5話
俺達は生徒会長に促されて入室し、松村は生徒会長の隣に座った。
俺達は後輩たちから席を譲られかけたが、当事者でもないので立ちながら話を聞くと丁重に断り、壁際に移動した。
そこから机の上を見ると、先程は新谷の影になり分からなかったが、「猿」の細工と同じように首がない細工が二つ並んでいた。
「兎と蛇のフェルト細工も見つかったのか…」
明は悲しそうに言う。
二つの細工も同じように切り口に赤黒い絵の具が塗りたくられた状態だった。
松村がその隣に猿の細工を置くと、座っている二人の生徒もそれを見て目を見開く。
女子生徒は俺たちを見て話し始める。
「私、茶道部部長の花崎と申します。
つい一時間ほど前です。模擬店の活動中に「兎」の細工が落ちているのをお客様が見つけまして。
グループラインでも注意喚起が来ていましたし、何より気味が悪いので生徒会長に相談しようとしたら…」
と花崎は横の男子生徒を見る
「僕は落語研究部の緑川といいます。
先ほど教室で開催している寄席で落語をやっていたらお客さんから悲鳴が上がりましてね。
中止して見に行ったら「蛇」の細工が落ちていたんですよ。」
そう言って机の上の細工を指さした。
「見つかったフェルト細工はこれだけなのかい?」
明は新谷に聞く
「いえ、もう一体あります。」
そう言って立ち上がり、机に一つの細工を取りに行った。
その手には羊のフェルト細工があった。
その細工は特に外傷はなく、午前中に造形研究部で見た物だった。
「これ、芸術部で見つかったんです。
ちょうど2時間前、部員の一年生が届けてくれたんですよ。
誰かの落とし物じゃないかって」
まさか芸術部で見つかるとは思わなかったので、驚いた。
部長3人もそれを見て、無傷で見つかったことを疑問に感じたようだった。
「なんで芸術部だけ無傷なんだろう」
花崎は首をかしげた。
「なんだかメッセージがあるようで、気になりますね」
「それは分かるよ。緑川もそう思っていたんだ」
緑川と松村は少し笑みを浮かべて話す。
それを花崎は咎めるようににらんだ。
生徒会長は一つため息をついて
やばいと思ったのか2人の男子生徒は口を紡いだ。
「松村部長。花崎部長と緑川部長にも聞いたのですが、犯人に心当たりはありますか?
もしくは犯人を見たとかは」
そう聞くと松村は首を横に振った。
「まったくありません。まぁ僕らの部活に個人的な恨みを持っている人が一人もいないとは言い切れませんが、まっとうに部活は行っています。
犯人についても部員全員見てはいないです」
と言い切った。
予想通りの答えだったのか新谷は一息つき、
「わかりました。
ひとまずこの件は生徒会で受け持ちます。
皆さんは各ブースに戻って文化祭を楽しんでください
…あと、この件については一応内密でお願いします。」
と、疲れたように言った。
明は松村に
「僕らは別件で会長に用事があるから」
と言ってここで別れた。
部長3人はそれ以上この件に関りを持ちたくないようで、3人でたべりながら生徒会室を出て行った。
生徒会室に残ったのは俺達2人と生徒会長を含めた委員4名
生徒会室の空気は重いままだった。
その沈黙を破ったのは明だった。
「なんだか文化祭もいろいろ起こるね。
新谷君、ジュースをおごるから少し話さないかい?」
と、新谷にいった。
新谷は少し驚いたような顔をした
そして丁寧に
「いえ、仕事がありますので」
と断ったが
「会長!今日休んでないじゃないですか!」
「もう仕事も少ないですし、すこし休んでください。」
と委員の援護射撃もあり、しぶしぶ俺達と休憩に入ることにした
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