芽妹→梨乃(芽妹)
「……もしもし、夢里ですけど……」
「あ、夢里さんのお宅ですか?えっと……」
俺は次に出す言葉を探した。
難しくないことなはずなんだけど、すっと出てこなかった。
「……もしかして、芽妹?」
「おお、梨乃か。」
なんとなく最初の声で梨乃な気がしていたけど、これで確信がもてた。
梨乃だと知ったら、なぜかまた言葉が出てこなくなる。
「突然どうしたの?」
そう訊いてくる梨乃の声が──
「泣いてる?」
「えっ。」
「あ、いや、えー」
思わず口にしていた。
でも、なんか聞いちゃいけないことのような気もした。
──ここからどう繋げよう──
──なんて言い訳をしよう──
そんな考えが頭のなかを巡る。
ダメだろ、そんなんじゃ。
「あのさ、梨乃。俺ん家こない?」
「……え?」
「その、俺暇だからさ。」
そう言いながら、俺は電話の親機を使ったことを後悔していた。
「いいの?」
「うん、梨乃がよければ泊まってもいいって母さんが。」
「……お母さんに代わってもらえる?」
「分かった。」
俺は、梨乃にそう言って受話器を母さんに渡した。
母さんは受話器(の向こうにいる梨乃)といくつか言葉を交わし、俺に受話器を向けた。一言
「オッケー。」
と言って。
なにが、とは思ったけどひとまずは感謝しなきゃか。
「もしもし、梨乃?」
「あ、芽妹。あのね、芽妹のお母さんが迎えに来てくれることになったから。」
「そういうことだから。いってくるね~!」
そういった母さんはもう玄関にはいなかった。
俺が玄関を見たときに丁度ドアが閉まったし。
「え?母さん!?」
「じゃあ、私も準備するから、切るね。バイバイ、」
「あ、じゃーな!」
と元気に別れの言葉は言ったものの……
……なんか腑に落ちない。
大体は母さんのおかげだしな、これ。
「メイのオカアサマはサスガですワネ。」
「凄いことにはすごいんだけどさ……」
そう返して、ふとムースの方を見るとなにか頬張っていた。
……エクレアだ。
「マ、とりあえずマチマショ、オヤツでもタベテ。」
そう言ってムースはシュークリームを差し出してきた。
「ありがと。」
短くそう伝え、俺はシュークリームの袋を受け取り、開けた。




