崩落した床の先には(ユウ)
「──ぅ……ユウ!」
自分の名前を呼ばれた気がして、目を開けた。
視界にはぼんやりと5つの影が映っている。
僕はなんとか体を起こし、深く息を吸いそれを大きく吐いた。
「生きてる……。」
ようやく口にした言葉がこれなのは自分でも意外だけど、今はそう思えた。
「タルトが助けてくれたの?」
まだ少しぼんやりとしたままの僕が訊くと、
「ウ~ン……たぶんネ。」
「多分?」
「ユウくんをタスケないとってムチュウだったカラ……」
タルトは恥ずかしそうにうつ向いてそう答えた。
「さて、全員目が覚めた訳だけど、これからどうする?」
それまでの空気を切り替えるように、手を1回叩いて鳥越君が声を上げる。
「クレープ、タルト、ワッフルは上には上がれなかったんだよな?」
鳥越君の問いかけに、ほぼ同時に3人がうなずいた。
「というかミーたち、イマはすこししかウケないみたいデス。」
よく見たら3人の精霊はともに地面に足をつけていた。
「石町さんの方はどう?」
「ずっと……この先……道が続いてる……」
「そっか。」
今、この場で中心になっているのは鳥越君だ。
そんな彼は少しうつむいたかと思うと、すぐさま顔を上げてこっちを見ると、
「ユウはもう歩けるか?」
「あ、うん。多分もう歩けるよ。」
「……よし。じゃあ行くか。」
と言って歩き出してしまった。
僕も離されないように急いで立ち上がり──少し頭にくらっときたけど──みんなの後を追った。
どれだけ歩いたのかは分からないけど、とにかくかなり歩いた。
すると突然、足元に光の筋が走った。
その瞬間、石町さんが立ち止まり、
「光……もれてる……行ってみよ……?」
と言った。
この光の筋は石町さんがやってるのかな……?
とか頭に考えが巡りそうだったけれど、今はとりあえず考えないで、ただ彼女についていった。
だんだん光が強くなって……いくわけでもなく、それは唐突に終わりを告げた。
「ここ……だね……」
「こ、これがか……?」
先を歩いていた2人は、光の出どころを目にして固まっていた。
というのも無理はないかな、うん。
「穴、ちっちゃ……」
僕も思わず口に出してしまったけど、たぶんこれは誰が見てもそう思うんじゃないかな……。
隣で2人が固まっていたので、僕はとりあえずその穴に人差し指を入れてみようと、塞ぐように指を当てた。
……入らない。
まさかの第1関節すら入らないという、この……
「どうする……?……あっち……行き止まり……」
「さっきのとこまで戻るか?」
「いや、でも……」
たぶん、僕が言わなくても考えている事は同じなんだろうな。
──ここまでに分かれ道なんてなかったってこと。
なにも策が思いつかず、3人とも頭を抱えていると、いつの間にか後ろを歩いていたタルト達が暗闇から現れた。
「……ヤット、オイツイタ……」
「アルクのってツカレますネ……」
「……、……。」
3人とも少し呼吸が速まっていた。
ワッフルに関しては声すら出してないし……
ともあれ僕達6人は穴を囲むように集まり、各々穴を眺める。
「……見てるだけ……何も変わらないんだけど……」
「だけど、なにか案あるか?」
「パンチとかドウ?」
「いや……さすがにそれは無理があるでしょ。」
「ワッフルならデキソウですネ。」
「オレか?……ま、イイガナ。」
結論がわずか30秒で出てしまった。
しかも、腕力で解決するという……さすがに出来ないと思うんだけど……この壁、岩みたいな感じするし。
僕が壁面を撫でながらそんなことを考えていたら、
「ユウくん、ソコからハナれてー!」
というタルトの声が聞こえたので、その声の元へ駆け寄った。
「エヘヘっ。」
タルトが笑いながら、僕の手を握ってくる。
暗闇で顔は見えないのが少し残念だけど、僕もまたタルトの手を握り返した。
──もちろん、笑顔でね。
──────!
突然、轟音と共にまばゆい光が目に飛び込んできた。
その瞬間は見ていなかったけれど、たぶんワッフルが壁を崩したんだろう……できたのか。
「お前、突然やんなよ!せめてなにか合図とかさ!」
「リョウタ……スマナイ。」
「とにかく……出よう……!」
石町さんの言葉を聞き終える前に、6人ともに開けた穴から飛び出していた。
最後尾にいた鳥越くんが脱出すると、ほどなくして穴の向こうには数えきれないほど大きな岩が落ちてきて、穴があったところも埋め尽くされてしまった。
やがて音も砂ぼこりも消え去って、残されたのはただの岩の壁だけ。
「危ねぇ……。」
「……みんな……助かったね……。」
「死ぬかと思った……。」
「……アレ?」
「ココハ……」
みんな命が助かって安堵している中、ワッフルとクレープが空を見上げて戸惑いを隠せない様子を見せていた。
僕はふと自分の右手を見る。そこにはしっかりとタルトの手が握られており、ほっとしてため息を出してしまった。
──その時タルトが震えていたのに、気づくことすらできないで。




