繋がっている黒いタマ(コウ)
私達が研究所の中でリビングとして使っている部屋。そこにあるテーブルの上にビニール袋を置いた。
「さて、コウちん。」
「なに?」
名前を呼ばれて浮幸の方に目を向けると、目を輝かせて笑顔を浮かべていた。
「いつの間に……その右手に持ったフライパンは何?」
「ホットケーキ、食べたくないっすか?」
「朝御飯は食べてきたけど……食べてないの?」
ふと、時計を見ると時刻は9時を過ぎていた。さすがにそんなにすぐにはお腹空かないよ……。
あきれながらキッチンの彼女に近づくと、彼女の前には未開封のホットケーキミックスが置かれていた。
「朝ごはんっすか?3枚食べたっすよ、ほら。」
彼女はそう言うとオーブントースターの横に置かれている食パンの袋を指差す。確かに袋の中に残っているのは5枚なんだけどさ。
「朝御飯食べたのに……食べるの?」
「なんかコウちん見たらお腹空いちゃったんっすよね~。」
「えぇ……?」
思わず素で引いてしまう。しかも態度にも出してしまった。
まぁ当の浮幸はそんなこと気にしていないみたいで、ボウルや泡立て器を準備しだしたんだけど。
「で、どうしますか?食べるっすか?」
彼女は卵を手際よく割りながら私に訊いてきた。まぁ、私も朝御飯食べたし……食べたけど、ね。
「うん、貰うよ。」
「了解したっす!」
私の返事を聞いてか、彼女の動きは先程よりほんの少しだけ速くなっているような気がした。
さて、と。ホットケーキ作りは浮幸に任せて、私はリビングを出た。
廊下を真っ直ぐ歩いて、玄関も通り過ぎる。やがて他のより大きくて堅牢な扉の前で私は足を止めた。扉に備え付けてあるカードリーダーに私のカードを読ませると、「ピッ」という音が鳴ると共にディスプレイに「OK」と表示された。
……私は「UNLOCK」とかの方が良いって言ったんだけど……もちろんその意見は今も変わってないし。
さてと。ロックの外れた扉を引いて開ける。中に入り、扉が閉まったのを確認してから部屋の中心を見据える。
私の視線の先には、直径1メートルぐらいの黒い球状のモノが浮いており、時々稲妻のようなものを発している。……正直あまり近づきたくはないんだけど……まぁ、あいつらもそろそろ来るだろうし。
私がそれに近づこうと1歩踏み出した時だった。
球が縦に伸びて、中(?)から2人の人が現れたのだ。……なんて言ったけど、どちらも何度も見た顔だ。
「……おっ。久しぶりだな、日野。」
私を見るなりそう言った銀髪の彼は雲野 幻。うちのチームのリーダー的存在で、コードネームは『キング』っていうんだ。
「コウちゃんに会うの、そこまで久しぶりってほどでもないと思うけど……?」
そんな幻の言葉に対して疑問を浮かべている彼は華晴 仁。……これと言ってポジションというのは無いかな、一応『ジャック』がコードネームだけど……
あ、でもみんなが困ってるときに真っ先に案を出すのはいつも仁なんだけどね。
「ま、いいじゃん。とりあえず腹減ったし、なんか食いに行こうぜ。」
幻がカードを読み込ませながら、色々と食べ物の名前を挙げているのを聞いていて、浮幸がホットケーキを焼いていたのを思い出した。
「あ、それならさ。さっきうさぎがホットケーキ作るって言ってたよ。」
「おー。いいね、それ。」
「じゃ、それ貰おうか。」
そう言うと幻は扉を押し開けた。それと同時に隙間からほんのりと甘い香りが入ってきた。
「コウちーん?もう焼けてるっすよーっ!」
さらにそこに浮幸の大声が聞こえてきたので、私達は思わず3人で顔を見合わせてしまった。
「ふふっ。うさぎ、相変わらず元気だね。」
「だな。」
そう笑い合うと2人は出ていった。……って私も出なきゃ。
隙間が無くなる前に私も急いで部屋の外に出たのだった。




