職員室はコーヒーの匂い?(灯太)
~職員室~
コーヒーの匂いはいい。夜のコーヒーもまた格別、のはずだった。
つい先程までなら。
俺は、窓際に立つ男……教頭の鬼見を見た。
「なんですか?」
「いや……」
俺は目を逸らす。
コーヒーを淹れてるときには職員室にはいなかったのに、飲もうとした時、突然ワープしてきたのだ。
すると何かを察したのか、
「どうしました?」
なんて、訊いてきた。
「もしかして、あなたも行きたかったのですか?」
「どこにだよ……。」
「ですが……あなたは戦闘向きではないでしょう。」
「無視かよ……。」
「まさか、死にたいとか?」
「……はぁ。」
「ンフっ。」
正直コイツとあまり話したくない。
それに、さっき路野江から聞いたんだが、コイツ……
「もしかして、責任、とか辞職、とか色々聞いちゃいましたか?ンフっ。」
「はっ。」
俺は思わず息を吐いた。
言葉を発するまでもない。
「まあ、この鬼見は自分を擁護する気は……少し……そうですねぇ、木星程しかありませんが。」
「木星って……。」
俺は呆れてしまった。
ヘンテコな例えもそうだが、ここに来て自己保身に走れるとは。
「後味は悪いでしょうが、あなたはここから去るべきですよ。」
「そう言われても、まだいなくなるわけにはいかねーよ。」
「ホぉ……?まあ、居てくだされば心強いですが。」
そう言ったあと、
「しかし……この鬼見としては、手がかりかもしれないあなたを……いや、保護……はぁ……。」
とかぶつぶついい始めた。
もはや鬼見の視界に俺はいなくなっているようなので、俺は自分の席に座り、少し冷めたコーヒーを口にすることにした。
のだが、コーヒーカップにくちびるが触れるより前に鬼見から声が飛ばされた。
「……松原先生、路野江先生がどこにいるか分かりますか?」
ようやくコーヒーを飲めると思ったのに……。
「探すか?でも、そろそろ帰ってくるんじゃないのか?」
「まあ……ですが。」
鬼見が何かを言いかけた、その時。
「私ならここにいますけど……。」
その言葉と共に、後ろの扉から路野江が入ってきた。
「……じゃあ、お2人とも、今から音楽室に行きますよ。」
「えっ?」
「また、突然な……」
「だって置いてきぼりは、嫌なんでしょう?」
そう言うと、鬼見は職員室と校長室を繋ぐ扉を少しの間見つめ、
「これで、よし。では、行きますよ。」
すたすたと職員室を出た。
俺と路野江も顔を見合わせて、肩をすぼめた。
しかし、その後路野江が急いで鬼見を追いかけていったので、俺もそれに続くことにした。




