二対の影は幻想か(ユウ)
ワッフルとクレープが空を見ているのに気づいて、鳥越くんと石町さんは目線を上にする。
座り込んでいた僕が、そんな彼らを視界に入れようとすれば必然的に空の様子は目に入ってくる。
「空が……ピンク……きれい……。」
「なんだよここ……」
さすがに2人も変に思ったのだろう、見たこともない色の空に。
ただ、3人で空に見とれていて前から近づいてきていた2つの影に気づけなかったんだけど。
「ダレダ?」
「シンニュウシャか?」
「っ!」
「……!」
「わっ!」
とまあ、僕達はすぐさま身構えた。
が、白い方の影が僕の喉元に剣先を突きつけてきた。
「……!」
「おい!」
「トマレ。」
石町さんと鳥越くんが近寄ろうとしたのをもう片方の黒い影が両の手に握った2本の剣で牽制する。
「ユウくんにナニしてるんダ?」
「オチツケ、タルト。」
タルトが声を荒げたのを、クレープがなだめる。
残念ながら僕はその声を聞くことしかできないんだけど。
「マッテくれ、オレタチはアヤシイモンじゃナイ。」
ゼリーの言葉を聞いて、僕達に向けられた剣が下げられた。
その剣の行く先は見ないで、僕達はすぐさま振り向く。
「……オマエ、セイレイだな。」
「なぜココにイル?ココはフツウならハイルことがデキナイはずダガ。」
白黒の影が各々喋り終え、ワッフルを見つめる。
ワッフルは双方の影に交互に視線をやり、小さめのため息を1つつくと、
「コイツらシンジンのセイレイで、オレとクレープでいろいろアンナイしてたんダガ……」
と言いながらクレープの顔を見た。
クレープは自分へ視線が向けられたのをすぐに理解したのか1歩前へ出る。
「デスガ、マヨってしまいましてネ。ミーたちもココがドコだかしりたいトコロだったのデス。」
ワッフルとクレープの訴えを聞いて、白黒の影が顔を見合わせたかと思った瞬間、彼らが纏っていたオーラのようなものが弾け散った。
霧のようにどこかに消えたオーラ、その中から出てきたのは白い鎧を着た人と、黒いスーツを着た人……いや、さっきの話し方だと精霊かもしれない。
「中身も白と黒なんだな。」
「ナルホド……マイゴだったのカ。」
「無視かよ!」
「とりあえず、ワタシタチもジコショウカイをしよう。」
鳥越くんの言葉は軽くスルーされていたのだけれど、本人も気にしていなさそうなので切り込む必要はなさそうだ。
「ソウダナ、まずワタシはシロセナ。このクニのウダイジンダ。」
白い方がそう言って、手に持っていた剣を天に掲げると空の色を反射して妖しい紫色に光った。
「そして、ワタシがクロセナというモノで、イチオウ、サダイジンです。イゴオミシリオキを。」
黒い方はまるで執事かなにかのようにお辞儀をした。
こうしているとすごい穏やかな感じなんだけど、さっき剣を向けられていた時……オーラの向こうからでも感じとれたぐらい、鋭い目をしていた。
「こういうのがギャップっていうのかな。」
「……何言ってるの……?」
自然と出てしまった言葉を石町さんに一蹴されて、僕は苦笑いでごまかすしかなかった。
そんな苦笑いを止めたのは、クロセナの言葉だ。
「とはイエ、ネンのため『キング』にカクニンしてきますね。」
クロセナはそう言うと、シロセナと共にスタスタと去っていった……
って待って待って、確認なんかしたら僕達が精霊じゃないことがバレて大変なことになるんじゃ……
「ど、どうするのワッフル!?」
「…………。」
僕が慌ててワッフルに訊いても、ワッフルは黙りこんだまま。
「どうしよう、クレープ!」
「……ま、シカタナイですネ。ナニかあったらニゲマショ。」
「……逃げられる……かな……?」
「シズクのノウリョクで……ナントカ。」
「……えぇ……まぁ……そのときは……やってみる……」
ヤバそうになったら逃げる。
という方針を6人の中で打ち出し、とりあえずはあの2人を待つことにした。




