七不思議巡りー退育館(進)
私は逃げようとしてたのかな。
面倒なことだと思ってたのかな。
……ううん。こんなこと考えるなんて私らしくないや。
ともあれ、私達は体育館に来た。
……別に行き先はテキトーに決めてるわけじゃないんだよ。
……私は。
ちらっと栞の方を見た。
「なんでこっち見るのさ。」
「いや、なんでも……」
バレてた。
実際のところ回る順番は栞がテキトーに決めてるんだよね。
「体育館……か。」
玉が静かに呟いた。
その表情はとても真剣で、でもどこか疲れているように見えた。
「何かが出そうですよね。」
「ねみぃ……」
「玉先輩?」
「あ、ごめんごめん。」
露季の言葉に対しても反応が鈍い。
「大丈夫?眠いの?」
「あっはは……。大丈夫、 たぶん。」
栞からも心配されてるし。
これでなんか強いやつ出てきたら危ないんじゃないかな……。
「まあ、いざとなったら逃げればいいよね。」
栞は軽いし……本当に大丈夫なのかな……?
とりあえず、何が出るかも分からないので、私は少しだけ、扉をスライドさせた。ちょっと錆び付いてて重かったけど。
隙間から4人で中を覗く。
「暗いですね……。」
「真っ暗だね。んー?なんも見えないよ。」
「うん……うん……つゆだくで……」
「あり?おーい、たまー?……寝てるし。」
そう言うと、栞は玉を背中に背負った。
「保健室に寝かせてこようか……?でも、1人だと危ないかな……?」
「ですね。できるだけ、一緒にいた方がいいかと。」
「じゃあ、栞は玉おぶっといて。」
私は栞におんぶしておいて欲しかったのだけれど、
「えっ……玉を殴るの?」
「『玉をぶっとく』じゃなくて『玉おぶっとく』の!おんぶだよ。お・ん・ぶ。」
「あ、あぁ。オーケー。」
どうも本当に分かっていなかったらしく、栞は若干殴る動作に入りかけていた。
まあ、すぐにおとなしくおんぶしたけどね。
……にしても、これ。体育館の中が真っ暗というより……
「真っ黒だね。」
と私は聞いているかは分からないけど、2人に言った。
「真っ黒……ですか?真っ暗ではなく?」
露季からは反応が帰ってきた。
その後すぐに、露季が扉に手を掛け、横に引いた。
大きな――比較的大きく、ゴロゴロと――音を立てながら扉が開かれた。
と、扉が開ききるよりも前に、隙間から大量の黒い煙が……
「……あれは、闇?」
勢いよく空高くへ上がって散り散りになったその煙を、目で追いながら露季がそう呟いた。
「……なぜ?」
「とりあえず、中を見ておこうよ。」
私は、空を見上げたままの彼女の肩を2回叩き、そう提案した。
彼女もそれを聞いて、うなずいてくれた。
栞は……玉を膝枕している。邪魔しない方がいいか。
「2人はいいんですか?」
「うん。たぶん2人とも疲れてるし……ね。」
私は露季にそう言って、体育館の中に入った。露季もそれに続いてね。
倉庫、二階(といっても細い通路しかないが)、ステージ脇、トイレ……色々探してみたが、特にこれといったものは見つからず……
露季の方に目をやったけど、彼女も首を横に振った。
……仕方なく私達は体育館を出た。
外に出ると、玉と栞が立っていた。
「なんだ、目が覚めたから入ろうとしてたのにー。」
「なんかあった?手がかり的ななにかは。」
栞の問いかけを受けて、私達2人は顔を見合わせて、その後、首を横に振った。
「……そっか……なーんだ、体育館にもなにかいると思ったのに。」
栞は残念そうに言っているが、なにか……というか闇が恐らくいたはず。
彼女は見ていなかったけれども。
私と露季で左右の扉を閉め、また、校舎の中に入った。
あれ?
「露季ー?早く来なよー!」
「ご、ごめんなさいっ。」
体育館の入り口でボーッとしていた露季に声を掛けると、駆け足でこちらまで来た。
「よし!今度こそ見つけてやっかんな!」
「そーだね!私達もなにかしないとだよね!」
少し休んで元気になった2人が私と露季より少し前を歩く。
玉まで元気になって、また元気なのが2人に戻った。
「……ねぇ、先輩。」
突然、露季が話しかけてきた。
「ん?どしたの?」
私は、闇関連かな?多重人格のことかな?と考えを即座に巡らせる。(あの会話を聞いた限りだと彼女の場合、後者も闇関連になるのだろうが。)
しかし、だ。飛んできた疑問はちょっとそことは違うところを狙っていた。
「なんで、体育館……いや、どの教室も鍵開いてたんですかね。」
「……っ。」
口から言葉は出なかったが、私の頭は回っていた。
瞬間、時計の秒針が動くより前に、校長――須崎の顔が浮かんだ。
まさか。いや、アイツ以外にいるか?
「心当たり、あるんですか?いや、あるんだな?」
突然露季が口調を荒らげる。こんなキャラだったっけ?
「この学校にも、悪いやつがいるのか?その……校長とか。」
「いや……わ、わからない……少なくとも、今の段階では。」
私は嘘をついた。少なくとも、悪いやつだと知っているのに。
「……そう……か。突然突っかかってごめん、なさい。その……えっと……」
「あはは……意外な1面をみた気がするよ!」
「……うぅ……。忘れてください……熱くなっちゃって……。」
「大丈夫、大丈夫だよ。言わなきゃいいんでしょ?」
「はい……お願いします。」
私は、顔で笑って誤魔化した。
校長が多目的室で暴れた時、彼女がいたはずなのを思い出したのは、会話が終わって少ししてからだった。




