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第33話・回鍋肉

ナレーション4「前回の続き。雪ウサギ隊捜索の特命を受けて北部地区の集落を訪れていた正規軍の一般兵2人組。偶然目撃した不審なウサギに雪ウサギ隊との関連を疑い、その行方を追って座礁連峰に入山した。そしてあっけなく撒かれていた」


2人組の女1「ゼェ……ゼェ……」


2人組の女2「あーあ、見失っちゃいましたよ。病み上がりのくせに山に入ろうなんて言うから……」


2人組の女1「ゼェ……クソッ、半年近く入院すればやっぱり体力も落ちるか……」


2人組の女2「こうなっちゃ仕方ないですよね。無理せず引き返しましょう」


2人組の女1「いや、まだ遠くには行ってないはずだ。手分けして探そう」


2人組の女2「帰りたい」


2人組の女1「あ、そういえば。確かこの先に山小屋があったはずだよな?もしかしたら棲み着いてるかも」


2人組の女2「『棲み着いてる』ってのは雪ウサギ隊が、って話ですか?」


2人組の女1「そ。行って確かめてみよう。闇雲に探すよりはマシだろ?」


2人組の女2「その山小屋って、軍と自治体が共同で管理してるんでしょ?軍の関係施設だと知っててわざわざねぐらにするなんてことありますかね?」


2人組の女1「ヒレイの性格を考えれば、軍を脱走しても散歩感覚で軍の施設に侵入するくらいのことはやりかねない。アイツはそういうヤツだ」


2人組の女2「辺境の山小屋でも流石に加護のセキュリティが付いてるでしょうし、もし強引な侵入があれば軍なり自治体なりに警報の信号が飛ぶんじゃないですか?脱走後に認証システムだって更新されてるでしょうし」


2人組の女1「更新したところで無駄だろうね。向こうにはブレンがいるから。人類で唯一コウノトリの技術を理解したと言われる女だ。セキュリティを突破して侵入するどころか、逆に軍の追手を排除するようにシステムを書き換えて迎撃体制を敷いている可能性すらある。とにかく、警報の有無に関わらず、山小屋まで足を運んで自分の目で雪ウサギ隊がいるのかどうか確かめるべきだ。ほら、行こう」


2人組の女2「帰りたい」


***


ナレーション4「座礁連峰の山々の中で唯一人類の生活圏に隣接している『カッパ岳』。その標高600メートル地点に山小屋は存在する。元々は軍と自治体が共同で座礁連邦の詳細な地形を調査する際の拠点として建造されたものだが、調査中に怪我人が続出したことで調査計画が打ち切られたため、現在ではほとんど使われなくなった施設である」


2人組の女1「アタシは正面切って山小屋の玄関から入る。お前は裏手に回り込んで、玄関以外で何か動きがないか見張ってろ。それから、アタシが捕まったり動けなくなったりした時は軍に連絡して応援を呼んでくれ」


2人組の女2「了解」


ナレーション4「2人組の女のうち、タレ目で気力溢れる方の名は『シマチヨ』。クロスレンチを飛ばしてトラップや奇襲を警戒しつつ、山小屋の玄関まで歩を進める」


シマチヨ「【ピッピッ】扉のロックは問題なく解除できた。……後は中に雪ウサギ隊がいるかどうか、だな」


ナレーション4「ツリ目で無気力な方の名は『マルチヨ』。藪の中を移動して山小屋の裏手が見える場所に陣取る」


マルチヨ「はあ、帰りたい。……ん?なんだありゃ?」


ナレーション4「山小屋の裏手の地面に何かある……マルチヨがそう思った瞬間、表の方で声が上がった」


シマチヨ「うわっ!なんだこりゃ!?」


マルチヨ「!?」


シマチヨ「……おーい、マル!ちょっと来てくれ」


ナレーション4「シマチヨに呼ばれて山小屋の玄関に向かうマルチヨ。中を覗くと、異様な光景が広がっていた」


マルチヨ「うわっ……なんですかコレ?」


シマチヨ「多分……落書き……なんだろうけど……気持ち悪いな」


マルチヨ「……何かの歌詞……ですかね?」


シマチヨ「床も壁も天井も、部屋中が落書きでびっしり埋められてるんだよ。今は誰もいないけど、誰かがいた形跡ではあるよな……?」


マルチヨ「……浴室とトイレにもびっしり書かれてますね」


シマチヨ「ところで、小屋の外はどうだった?何か変わったことはなかった?」


マルチヨ「ああ、それなんですけどね。小屋の裏にキャベツが1玉だけありました」


シマチヨ「キャベツ?」


マルチヨ「誰かが落としたのか、捨てたのか。……まあ、さっきは藪に隠れて遠巻きに小屋を見張ってたんで、詳しくは調べてないです。もしかしたらレタスだったかも?」


シマチヨ「ちょっと見てくる」


マルチヨ「はい」


マルチヨ「……」


マルチヨ「……この歌詞、途中から般若心経に変わってるな」


マルチヨ「……」


シマチヨ「……」


マルチヨ「どうでした?」


シマチヨ「キャベツだった」


マルチヨ「レタスではなく?」


シマチヨ「うん、紛れもなくキャベツ。部分的に腐りかけてたけど、そこまで古いものじゃなさそうだった。これってやっぱり、少し前まで人がいたってことだよな?キャベツが山に自生してるわけないし」


マルチヨ「……」


シマチヨ「今の時点では誰がいたのかを特定できる直接的な痕跡はないけど、落書きやらキャベツやら、手掛かりとして調べる甲斐はありそうだ」


マルチヨ「……じゃ、一旦本部に帰って、ここで見たことを報告しましょうか」


シマチヨ「報告ならさっきクロスレンチの通信で済ませた」


マルチヨ「はい?」


シマチヨ「取り急ぎ、口頭で上に現状は伝えてある。後で現場の写真も撮って送る」


マルチヨ「え、ちょっと


シマチヨ「小屋の利用許可ももらった。1週間はここで寝泊まりしていいそうだ」


マルチヨ「ここに泊まるんですか!?」


シマチヨ「うん、そう」


マルチヨ「応援は?」


シマチヨ「呼んでない。大人数で行動したら目立つし、敵に気付かれるリスクが上がるだろ?今夜から2人でここに張り込むんだ」


マルチヨ「ええ……」


シマチヨ「それから、日が暮れる前に村で数日分の物資を買い込んできてくれないか?アタシ、さっきから肋骨が痛んで激しい運動ができそうにないんだ。だから悪いけど、お前1人で頼む」


マルチヨ「本当に帰りたい」


ナレーション4「続く」


***


ショウ「妹、キャベツ知らない?」


ハン「キャベツ?」


ショウ「冷蔵庫に入れてたヤツ。丸々1玉あったはずなんだけど」


ハン「あ」


ショウ「食っちまったのか?まいったな。回鍋肉作ろうと思ってたんだけど」


ハン「……レタスならあるっス」


ショウ「……回鍋肉ってレタスで作れるのか?」

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