24話
午後5時、校外から来たお客さんはほぼ居なくなり、残るのは生徒と少数のOB、そして先生くらいだった
みんなやり切った顔をして、周囲の仲間と笑いあってる中、校内放送のチャイムと共に新谷の声が学校に響き渡った
『桜岡高校文化祭は5時をもって終了しました。
生徒だけではなく、協力して頂いた皆さんのおかげで一昨年を超える大盛況の中、文化祭を終えることができました。本当にありがとうございます』
そこまで言い切ると自然と学校中から拍手やお疲れ様の声、校庭からは運動部員達の歓声が上がった。
こうして桜岡高校文化祭は生徒会長からの放送で幕を閉じた。
そこからがまた大変だった。
片付けが始まり、あれだけ懸命に作った立て看板やポスターを撤去し、木材のみを校庭に集めていく。
俺たち三年生やOBは体育館で使った椅子の片付けや校外につけた立て看板の撤去、映画研や花道部などの片付けに人手が必要な部活への支援活動などを行った。
あれだけギスギスしていた運動部員達も終わってしまえば何とやら。自分達の片付けを即座に終わらせて様々な部活へ手伝いに出ていた
校内に満ちる達成感とそれに付随した一体感。
それはなんとも心地よいものだった。
そして片付けが終わったのが午後7時。
俺たちは指示されたわけでもないのに校庭に集まる。
そして先生達が集めた材木に火をつけ、キャンプファイヤーが起こった
歓声が上がる。それが落ち着くのを見計らってメガホンを持った新谷が朝礼台に立ち、生徒たちはそれを見守った
「皆さん、片付けを含めて文化祭本当にお疲れ様でした。
約1時間の短い時間ですがめいいっぱい8時まで後夜祭をお楽しみください」
もう慣れた物、奴は堂々と生徒たちにそう言った
それを聞いた生徒たちは拍手や声援を送り、和やかな雰囲気で後夜祭が始まった。
それぞれの部活で余ったお菓子や料理、ジュースを持ち寄り、工程の真ん中で燃える木々を見ながら談笑をしている。
その顔はどれも達成感と安堵に溢れていた
出店をしていない三年生は、それを遠巻きに見ていた。
俺たち2人もそれに漏れず、校庭のバックネットに背中を預けて見守っていた
あまりのジュース片手に、これまた余りのアメリカンドックを食べていると少し侘しい気分になる
「終わったねぇ」
明はそう呟く
「だな」
俺はそれに適当に返す
首なし干支に振り回された。今でこそ胸にしこりの残る記憶だが、これも時が経てば思い出になるのだろうか
クイズ研も楽しかった。eスポーツ研で最後に勝ち取った勝利は心に残るだろう。
本当に有意義な文化祭だった。
すると目の前の2人に目が行った
「おっと?」
そこにいたのは成弥と馬場さん。
何だか楽しそうに笑い合う2人に
「やるじゃん、成弥」
と、ニヤリと笑った明は言った
たまたま行き合った別の造形研部員に、事の流れを聞いた所によると、馬場があそこまで立ち直った背景には献身的に元気付けた成弥の存在が大きかったようで。
そりゃ、あぁなってもおかしく無い。
いやぁ、いいことだ。
「怪我の功名ってやつかな?成弥も隅に置けないな」
俺はニヤニヤしながらジュースを飲む
しかしその一言は地雷だったようで
「いや、雪ちゃんをしっかり落としたお前には言われたくは無いと思う」
と明は冷たく言い放つ
あまりの衝撃に吹き出しそうになった
「明、何故それを」
そう言った俺に明は、はぁ?と言った顔で
「むしろバレてないと思ってたのか?」
と言った。
いつもの茶化しとは違うと言う事はバレバレだったという事か。
実に恥ずかしい
俺はいっそ吹っ切れて
「そうですとも、お付き合いさせて頂いてますとも」
と言ってやった
「おや?僕は付き合ってなんて一言も言っていませんが」
わざとらしく明は言う
「うっせ」
俺は雑に答えた
すると後ろから声がした
「なんですか?口喧嘩してるんですか?」
見るとそこには園花が立っていた
「おっ、園花ちゃん。お疲れ様
なんて事はないよ、ただ春ってのはいいなぁってね」
明はニヤニヤしながらこっちを見る
こいつの冷やかし癖はついに治らなかったと毒を吐きたいものだ。
そんな明を園花は気にもせず
「なんだかよくわかりませんが。
あっ、先輩、これいりません?」
そう言って彼女は器用に片手で三本持ったフランクフルトを差し出す
「ありがとう、貰うよ」
俺はお礼を言ってそれを受け取った
まだ小腹が空いているもので
フランクフルト受け取ると、園花は俺の隣に来て、バックネットに背中を預けた
そのまま流れるようにフランクフルトに一口齧り付き、美味しそうにそれを食べていた
それを飲み込んでから彼女は話し出した
「そういえば、新谷会長からメッセージ届きました?犯人わかったって」
「届いたよ、いやぁあれだけ考えたのに答えを出せなかったのが歯痒い」
明は苦笑いをしながら答える
それを俺はフランクフルトを一口食べながら聞いていた
「でも、最後の一文気になるんだよな『解決したら報告する』ってやつ」
「そういえばそうだよね」
「でも文化祭は既に終わりましたしね。
もしかしたらメッセージが来てから終了までに解決したとか?」
やはり園花も煮え切らなかったようで、話に食いついてきた
建前では納得したが、やはり気になるものは気になる。
フランクフルトを食べながら頭の中で整理する
首なし干支に見つかった部活
そして唯一無傷で見つかった羊の細工と芸術部
そして浮かび上がったメッセージ
I kill future
もう少しで真相に辿り着きそうだが、そこに辿り着くまでにモヤがかかっている感覚だ
俺が1人頭を悩ませていると、園花は提案した
「なら、生徒会長に会いに行きません?」
その提案に明は苦笑いをした
「会いにいこうって、流石に今は忙しいんじゃないか?」
その答えに園花はキョトンとする
「だって、あの人も今ここにいるんじゃないですか?」
と園花はキャンプファイヤーを指差す
確かにそうだ。あれだけの功労者がこの場に居なければ役不足と言うもの
だが、既に帰った人もいるとはいえここには人が多すぎる
「じゃあ3人で別れて探しに行こうか
見つかったらメッセージすればいいしね」
「了解です。あぁ、でも忙しそうならやめときますか」
「だな、あくまでも話ができそうならするくらいでな」
そう言って俺たちは別々に新谷を探すことにした
時間は7:30分
刻々とその時は近づいていた




