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精霊ピエロと迷宮な日々  作者: なお☆プリン
カウントアップ:3
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白と黒は勘違い(ユウ)

シロセナとクロセナが再び現れるのにあまり時間はかからなかった。

なんだけど……


「モウシワケナイ、『キング』も『ジャック』もフザイでした……」

「デモ、アンシンしてクダサイ。イナイってコトはプロテクト(・・・・・)シッカリかけてるとオモウしダイジョウブ……とハンダンしたノデ、カイホウしますカラ。」


そう言ったかと思うと、出口まで案内してくれた。

別れ際に、


「ガンバレー」

「ガンバってください。」


と言われたんだけど……これやっぱり勘違いされていたんだろうか。

……っていうか!


「そうだよ、ワッフル!ここどこなの!?知ってるところなの!?」


怒濤の展開が一段落して、僕の中からふと消えかけていた疑問をぶつける。

突然の大声で驚かせてしまったみたいで、ワッフルは少し肩をびくつかせた。


「あ、ごめん大声出して……」

「イヤ……モンダイナイ。」

「で、ワッフル。ここはどこなんだ?」


僕がまごついていると、鳥越くんがしびれを切らして声をあげた。

そんな鳥越くんをまっすぐ見据えるワッフル。


「……セイレイカイだ。」


「……精霊界(・・・)?」

「……どういうこと……?」


その口からでたセリフに、鳥越くんと石町さんの頭の上には『?』が浮かぶ。

実際、僕もよく分かっていなかった。だって精霊界は精霊しか行けないものだと思っていたから。

その思いは意図せずして言葉になって口から出てしまった。


「でも、精霊界って……」

「セイレイしかいけないハズ……ただ、ミーたちはなにもしてまセンケドネ。」


クレープがフォローを入れてくれたので話は途切れないで済んだ。けれど……僕達の間に流れた微妙な空気までは払われなかった。

さらに、


「……クレープ……タルト……ワッフル……みんな……なにも知らないの?」


という石町さんの問いかけに、3人はすっかり黙りこんでしまった。


「……知らないのね……。」

「ま、まあまあ。僕達だって地球のこと全部知ってるわけじゃないから……」

「え?」

「……なに言ってるの……?」


僕が余計なことを言ったせいで、2人の『?』の数が増えた気がする。

どうしよう……なんかヘタにフォローしようとしても上手くいかないし……。


「だーっ!考えても分からないもんは仕方ない。ワッフル、ここが精霊界ならオマエの家とかないの?」


みんなが次の言葉に困って空を見上げかねなかったところに、鳥越くんが新たな話題をあげてくれた。……のだけれど、ワッフルの表情は晴れない。


「オレラはウマレてすぐにリョウにハイったから……」

「イエをもっているのはリョウをデテ、エイジュウしているセイレイだけデスカラネ……」


ワッフルに続いて、クレープも項垂(うなだ)れた。


……どうしようか。

僕達はすっかり困って、しばらく立ち止まっていた。

ふと僕がなんとなく空を見上げると、すっかりオレンジ色に染まっていた。


「……もう暗くなるんじゃない?」


僕はなんとなく言った。もちろん僕には案なんて浮かんでいないんだけれど。


「……しゃーない。今夜はみんなミノムシで我慢してな。」


すると突然鳥越くんがそんな事を言い出した。


「……虫……嫌い。」


石町さんが頬を少し膨らましてそっぽを向いた。虫嫌いなんだ……。


「今夜だけだ。明日明るくなったら色々探そう。」


そう提案した鳥越くんは、袖から糸を出し始めた。

ってええ!?


「……あ、まだ言えてなかったっけか。これ、俺の能力で『粘糸生産(スパイダ)』っていうんだ。」

「へ、へぇ……。」

「……蜘蛛……。」


正直突然の事で僕は身を引いてしまったのだけれど、どうやらそれは石町さんも同じみたいだ。もちろん鳥越くんはそんな僕らには目もくれず、糸で何かをつくり始めたんだけれども。


作成者である鳥越くんとワッフルを除いた4人で、じんわりと暗くなっていく空をぼーっと眺めていた。

でも、視界が暗くなるより先に背後……というか少し上の方から、


「思ってたより良いやつができたな。」

「カンペキだな。」


という声が聞こえてきたので振り向いて上を見ると、大きな木の幹の途中に、白いハンモックのようなものができていた。


「な、なにそれ?」


僕は思わず訊いてしまう。さっきまでそんなもの無かったし……まさか糸で造ったんだろうか。


「いやー、最初はぶら下げるだけにしようと思ったんだけど、やっぱり横になって寝たいしさ。……よっと。」


糸に掴まってゆっくりと下りてきた鳥越くんは、地面に足がつく前に糸から手を離していた。


「さて、今日はもう寝ようぜ。正直これ以上暗くなったら何も見えなくなりそうだしさ。」


鳥越くんにつられて僕達は辺りを見回す。周辺では、ぽつ……ぽつ……とわずかな明かりが灯っているだけで、街灯みたいなものら見当たらない。


「私の能力……あるし……。」

「でも明るいときの方が余裕作れるじゃん?」

「……うぅ……分かった。」


石町さんは半ば諦めたように会話を打ち切った。

……と、僕はもう一度上を見上げる。……もしかして、ここを登らないといけないのかな……。


「よーし、じゃあみんなのこと引き上げるから!」


そう言うと鳥越くんは木の枝に糸をかけて、すばやくハンモックの上へ移動した。かと思ったらその場所から、僕と石町さんめがけて糸を伸ばしてきた。


「えっ?」

「……?」


体に糸が巻きついたと感じた頃には僕の体は宙に浮いていた。

僕と石町さんはそのまま、声も出せずにハンモックの上に落ちた。正直ちょっと楽しいと思ったんだけど、


「……ふぇ……ぇ……」


と石町さんが震えている……というか放心しているのが見えたので、とりあえずそちらに回り込んだ。


「お前らは飛べるだろー?」

「ボクもヤって!」

「ミーもキョウミがありマス!」


鳥越くんは下にいる2人とそんなやり取りを繰り広げていた。

僕がそれを見ているうちに、石町さんは落ち着いてきたみたいで、


「……びっくり……した……。」


と、とりあえず言葉を発していた。


「スマナイ……リョウはマエフリなしでトツゼン……」


いつの間にか上がってきていたワッフルが、僕達を交互に見ながら謝った。ワッフルが頭を下げるのを見て、


「全然大丈夫だし、ワッフルが謝んなくても……」


と自然と口から出ていた。


「……私は……ちょっと……怖かったけどね。」


石町さんは、鳥越くんの方に視線をやりながらそう言った。

というか、ほぼ鳥越くんのことを睨んでいるようにみえるんだけど……


「よーし、いくぞー!」


鳥越くんがそう言ったかと思うと、糸が引き上げられて上から──タルトとクレープが落ちてきた。

……ちょっ!


「ヤッホー!」

「イェー!」


「「わーー!」」


全く下を見ていない2人が落ちてくるのを見て、僕と石町さんは思わず叫んでしまった。……というか、一応狙ってはくれたみたいだけど、僕達の上に落ちたらどうするつもりだったのかな?


「鳥越くん……」

「ん?なんだ石町、もっかいやる?」

「明日……覚えててね……」

「……明日?なんかあったっけ?」


鳥越くんはなぜ気づかないのだろうか、石町さんが発しているこの怒気というか殺気というか……に。


「……もういい……これから……気をつけてね。」

「お、おう?分かった……ところで何を?」


鳥越くんの質問に答えるより前に、石町さんはハンモックの上で丸くなっていた。


「……水森、俺らも寝ようぜ。」

「あはは……そうだね。」


そんな会話を交わして体を横にすると、まぶたが重くなった気がした。

この重いシャッターを開くより、このまま眠ってしまった方が楽な気がして、


「おやすみ……」


と僕は誰に言うわけでもなく呟いて眠りについた。

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