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精霊ピエロと迷宮な日々  作者: なお☆プリン
カウントアップ:3
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死ぬか不老か選ぼうか(コウ)

「ごめん……」


(かなめ)さんは、研究所に入ってくるなり謝ってきた。


「どうして謝る必要があるのよ。」

「取り逃がした……」


そう言った彼は、私達に向けていた視線を外す。


「お前が?」

「というか、要くんから逃げられたんだ……。」


(ほろう)と仁が目を丸くしているあたり、よっぽどのことなのかな。


「邪魔でも入ったか?」


(ほろう)が冗談っぽく訊くと、要さんは小さく頷く。


「マジで?」

「自分で訊いたくせになんで驚いてんのよ……。」


夜紅(やこう)がその様子を見て呆れたように額を押さえた。

……よかった。とりあえず3人とも、怪我の方はもう大丈夫そう。


「で、誰が邪魔しに来たんだ?」

「分からない、けど……」

「けど?」

「柄闇家、じゃないかな……」

「その根拠は?」


要さんの推測に、間を置かず夜紅(やこう)が食いかかる。


「市長が闇そのものだったから……」


要さんの言葉に返すものが見つからず、私達は黙ってしまった。

それを察してか、要さんはさらに続ける。


「それと多分、人間の市長はもういない……」

「ちょ、ちょっと待て。まず、闇そのものってのはどうしてわかったんだ?」


動揺しながらも状況を整理しようとする(ほろう)は、なんだかんだ言ってもリーダーに向いているんだなぁ……じゃなくて。


「闇を操る人間(・・)だったなら、腕や頭を切り落としても瞬時に元通りには……ならないはずでしょ……?」

「それ……市長に対してやったってことか?」


(ほろう)の問いかけに対して、要さんが静かに頷いた。

……さっき仁と(ほろう)が驚いていた理由が、少しわかった気がする。


「だってそれ以前に敵だし……」

「確かに、向こうがこっちを殺す気なら、自分も殺す気でかからないと勝てないかもだけど……。」

「じゃあ、人間の市長がいないってのはどういうことだ?」


次の話題に切り替えようとする(ほろう)に対して、要さんはまた小さく頷いてから答えた。


「さっきの戦い、あいつは途中で闇を飛ばすのを止めて、直殴りするようになったんだ……それまでの戦法で僕の飛ばしていた氷を十分相殺できていたのに、わざわざ……」

「その方が効率が良かったとか?」


仁が首をかしげながら放った言葉を、要さんは首を振って否定する。


「むしろ逆、何発か被弾するようになってた……」

「うーん……攻撃できる能力、逃げるのに使える能力、どっちの能力を持っていたとしても、そんなぎりぎりになっても使わない理由はないし……これで、能力者っていう可能性もさらに低くなったわけか。」

「それで、闇の供給元がいないから、無限に闇を使えないんじゃないかと思ったんだ……」


前に夜紅から聞いた話だと確か……能力は精霊がいる限り無限に使えて、精霊が死んでしまっても能力は使えるけど、ある程度使ったら力を溜める必要があるんだとか。

私は能力とか持ってないからその感覚はよく分からないけど、闇もそれと似たような感じってことかな?


「私たちにとっての精霊みたいね。」

「まさしくその通りだと思う……」

「だとしたら、逃げた市長はどこかに隠れて回復しようとしてるはずだよな……。」


そう言った(ほろう)は額に手を当てて、座りこんでしまった。

……隠れている場所なんて分かったもんじゃないし、私と浮幸はともかく他の3人は顔も見られちゃってるし……下手に外を出歩いて市長と出会うのも危険、だよね。


「俺たち5人はしばらくの間、大人しくしているしかないか……。」

「でも、隠れる場所なんてある?」


夜紅が不安そうに尋ねると、またしても(ほろう)は黙り込んでしまった。

というか、彼以外のみんなも言葉を発さない。解決策が見つからないのは誰も同じってことかな……。


そのまま5分くらい経って、とうとう口を開いたのはやっぱり(ほろう)だった。


「……やむを得ない。本当に申し訳ないんだけど、要。あと48時間、ここに居てくれないか?」

「僕は構わないけど……」

「48時間って……まさか!(ほろう)くんは4人を向こう(・・・)に連れて行く気なの!?」


全員の視線が仁に向く。

彼がこんなに声を荒げるのは珍しいな。


「なんだ、嫌なのか?」

「だって……」

「勿論、希望は聞くつもりだ。」


そう言った(ほろう)はこちらを向くと、私達4人を流し目で見る。

……さっきの会話からして「向こう」っていうのは、精霊界のことだろう。でも、あそこに行ったことがあるのは(ほろう)と仁だけ。

そもそも(ほろう)は、初めてこっちに戻ってきた時に「精霊界と繋がっていることは他の人間には言っちゃいけない、俺と仁以外が精霊界に行くのもダメだ」って言ってたから……私からしても、今の彼の考えはよく分からないんだけど。


「時間が経てば、またこの場所が危険になるだろう。だが、この街……この世界にいる限り、命の危機は消えないだろう。なら、少しでも死ぬ可能性を遠ざけたいだろう?」

「……そりゃそうだけど。でも、そこにいったらあなた達みたいに年を取らなくなるんでしょう?」

「まぁ、な。」

「それは少し引っかかるけど……まだ死にたくないし、私は行かせてもらうわ。」


目を逸らして答えた(ほろう)に、夜紅が詰め寄って決断を口にした。

仁も諦めたのか、それとも受け入れたのか、私と浮幸の方を見て首をかしげた。まるで、君たちはどうするの?とでも言うように。


「私も行くっす。まだやりたいこと、いっぱいあるし……こんなところで死ねないっすから。」

「私も行く。お父さんやお母さん……それにユウの身に何かあってからじゃ遅いもん。」


浮幸に同調するような形で、私も覚悟を決めた。

すると、(ほろう)は私達の後ろに視線をやって、


「要は、どうするんだ?」


と訊いた。しかし、要さんはこちらに向き直ると、


「僕には……この世界でまだやらなきゃいけないことがあるから。だから、行かない。」


今までの彼の台詞の中で、一番はっきりとした声で言い放った。


「……そうか。じゃああと2日間の護衛だけ頼む。」

「もちろん……」


(ほろう)はそれを伝えると、あの黒いタマがある部屋へと歩いていった。

……あれを起動させるのに、48時間必要ってことか。


「とりあえずお腹すいたし……ご飯食べましょ。ピザ、たくさん余ってたわよね。」

「そういうだろうと思って、持ってきたよ。」


仁が大量のピザをテーブルに置く。

それを見た要さんは、少し驚いた様子だったけど、


「僕も少し貰おうかな……」


そう言って、椅子に腰かけた。

ひとまず、休憩。

……そうだ。しばらく帰れないこと、お母さん達に伝えておかないと。

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