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芸術部の事件簿  作者: ハルコ
前を向くのが怖くって
44/62

4話

正直「探しても見つからない」そう思っていた。

この事件な真相も、あまりにも細工を気に入ったどこぞの誰かが出来心で盗みを働いた。

そんなものだと思っていた。

運が良ければ罪悪感に蝕まれた犯人が菓子折りでもつけて謝りに来る。

運が悪ければ犯人のおもちゃとして飽きが来るまでもてあそばれる。

そんなところだと思っていた。

しかし見つかった細工はあまりにも無残な姿だった。

首は雑にちぎられ、その断面にはべっとりと赤黒い絵の具が半渇わきの状態で汚く塗られている。

可愛さのある人形の為にそのグロテスクさは強調される。

悪意があるとしか思えない状態だった。

「こんな状態で馬場さんには返却できないね」

困り果てたように明は言う。

「あぁ、これなら見つからないほうがましだ」

そう答えるしかなかった。

「ちょっと皆さん、どいてください!」

集まった人たちを散らすような指示が教室から飛んできた。

声の主はまさに将棋棋士といった装いの細目の男で、片手には濡れ雑巾、もう一方にはビニール袋を持っていた。

その男は明を知っているようで、顔を見ると声をかけた

「あれ?赤坂先輩じゃないですか」

対する明もこの男を知っているようで、慣れたように返した

「やぁ松村君。何か大変なことが起きてるのかと思ったよ」

「いや起きたんですよ。まさか生徒会から送られてきたフェルト細工がこんな形で…」

松村はそこまで言うと周囲の目線を気にして

「先輩方、中で話をしませんか?」

そう言って教室に案内した

俺達もそれに従うことにした

松村はフェルト細工を拾い、床に残った絵の具を手早くぬぐうと

「お騒がせしましたー!増田先生との公開対局はこのあと2時から始めますので、見に来てくださいねー」

と元気よく言って教室の扉を閉めた


教室にはほかの部員が数名いたが、暇を持て余しているのかたべりながら囲碁や将棋をさしていた

扉が閉まると同時にこちらを一度見たが、さほど興味がなかったのかすぐに盤面に目を戻した。

「すまないね松村君。あぁ、隣のこいつは僕の友達の」

と俺の紹介をしようとしたが松村に遮られ、

「松原先輩ですよね?この学校じゃ有名人ですよ」

と言われた。

「そんなもんなのか?」

「運動部は分からないですけど文化部の中じゃあなたは有名人ですよ?」

そういわれると少しうれしかった

「でも、まさかこの部活が生徒会から注意喚起された事件に巻き込まれるとは思いませんでした。」

松村は苦笑いでいう

「実は僕たちもこの事件に巻き込まれていてね、盗まれた現場に居合わせたんだよ」

「そうだったんですか?犯人捜ししてるんですか?」

「まさか、まぁ首を突っ込もうとしたら生徒会長に止められたけどね」

「あの堅物生徒会長じゃその光景が目に浮かびますね」

松村は笑いながら言った。

どうやら新谷はどこでも堅物で通っているらしい

「フェルト細工を落とした犯人は分かるのか?」

俺がそう聞くと松村は首を横に振った

「見当もつきません。お客さんの女子生徒が驚いて悲鳴を上げたので、気づいたんですよ」

と苦笑いでいう。

「それで回収するために一度手袋と袋を取りにいったわけか。」

「はい。で、そこで先輩たちと鉢合わせになったんです。」

やはりあの人だかりは悲鳴を聞いた生徒が集まってきたのか。

まぁあんな人形があったらよほど心臓が強い人じゃないと驚きはするだろう。

「で、その人形はどうするんだい?」

「もちろん生徒会に持って行きますよ。

こんなの悪意のある悪戯だ。」

と少し怒り気味で松村は答えた

明はそんな松村に対して

「なら僕らもついていっていいかい?

なんだか気になってしまって」

と提案した

意外な提案だと思ったのか松村は驚いたが、直ぐに元に戻り

「別に大丈夫ですけど、先輩達は文化祭楽しんだ方がいいんじゃないですか?」

と気遣いをしてくれた

「別に構わないさ。それに後輩の部活で起きた事件はやっぱり気になるよ」

俺はそう答えた



生徒会室は囲碁将棋倶楽部のブース3-Cからは近く、中央渡り廊下を通れば1分もかからない距離だ。

「しかし犯人はなんでこんなことしたんですかね」

松村は呆れたように言う

「確かに。文化祭でこんな大事起こしたら大問題なんだけどね」

「それは犯人しか分からないな。おおよそ文化祭で目立ちたいってところじゃないか?」

そんなことを話しているうちに生徒会室についてしまった。

遠くに美術準備室が見えた。結構並んでいてやはり好評のようで鼻が高かった。

そっちに気を取られていると松村はノックし、生徒会室に入っていった。

「失礼します…て、あれ?」

松村は少し驚いたようだった。

「あれ?松村じゃん」

「こんにちは松村くん」

中からは聞きなれない2人の生徒の声が聞こえた

中に入ってみると、左手に応接スペースがあり、奥手の2人掛けソファに男女1名づつ座っていた

どちらも和装の生徒で、特に女子生徒の方は朝顔があしらわれた綺麗な和服を着ていて、男の方は落ち着いた黄緑色の和服だった。

そして手前側1人掛けソファの右手には生徒会長新谷がやつれた顔で座っていた

「囲碁将棋倶楽部の松村部長、どうされました?」

新谷はなんだか察しがついているといった口調で話す

「はい、先ほど部室でフェルト細工が見つかったので相談に来たんです」

と言うと新谷は大きなため息をついた

その理由は驚いて咄嗟に出たのか、女子生徒が話した

「私達の部活でも悪戯されたフェルト細工が見つかったんです」



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