お昼は冷めた弁当になってて(真昼)
「ふぅ……。」
冷たいとまではいかなくともぬるさが残っている訳でもなかった弁当を平らげてから、思わずため息をついた。どうせなら温かいまま食べたかった、というのもあるがそれ以上に市長の態度が引っ掛かっていた。
重たい頭を上げて時計に目をやると液晶には15:26を映し出されていた。
指定の時間まで30分近くあるが……行くか。
俺は車を降りてキーのボタンを押した。鍵がかかった音が聞こえたのでそのまま駐車場を後にした。
気合いを入れる意味でも、市長室の扉の前で大きく深呼吸をする。
「……よし。……失礼します、秀島です。」
「入って入って。」
俺が声を聞いてから室内に入ると、ほぼ同時に背後で扉がしまる音と鍵がかかる音がした。振り返ろうかとも思ったが、まあ市長なのは分かっているのでそのまま来客用にソファが置かれているところまで進んだ。
「真昼くん。気づいていたんだろうけどさ、驚いてほしかったな~って。」
「……市長……大事な話があるんでしょう?」
いつもなら市長のペースに乗って、嘘でも驚いていた。が、今回ばかりは市長の態度が普段と違うからな。俺はいたって落ち着いている風に市長に話しかける。
「そうだ。君にしか話せないし、君にしか頼めない。」
俺としてもいつになく真剣な市長の眼差しを見て、今回は真面目な話なのだと直感した。
「分かりました。」
なるべく真面目な態度をとろうと、俺は背筋を伸ばしてソファに座り直した。
そこで市長からお願いされた内容は、ある山奥にある研究所の跡地に行くのについてきてほしい、というものだった。要はそこまで運転していってくれ、ということだ。
市長が慎重に話すから一体どんな重大なことなのかと身構えていたが……結局やることはいつもと変わらないということか。
「失礼しました。」
俺は市長室を後にする。
4時になる頃に市長自ら駐車場に来るそうで、それまで車内待機を命じられた。いつもは車を表に回して、そこで乗ってもらうんだが……やはり何かあるのだろうか?
「はぁ……。」
まぁ考えて答えが出るわけでもないので、ガムでも噛みながら待つことにしよう。
……一応、念のため、要にも連絡しておこうか。




