路野江先生の訂正(灯太)
さて、じゃあ続きを話そうか。そう思っていたんだが、
「ちょっといいかな、さっき灯太が言ってたこといくつか訂正してもいいかな。訂正するね。」
ちょっと強めの口調。
気にさわることを言ってしまった……かも。
「えっと、柄闇家系のことなんだけど、闇を操れるのは別に柄闇の者だけじゃない。どの生物も、闇は心に蓄積してしまうの、負の感情を持てばね。」
柄闇の方に視線をやりながら、路野江は話を続ける。
「ただ、柄闇家系はその闇の蓄積可能な量が常人より大量で、より繊細なコントロールが可能なの。訓練をつめば柄闇家系じゃなくたって闇を使うのは可能なのよ、使うだけなら。」
路野江は少し下を向き、さらに続ける。
「私は闇を扱うのが下手だった。ううん、私は闇を扱えなかった。柄闇家の子供なのに。使おうとしたら感情が闇に飲まれちゃって、自我を失っちゃったの。そのことで親からは、闇が扱えないなら柄闇として生きている価値も無い、って言われたわ。だから、」
路野江は少し言葉を詰まらせ、深呼吸。
「私は死のうとしたさ。でも、灯太……松原先生が助けに来てくれたんだよ。まさかあのタイミングで来るとは驚いたけどさ。」
路野江はすこし恥ずかしそうにそう言った。
「ま、そんなことがあって、冬休み中は灯太と私とケーキと3人でいろいろ遊びに行ったんだ。そんなこんなあって。私は灯太の家でお世話になることになったの。灯太の両親はいい人達でね、灯太の中学校生活が終わるまで家に置かせてもらった。」
そこで、水森からの質問がとんできた。
「?じゃあ卒業してからどうしたんですか?」
「そ、それは……」
路野江は言葉を濁した。はぁ、しょうがない。
「そのあとは俺と路野江とケーキとで3人でアパート借りたんだ。」
俺は答えた。瞬間、皆が突然こっちを向いた。
「えっ」
「へぇ……」
「……ぁ……」
「意外ですね。」
反応が様々すぎる。別にいいだろ、なにもしてないぞ。
「ウチ、そんなこと知らなかった。先生も意外とヤることやるんですねぇ……」
何を考えている砂川。
「……砂川さん……それ……どういうこと……?……」
「やだなぁ、石町さん分かるでしょ?男と女がひとつ屋根の下だよ?高校生だよ?これはもう……」
バン。と机を叩く音がした。
「砂川さぁん、ここでそういうのはやめようかぁ?隣の部屋いこう……?ね?」
進に連れられて砂川は保健室を出ていった。
「危ないやつだな。」
俺は思わず声を漏らした。
「アナタがイウことデスカ?」
ムースから的確なツッコミが帰ってきてしまった。
それから、しばらく保健室が賑やかになってしまった。
夕焼けが綺麗だ。気づけばもう夕方になっていた。
「柄闇に話したかったことは路野江が話してくれたか。闇のこと言おうとしたけど、そういうのは詳しいどうしで話した方がいいかな?」
俺は2人に訊いた。
2人は顔を見合わせて、
「聞きたいことがある。」
「話したいことがあるわ。」
と答えた。
本当はケーキのこととか校長のことも話したかったが、帰す時間が遅くなってしまうのはマズいので、皆を帰すことにした。この話はまたいつかしよう。
柄闇は……路野江がいれば大丈夫だろう。
砂川は……進を信じるしかない……大丈夫だろうか。
他のメンバーも各々の行動を取り始めた。
俺にみんなを拘束する権利はないので、俺も職員室に向かった。




