表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芸術部の事件簿  作者: ハルコ
前を向くのが怖くって
PR
63/64

23話

造形研を後にし、どこに行こうか迷った俺たちは、フェルト細工が見つかったブースを回る事にした。

落語研に映画研。茶道研に囲碁将棋部。

花道部のブースを訪れた際は、部長に声をかけられ、世間話をした。

その後、新谷に聞いていた大学応接委員会の拠点、特別等一階の応接室に向かってみた。しかしこの時間では来客はいないのか、部屋からは何も聞こえなかった

そのまま図書室に向かった。入り口でばったり佐々木さんに会い、昨日の事でお礼を言われた。

何だか明はどことなく警戒をしている様子だったが、まぁ気にしないでおこう。

そして最後に芸術部のブース、美術準備室へ。しかしブースは一足早く閉めてしまった様で、扉には『色紙完売につき終了』と書かれたA4の紙が貼ってある。

どうやら予想以上に大人気だったようだ。

扉は閉まり、中からは楽しげな後輩たちの声が聞こえていた。

きっとあの中で雪も一葉も喜びを分かち合っている事だろう。

名残惜しいが俺たちはそこを後にした


当てを失った俺たちは、自然といつもの渡り廊下でこれまたいつもの甘いコーヒーを買っていた

慣れた手つきで小銭を入れ、ボタンを押すとガコンと音がして見慣れた黄色い缶が出てきた

俺の後に明も同じものを買い、いつもの昼休みよろしく中庭のベンチに腰掛けた

カコンとプルタブを開けてコーヒーを飲むと、いつもの甘ったるい味が口に広がった

何となく左上の方を見る。

そこには美術準備室があり、古ぼけたレースのカーテンがヒラヒラと手を振る様に踊っていた

つい最近まであの向こう側は俺の特等席だった

何となく寂しい感情が心に生まれる

「さて、どこに行こうか」

明はスマホの画面を見ながらいう

自分のスマホを確認すると、時間は4時を回っており、あと1時間で文化祭は終わりを迎える

昇降口の方を見ると、大勢のお客さんが笑顔で帰路に着いていた。

校内の残りの人数を考えてもこれ以上巡回者を増やしても無意味に感じる。

俺はもう一口コーヒーを飲み

「じゃあ生徒会室に戻って事態に備えるか」

と提案した

明もそれに同意したのか首を縦に振る

しかしそれとほぼ同時に俺のスマホが震えた

見るとメッセージが届いた様で、送り主は新谷だった

「新谷からメッセージが来たぞ」

明にそう伝えると、横目で画面を見てきた

そのまま流れでメッセージを開くと

『フェルト事件ですが犯人が分かりました!

協力してくれた先輩方には大変申し訳ないのですが犯人を刺激しない為にも今の所明かせない状態です。

後日完全に決着しましたら必ず真相をお伝えしますので、残り1時間文化祭を楽しんでください』

そう綴られていた

正直驚いた。あれだけ考えても見出せなかった答えを新谷は見つけたのだ。

良かったと思う反面、どことなく寂しさを感じた。

「犯人見つかったんだね」

明も驚いたように言う。

その声には少し悔しさを感じた。

それもそうだろう。ここまで追ってきた事件の真相に辿り着けないまま、自分達のいない所で解決されたのだ。

しかもその答えはお預け。これでは収まりどころがない。

しかしそこは明だった

「あー、くそっ」

と笑いながら言った

「もう少し知恵を奥まで働かせれば解けた謎なのかな?

いやー、悔しい。実に悔しい。」

そう言ってコーヒーをぐいっと飲み干す

それを見ると俺も笑うしかなかった

「本当だ、あれだけ息巻いて事件に挑んで男1人軟禁したのに解けなかったなんて」

「でもまぁ解決したみたいだしいいんじゃない?

結果大きな事件も起きなかったしさ」

明は無理にスッキリした顔でそう言う

その顔の奥には歯痒い気持ちがあるのだろう。

俺も同じだ。

だがそれは心の底にしまっておこう。実に頼りになる後輩が出来たことだ。

それに高校3年最後の文化祭、まだ楽しみたい事は残っている。

1時間でどれだけ巡れるか

俺は立ち上がり明に言った

「明、最後に文化祭うんと楽しもうぜ」

「勿論だとも。まだやり残した事は山ほどある

まずはeスポーツ研で雪辱をはらそう」

明は笑って返した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ