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精霊ピエロと迷宮な日々  作者: なお☆プリン
カウントアップ:3
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つららの猛攻

ここは「7ポカ」の研究所の前。

2人の人影が、氷のドームの中で対峙している。


「ほう、氷で作った即席のスタジアム……あんな霧しか出せないような能力を利用したんですか?」

「……」

「無視ですかぁ!」


声を荒らげた市長の、その左手から湧き出た夜色の煙が(かなめ)へと襲いかかった。


「なっ……。」


しかし次の瞬間、市長が目を見開く。

煙が、要の目前で霧散したのだ。


「遅い……」

「……今のは小手調べというやつですよ。」


余裕の笑みを浮かべた市長の背後に、さっきと色は同じな粘土状の何かが迫り上がる。

そして市長が腕を振り下ろすと同時に、夜色の山から無数のトゲのようなものが撃ち出された。


「だから……」


先ほどより声のトーンを落とした要が手のひらを市長に向けると、同時にそこから無数のつららが撃ち出され、市長と要との中間の位置辺りでトゲとぶつかり合い、爆散。

……数秒後に煙が晴れると、そこにはつららもトゲも残ってはいなかった。


「あなたのその氷のようなもの……精霊の能力ですよね?」

「だったら何……」


市長はニタリと笑う。


「私が使うのは闇……あなたが持っているであろう『精霊の加護』を無視できます。」

「そう……」

「分かりませんか?」


そう言って市長はくるりと回って、もう一度要の方を見る。


「私はあなたを簡単に殺せちゃうんですよ。」


もう一度ニタリと笑う市長。その両手には、夜色のもやがかかっていた。


「突然こんな風に閉じ込められて……正直驚きましたが、こんなの意味ありませんよ。」


そう言って彼が氷の壁をコツコツとたたいた瞬間。

その壁から、同じく氷製のトラばさみが現れ、市長の右手首を切断したのだ。


「なっ……。」


またしても目を見開いた市長は、すぐさま壁から体を離す。

それと同時に要の方を見ると、彼の足元にまで氷が広がっているのを確認できた。


「それはこっちも同じ……」

「貴様……!」

「それに、やっぱりあなたは人間じゃない……」


そう言って要が指差したのは、市長の右腕。

1滴の血も流れ出ていない、その腕。


「……だったらなんだというんです?」

「別に……」

「ふん。まぁ、でも?あなたが私に殺意を抱いている理由が分かりませんね。」


市長が右手を拾おうとするも、彼が1歩踏み出した瞬間に背後から飛んできたつららによって、落ちていた手は粉砕され霧散した。


「秘書、いるでしょ……」

「あー、いました(・・・・)ね。お知り合いでしたか?」


そこまで言った市長は、何かをひらめいたように手を叩いた。


「それですか、理由は。」

「真昼くんが闇に包まれて……」

「おっと……そこまで見られていましたか。」


市長の背後に、先ほどより黒い──黒より黒い、闇が。


「それならば、いいことを教えてあげましょう。私はまさしく闇そのもの!大本の人間が生きている限り、急速に、永久に闇を供給できる……つまり、あなたが私を消滅させることは不可能なのです!でも……今引くと言うのなら、見逃してあげましょうかねぇ?」

「……」

「なわけ!広められると困りますからねぇ!」


市長がそう叫ぶと、その背後の闇が瞬く間に広がり、2人を包み込む。当然、この場の光は奪われた。


「これは……」

「あなたの能力も、簡単には通さない……さっきよりずっと深い闇。さあ!受けてごらんなさい!」

「んっ……」


一面の暗闇の中、ただひたすらに氷の砕ける音が響く。

──が、やがてそんな音すらなくなり、静寂が訪れる。

と同時に闇が晴れ、再び氷の壁が姿を表した。


「面倒ですね……能力者が死んでも、能力で生み出されたものは消えないんですか。」


市長の視線はもはや完全に氷の壁にしか向いておらず、いつの間にか彼の足元にまで広がっていたスケートリンクには気づいていなかった。

だから、そこから発されていた殺気にも、音も立てず出現した要に気づかなかった。市長が敵の存在に気づいたのは、自らの頭と体が切り離された後。

焦った市長は、すぐさま本体(あたま)を霧散させる。残された体の部分は、氷にされて打ち砕かれてしまったが、即座に全身揃った状態で姿を現した。


「生きていたんですか……あれだけ高濃度の闇で攻撃したというのに。」

「確かに避けきれなかった……」


そう言って、要は左腕を見る。

その視線の先の袖は、少しだけ裂けてしまっていた。


「避け……なら、なぜ生きているんですか?」

「なんで教えなきゃいけないの……」


要が声を震わせると、彼の周囲に小さな氷の塊が出現し──


「次は、こっちの番……」

「なに?」


勢いよく発射される。次々と、休む間もなく、ひたすらに。

当然、市長も闇を飛ばしてそれらを破壊していたが、途中から自らの拳に闇を纏わせて殴るようになった。


「もしかして……」


要は小さく呟くも、攻撃の手は緩めない。むしろ、激しくなっていく。

さらに、その目はまっすぐ市長のみを捉えていた。


「やれる……」


ゆっくりと、市長に近づいていく要。

その手には、氷で作られた刀が握られている。


「貴様……!何をするつもりだ!」

「暴れると痛いよ……」


そう言って刀を構えた彼だったが、突然頭上の氷が溶け落ちて大穴が開いたことで、意識をそちらに向けてしまった。

その瞬間、彼は猛攻を止めてしまったのだ。

当然のことながら、市長はこの一瞬を見逃さない。

突然現れた逃げ道をすぐさま把握すると、夜色の煙となって穴へ向かって真っすぐ飛んでいく。そのまま外へ出ると、散り散りになってどこかに消えてしまった。

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