表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊ピエロと迷宮な日々  作者: なお☆プリン
カウントアップ:3
99/117

丸々印の氷爆弾(真昼)

「じゃ、真昼くんは車の中で待っててくれて大丈夫だから!というか、待っててもらえる?」


目的地に着くなり、市長はそう残して車を降りた。

……相変わらず勝手というかなんというか。まぁ、俺が近くにいても、何かあった時にあいつの邪魔になるだろうから、意外とこの方がいいのかもしれない。


そんなことを1人で考え込んでいると、突然運転席側の窓が叩かれた。市長は瞬間移動でも使えるのか!?とさすがに驚いたが、窓の外に立っていた人影を見て、思わずため息が出た。


「どうしたんだ?(かなめ)。」

「何これ……」


窓を開けた俺が訊くと、サッカーボールほどはある塊を片手で持って、要が返してきた。


「……何だよそれ。俺知らないんだけど。」

「僕が凍らせた……」

「それじゃあ、ますます分かるわけないだろ……。」


逆に、それでなんでわかると思ったんだ?


「でも、これがあった場所が……」

「……どこにあったんだ?」

「この下……」


そう言うと要は、俺が乗っている車の下の方を指差す。

……来た時には何も無かったと思うんだが。意味はないかもしれないが、念のため要にも確認をしておくか。


「お前が自分で置いたわけじゃないんだよな?」

「もちろん。来てからはずっと木の裏に……」

「隠れていたのか。」


俺の言葉に要は大きく頷く。

当然、彼が嘘をついている可能性だって考えられるだろう。が、自分の中にある「そうあって欲しくない」という願いから、彼の言葉を無条件で信じるようになっていた。


「そっか。」

「他に犯人に心当たりある……」

「え、誰よ。」


要が唐突に言ったことを、俺が追及しようとした時だ。

彼は突然振り返って、その手に持っていた氷の塊を空高く放り投げた。

それから数秒で1番高くまで、上がったところで塊の周りが音もなく真っ暗に染まる。


「……は?」


何が起きたのか飲み込めない俺が、言葉にならない声を漏らしている間に空は青を取り戻し、あの塊は消失していた。


「い、今のはなんだよ?」

「闇……」


自分でも分かるくらい怯えている俺とは対照的に、あくまでいつも通りな要は、ぽつりと放った。

その言葉を聞いて、俺の震えは収まるどころかひどくなる。


──闇。人の負の感情から生まれるもの。

さらに精霊によって得られる能力と闇は釣り合った関係にあり、

打ち消しあうことができる。……自分や周りを変化させる能力は例外のようだが。

しかし、今大事なのはそこではない。

俺のように精霊と契約した者は『精霊の加護』によって、能力に耐えられるように肉体が強化される。……かなり、過剰に強化されている気もするが、『闇』はそれを無視してダメージを与えることが可能なのだ。

……つまり、今の爆発が闇を含んでいたならば、あるいは闇そのものだったとしたら……そんなこと考えたくもない俺は、何度か頭を横に振る。

とりあえず深呼吸をして、気持ちを落ち着かせよう。


「……だとしても犯人は誰だ?」

「例えば、闇を器用に使える人……」


そう言われて真っ先に思い浮かぶのは柄闇家だが……もしかして、灯太が言っていたことが本当になっているのか?

勝手に自問自答している俺を置いて、要はさらに続ける。


「もしくは闇そのものとか……」

「……あれはあくまで噂だけの存在じゃないのか?」


闇があまりにも濃い場合、もしくは負の感情が大きくなりすぎた場合、闇は持ち主を離れて別の個体として動き出す……という話を聞いたことがある。が、聞いたことがあるだけで、見たことはない。本当にそんなことがあり得るのか……?

そんな俺から疑いの眼差しを向けられた要は、若干呆れたように呟いた。


「本当のことだよ……」

「なんでそう言えるんだよ?」

「戦ったから……」


……あぁ、そういうことか。

こいつは12年前の戦いに参加していたんだっけ。


……12年前、柄闇家の中でも特に過激な思想の持ち主達が、闇と対極の存在である精霊、及びそれらとの契約者を消そうと、水面下で動き始めた。

それを内部から漏らしたやつがいて、精霊VS闇の構図が出来上がった……けれど、この戦いの終わりははっきりと分かっていなくて、気づいたら柄闇家の方が動かなくなっていたので、今は停戦状態……ってところだ。


その時に、戦えない精霊や契約者は避難しており、俺はそっちに入っていたから、戦いはテレビとかで観たくらいだったな。

そういえば灯太とか夜紅と初めて会ったのもあそこだったっけか。


物思いにふけっていた俺を引き戻すように、要に肩を叩かれた。


「それで、闇そのもののやつの特徴なんだけど……」

「あ、おう。」

「『名前を持たず、自分から名乗れない』ってこと……」

「名乗ったらどうなるんだ?」


すると、要は右の握り拳を顔の横で開いて、


「自分の主の名前を言ったやつと、ニックネームで名乗ったやつは体が弾けとんで消滅したよ……」


と小さく放った。


「……うわ。」

「だから、基本的には『1班班長』みたいな肩書きで呼ばれていたよ……」


まあ、それが名前って可能性もなくはないが、限りなく低いだろうな。


「だから、身の回りで名前を知らない人がいたら、怪しんだ方がいいかも……」

「なるほど……でもそんなやついたか?」


俺は頭の中の引き出しを開けてみるも、思い当たる節がない。

そもそも、名前を知らないやつはそんなところには入らないからな……。


「ねぇ……」


そう言って要が急にこっちを見つめてくる。

……何か言おうとしているのか、それとも「察せ」ってことなのか。


「……なんだよ。」

「この仕事やめなよ……」


要はそう残すと、研究所の方へ歩いていってしまった。


……変なやつだな。この仕事って……市長の秘書のことだろうけど……


……そういえば市長って……?


いや、市長は……市長だよな?



……市長の名前……聞いたことねえぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ