秘密基地的な研究所(コウ)
ところで時間は少し巻き戻り……
「……何度見ても、やっぱり廃墟だよね……」
私はいつも5人で集まっている研究所の門の前に立って、呟いた。
きっと元の研究所の名前が書いてあったであろう札……がかけてあった跡。
周りに巡らされた有刺鉄線付きの金網のフェンス……は所々破れている。
「あれ?コウちんじゃないっすか?遅かったっすね!」
私は後ろからかけられた声につられて振り向く。そこには両手にビニール袋を抱えた……
「あ、それとも『クイーン』の方がよかったっすか?……それとも私のこと忘れちゃいました?」
いじわるな小悪魔みたいに笑顔を浮かべた彼女……大事なメンバーを忘れるわけがないのにね。
「んなわけないでしょ、うさぎ。あ、『ジョーカー』の方がよかった?」
「どっちでもいいっすよ。私はどっちのコードネームも気に入ってるんで。」
私は仕返しのつもりで言ったんだけど、うさぎ……じゃなくて浮幸は、あまり気にしてなかったみたい。
そんな小柄で小動物みたいな彼女の名前は雨宮 浮幸。
私達のグループ「7ポカ」の一員で、5人の中だとムードメーカー……ってとこかな。
「相変わらず髪の毛は伸ばしてないんだね。」
私が浮幸のショートボブの髪を触りながら呟くと、
「ま、私のキャラに合ってないかな~って思って。……コウちんは長い方が好きっすか?」
彼女は質問で返してきた。
独り言のつもりだったんだけど……。
……うーん。私はいつも後ろに1本でまとめちゃってるから、そういうの考えたことないんだけど……
「まぁ、似合ってればいいんじゃない?」
結果ものすごい曖昧な答えになってしまった。
「……コウちんはほんと、おしゃれに興味ないっすよね。この間もじんじんとかやっこに言われてたし。」
「確かにそうだけどさ……あ、そうだ。夜紅も仁ももう来てるの?」
私はそれとなーく、話をずらすことにした。
「あ、やっこはお昼過ぎになるって連絡があったっす。じんじんともっくんも……まだ連絡はないっすね。」
「そっか。……もしかして学校?ユウが通ってるところとか。」
半分冗談のつもりだったから笑いながら言ったんだけど、浮幸は急に真面目な顔になり、
「よく分かったっすね。」
まじまじとこっちを見つめながらそう言ったのだ。
どうしよう、別に深くは考えてなかったんだけど……
「なんとなくね。」
私の視線は自然とフェンスの方を向いていた。
「……でもなんで?」
姿勢はそのままに、浮幸に対して質問を飛ばした。
飛ばしたんたけど、その声は自分で思っているよりずっと小さくて……。
私がちらっと浮幸の方を見ると、彼女は空を眺めてため息をついていた。どうやら私の質問は届いていないらしい。
それならそれでいいんだけど。
どうせ、夜紅に訊けば分かるだろうし。
「ずっと外で立ってるのもなんだし、中入ろうよ。」
「そっすね。」
浮幸は短く答えた。一瞬見せたその表情はなんとも……しかしすぐ笑顔になり、
「じゃ、こっち持って欲しいっす。」
「いいけど……」
浮幸は片方のビニール袋を差し出してきたので、私はそれを受け取って歩き出した。
歩きながらちらっと袋の中を見ると、お菓子が大量に入っていた。




