七不思議巡りー理化室(進)
結局、言い出せず理科室に来てしまった。
「さてと。」
栞が空気を整えるように言った。
「行こうか。」
「だねー。」
「……はい。」
「よし!」
私達は気を引き締めた。
また何が襲ってくるか分からないからね。
――コンコン――栞が扉を叩き、開いた。
部屋の中は、窓から差し込む月明かりに照らされていた。
その奥。
黒板の前に、さっきの楽器のように黒い煙が溢れている、骸骨が見えた。
あれは……人骨の模型か。
「お?遅かったなぁ?」
かと思ったらその模型が喋りだした。
「しゃ、喋るのか……。」
栞が露骨に引いている。
「えぇ……、なんで引いてるんや。ワイ、ショックな件~。」
「……何者なのかなー?キミはー?」
「ワイ?ワイは|何でもないで?」
「なんでもない?個体の概念がないのかー?」
自分が何者か分からない……。
やはり、闇ということか。
いや、闇は自我を持つことはないはず。
何かで読んだんだよね。
「闇の意識……ねぇ。」
そう呟きながら、栞が露季の方を見た。
「……?なんでしょうか。」
「いや、なんでも。」
「で、なんや。ワイと戦うんか?」
「いや、できれば戦闘はしたくない。」
栞が即答した。
「せやろうな~。ま、ワイみたいなんを生み出したアイツらが悪いわな。」
「……アイツら?」
「ああ、せやな、教えたげるわ。闇がいつでも従うと思ったら大間違いやしな。」
そう言うと、模型は背筋をのばした。
「ワイを生み出したんが運の尽きや。」
そう言うと、さらに続ける。
「ワイを生み出したんはな、そこにいる―――」
刹那――模型の頭部は跡形もなく消しとんだ。
同時に闇も、まるで液体のように弾ける。
でも、それはその瞬間だけで、私達の体につく前に分解して、消えたわけだけど。
「ひっ。」
「……えっ。」
「んー。」
「ぐっ……。」
私達はあまりに瞬間的すぎるその出来事に少しの間、理解が追いつかなかった。
「喋りすぎて消されたのかな。」
玉が冷静な口調で続ける。
「正体バラされたくなかったのかね。」
「そうじゃない?自分で出した闇なんだろうに、扱い酷いな……。」
栞は、先程までそこにいたヤツに同情しているような口ぶりだった。
自我を持つほどに濃い闇……
しかも、それを分離させておける……
常人でそこまでの闇の使い手がいるのだろうか。
いないわけではないだろうけど……やはり……
「柄闇の人間かもしれません。」
「え?」
露季が突然そう言ったので、私は反応を迷った。
だけど、玉はそうではなかったみたいで、
「んー。そう考えるのが妥当だろうね。ただ、柄闇の血が入ってる人は一杯いるから……探し出すのは難しいかもね……。」
「いえ、さっきの感じだと生み出した人間が彼を消したと思われます。」
「つまり……?」
「彼は完全に生みの親から切り離されていなかった……ラジコンのような感じだったのでしょう。」
「あぁ、そういうことね。」
つまり、まだ近くに……?
「えっ?どういうこと?」
栞はピンときていないようだった。
なぜだか、彼女はヘンなところで鈍い。
「つまり……黒幕はまだ、この校舎の中にいるのではないか、と。」
「なに?だとしたら!」
思い立ったら即行動、しようとした栞を露季が止めた。
「相手が何者か分からない以上、あまり少数になるのは危険です。」
「あ、確かにそうだね。」
「彼のような闇が他にもいる可能性があるので、一応全部回りましょう。」
「え?でも、黒幕が……」
「いえ、さっきのようにバラされるのを恐れているでしょうし、いなくなってはいないでしょう。」
「1度ああなってしまったら、不安要素が0にはならないもんねー。」
「なるほど。」
どうやら栞も納得してくれたみたいだ。
「じゃあ次、行こうかー。」
玉の呼び掛けに3人は無言で頷いた。




