー「……は、反乱兵、生け捕りが原則!そんなの、軍が、認めるはず、ない!!」
マルチヨ「軍も日々変わってるんだよ。今まではこっちが非殺傷の武器で投降を促すしかできないのをいいことに、反乱兵は殺傷力のある武器で平然と殺しにかかってくるのがザラだった。いくら加護の力で死なないと言っても、一方的に殺意を向けられるばかりじゃ兵士のストレスも溜まる。新体制のジパングになってからもう4年半は経つし、ここまで投降を呼びかけても応じないなら、殺害を視野に入れた徹底抗戦もやむを得ないんじゃないかって見解が軍の中でも強まってきてるんだ」
マロー「……」
マルチヨ「この手榴弾も、北部地区で作られた試作品だよ。ここ数ヶ月の間にジパングの各地で武器工場がどんどん新設されて、量産化の準備が進められてる。戦前の失われた技術を再現したり、あるいはまったく新しい技術を研究したりして、今までコウノトリに頼り切りだった武器開発が少しずつ人間の手で行われるようになってるんだ。とにかく、以前とは違うんだよ、いろいろ」
メガネ「……」
マルチヨ「……だいぶ余計な話しちゃったね。で、どうする?雪ウサギ隊4人揃って軍に引き渡されるのと、関西弁1人が消し飛ぶのと、どっちがいい?」
マロー「ヴ……」
メガネ「……マロー、ウチのことは気にせんでええ。捕まったのはウチがヘマしたせいやし。みんなを連れて、山下りて、どこか別の場所に隠れるんや」
マロー「ヴーッ」
マルチヨ「早く決めないと手榴弾のピン、抜くよ?」
マロー「ヴーッ!」
メガネ「マロー!」
マロー「ヴーッ!!」
ナレーション4「続く」
***
ショウ「古今東西!『食品名には生き物が入ってるのに原材料にはその生き物が入ってない食品』選手権!!」
ハン「オー!」
ショウ「ホットドッグ」
ハン「ねこまんま」
ショウ「きつねうどん」
ハン「たぬきそば」
ショウ「タコス」
ハン「サンマーメン」
ショウ「カニカマ」
ハン「焼き鳥」
ショウ「いや、焼き鳥に鳥は入ってるでしょ」
ハン「ふふん。実は鳥が入ってない焼き鳥、あるんスよ」
ショウ「え、そんなのあるの?」
ハン「じゃーん。見てくださいよこの写真!どうスか!?昨日北海道で撮ってきたんスよ~」
ショウ「……ん?」
ハン「なんと!北海道の焼き鳥は鶏肉じゃなくて豚肉が使われてるんス!!面白いでしょ!?」
ショウ「ちょ……ちょっと待ってよ」
ハン「何か?」
ショウ「北海道行ったの?」
ハン「うん」
ショウ「1人で?」
ハン「うん」
ショウ「お姉ちゃん差し置いて?」
ハン「……うん」
ショウ「なんで誘ってくれなかったの?」
ハン「……せっかくグッスリ寝てるのに起こしたら悪いかなーと思って」
ショウ「……しかもなんだよこのカメラロール!滅茶苦茶立派なカニ写ってるじゃん!!何ガニ?何ガニよ!?」
ハン「……タラバ」
ショウ「……マジかよ……お姉ちゃん、昨日、妹帰ってこないなーと思いながら1人寂しくカニカマ食ってたんだよ?……それなのにこの妹ときたら……」
ハン「いやー……悪かったっス」
ショウ「1人で……タラバガニを……」
ハン「ゴメンゴメン!悪かったって!!今度行く時はちゃんと誘いますから!!!ね!?」
ショウ「……」
ハン「……じゃ、じゃあ、今から行きますか!北海道!!」
ショウ「……え、いいの?」
ハン「北海道!!!………………物産展」
ショウ「……」
ハン「ほら、その……予算が、ね?」
ショウ「……」




